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11年守り続けたシードを落としたプロ16年目の北田瑠衣が今、思うこと

金明昱スポーツライター
今季はステップ・アップ・ツアーが主戦場となる北田瑠衣(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

モチベーションを保つ難しさ

日本女子ゴルフツアーはすでに開幕したが、今週から開幕したのが下部ツアーのステップ・アップ・ツアーだ。そこにはプロ16年目、36歳になった女子プロゴルファー、北田瑠衣の姿があった。

レギュラーツアー通算6勝、2010年のTポイントレディスで優勝して以来、勝利から遠ざかっているが、シード選手としての実力は確かなものだった。

「今はモチベーションを保つのが本当に難しいんですよね。本当に。私は大丈夫なので、何でも聞いてください」

そう言って笑って見せたが、やりきれない気持ちをどこかに隠したまま、今シーズンを迎えているようだった。

北田は昨シーズン、賞金ランキング70位とし、2006年から11年間守り続けたシード(レギュラーツアーの賞金ランキング上位50人に翌年の出場権が与えられる)から陥落した。12月にはレギュラーツアー出場権を得るための予選会(QT)にも出場したが61位と成績は振るわず、主戦場はステップ・アップ・ツアーとなった。

北田は今年、どのような身の振り方を考えているのだろうか。11年も守ってきたシードを失ったあと、どのような気持ちでいるのかが、とても気になっていた。

「正直、オフはすごくいろんなことを考えました。レギュラーツアーは出られないし、推薦枠での出場の話も来ていなかったですからね。ステップ・アップ・ツアーはそれよりも後に始まるので、トレーニングをする意味があるのかとか……。モチベーションをどこに持っていけばいいのか、すごく難しかったです」

ゴルフに引退はない

そんななかで今季は3月にレギュラーツアーに2試合に出場(ともに予選落ち)。「ヨコハマタイヤPRGRレディス」では、テレビ中継のラウンドレポーターにも初挑戦した。

「レギュラーツアーに出られないけれど、私には、これからもゴルフを続けていきたいという思いがあります。それに、いただける仕事はきっちりこなしたい。今年は下部ツアーだから試合に出たくないということもありません。練習だけだと下手になるし、試合勘が鈍ってしまいますからね」

長らくレギュラーツアーで戦ってきた自負やプライドもあるだろう。だが、さすがは年の功で、現実を受け入れる心構えはできている。

ちなみにステップ・アップ・ツアーでは、今季から賞金ランキング1位の選手に、翌年度の開幕戦から「リランキング」(シーズン途中の賞金額に応じて出場優先順位を組み替える制度)実施までのレギュラーツアーへの出場権が与えられることも決まった。それについてはどう思っているのだろうか。

「もちろんここで賞金ランキング1位になって、来年のレギュラーツアーに出られるようにがんばることも大事です。でも、(1位になれるのは)一人だけですから、そう簡単なことではないですよね。それよりも、私のシーズンは始まったばかり。結果を見ながら自分のこれからについて考えていきます。自分でもこの先、どう転ぶのかわかりません。ただ、これからもゴルフにはこれからもずっと携わっていきたいですし、ゴルフには引退はないと思っていますから」

北田はハッキリと“引退はない”と言った。現役でプレーしていくという気持ちも確認できた。再びレギュラーツアーの舞台に立つ日をまだ諦めていない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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