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日本代表に欧州組19人。その所属クラブのレベル、優劣を欧州ランキングに照らして解析する

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 パラグアイ戦(9月5日)、ミャンマー戦(10日・2022年カタールW杯アジア2次予選)に臨む日本代表23人が発表された。改めて驚かされるのは海外組の多さだ。その数19人。Jリーガーはわずか4人だ。

 欧州ではいま新シーズンが始まったばかり。各選手とも所属クラブ内で自分の地位を固める大切な時期だ。弱小ミャンマーとのアウェー戦を欧州組中心のメンバーで戦うことは、大局的に見て賢明な判断と言えるだろうか。

 彼らにとって、これはリスクを伴う大旅行そのものだ。できれば選んで欲しくなかったと内心、森保監督を恨めしく思っている選手は少なくないのではないか。それはともかく、欧州組の数は年々増加傾向にある。そしてそれは日本のレベルを語る材料にされがちだが、実際はどうだろうか。

 チャンピオンズリーガーの数は減る一方だ。今季、出場の可能性があるのは(欧州のトップ32クラブに所属する選手は)ガラタサライの長友佑都ひとり。

 チャンピオンズリーグ(CL)は、事実上の欧州1部リーグである。世界のトップ選手が32チームに分かれて戦う構図はW杯と同じ。W杯の組替え戦と言ってもいいわけだ。そこに日本人が1人しかいないという現実に目を反らし、欧州組の数が増えたことを喜ぼうとする姿は愚かだ。

 CLを欧州1部とするなら、その下の48クラブで争われるヨーロッパリーグ(EL)は欧州2部リーグだ。日本人選手が所属するクラブで今季ここに出場するのはポルト(中島翔哉)、PSV(堂安律)、フランクフルト(長谷部誠)、CSKAモスクワ(西村拓真)、パルチザン・ベオグラード(浅野拓磨)の5つ。

 つまり、欧州のトップ80チームに日本人の海外組は6人しかいないことになる。

 CLとELに出場したクラブはその戦績に応じてポイントが付与される。UEFAはその過去5年のデータを集計し、ランキング化してレギュレーションの中に反映させている。

1)レアル・マドリー、2)バルセロナ、3)バイエルン、4)アトレティコ、5)ユベントス、6)マンC、7)セビーリャ、8)パリSG、9)アーセナル、10)ポルトがその現在の順位になる。

 過去10年のデータを基にしたランキングも存在する。こちらは名門度に近いモノになる。トップ10は以下の通り。

1)レアル・マドリー、2)バルセロナ、3)バイエルン、4)アトレティコ、5)チェルシー、6)マンU、7)ユベントス、8)ポルト、9)アーセナル、10)ベンフィカ

 ちなみに昨季CL優勝を飾ったリバプールは過去10年のランキングが12位で、過去5年が11位となっている。

 日本人選手絡みで注目すべきは中島翔哉率いるポルトだ。上に記したように過去10年で8位、過去5年で10位。03-04シーズンには、モウリーニョ監督の下、CLを制覇した実績もある。今季はCL予選で敗退し、ELに回るが、そこでコンスタントに出場すれば、少なくともデータ的には現在の日本人ナンバーワン選手になる。

 続くクラブはPSVだ。ポルト同様、今季のCLは予選で敗退。ELに回るが、CLレベルにあるクラブといっていい。古い話になるが87-88シーズンにはフース・ヒディンク監督の下で欧州一に輝いた実績もある。

 オランダ勢と言えば、昨季のアヤックスの健闘(ベスト4)を想起するが、同じく昨季、PSVも可能性のある戦いをした。グループリーグでバルセロナ、トッテナム、インテルと同じ組みに振り分けられ、最下位に終わったが、すべての試合で接戦を演じた。可能性を感じさせる戦いを披露していた。そこで堂安がスタメンを飾れるか否かは、彼の将来を占う上で大きな見どころとなる。

 今回日本代表に招集された海外組19人が所属するクラブの欧州ランキングは以下のようになっている。過去10年のランキングと過去5年のランキング(カッコ内)だ。

1)FCポルト(ポルトガル1部)8位(10位)=中島翔哉

2)PSV(オランダ1部)33位(39位)=堂安律

3)マルセイユ(フランス1部)33位(46位)=酒井宏樹

4)ザルツブルグ(オーストリア1部)36位(29位)=南野拓実

5)ガラタサライ(トルコ1部)42位(68位)=長友佑都

6)ゲンク(ベルギー1部)56位(60位)=伊東純也

7)シュツットガルト(ドイツ2部)77位(圏外)=遠藤航

8)サウサンプトン(イングランド1部)83位(83位)=吉田麻也

9)ハノーファー96(ドイツ2部)99位(圏外)=原口元気

10)ブレーメン(ドイツ1部)99位(圏外)=大迫勇也

11)フローニンゲン(オランダ1部)177位(圏外)=板倉滉

12)セルクル・ブルージュ(ベルギー1部)185位(圏外)=植田直通

以下、圏外

ストラスブール(フランス1部)=川島永嗣

ポルティモネンセ(ポルトガル1部)=権田修一、安西幸輝

ボローニャ(イタリア1部)=富安健洋

シントトロイデン(ベルギー1部)=シュミット・ダニエル

マジョルカ(スペイン1部)=久保建英

デポルティーボ(スペイン2部)=柴崎岳

 ポイントを全く稼いでいないランキング外のチームは6クラブだ。

 富安健洋所属のボローニャは、セリエAの常連として知られるが、CLに出場した過去は、その前身であるチャンピオンズカップ時代を含めて一度もない。99-00のUEFAカップ(ELの前身大会)出場を最後に19シーズン、欧州戦線から遠ざかっている。

 久保建英所属のマジョルカは01-02シーズンにCL出場を果たした過去がある。1次リーグで稲本が在籍していたアーセナルと2位の座を争い、同勝ち点で並んだが得失点差に泣き、ベスト16進出を逃している。メンバーにはその後、バルセロナで活躍したエトー、ナダルなどがいた。

 圏外クラブの中で最も華々しい過去があるのは、柴崎岳所属のデポルティーボだ。01-02にはスペインリーグを制し、CLには00-01から5シーズン連続出場。ベスト4に1回、ベスト8に2回輝いている。リバウド、ベベート、マウロ・シウバ、サンパイオなどブラジル代表の名手たちを中心に、欧州サッカー界をリードするような、よいサッカーを展開。2003年には過去5年のランキングで6位まで上昇した実績がある。

 その他、主な日本人選手が現在在籍するクラブで圏内にいるのは以下の通り。

CSKAモスクワ(ロシア1部)29位(32位)=西村拓真

AZアルクマール(オランダ1部)55位(118位)=菅原由勢

トゥエンテ(オランダ1部)64位(163位)=中村敬斗

マラガ(スペイン2部)67位(圏外)=岡崎慎司

フランクフルト(ドイツ1部)78位(62位)=長谷部誠、鎌田大地

ヘント(ベルギー1部)79位(51位)=久保裕也

ニューカッスル(イングランド1部)83位(圏外)=武藤嘉紀

 CL圏内である32位以内のクラブでプレーする数は現在2人。日本サッカーには、代表チームが目の前の試合に勝つことと同じくらい、この数を増やす努力が重要だ。森保采配には、それに対する気遣いも不可欠になる。

 海外組が増えたことを喜ぶ時代は終わった。問題はどのレベルでプレーしているかだ。2022年、はたして32位以内でプレーしている選手はどれほどいるか。カタールW杯への期待度はその数に比例するのである。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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