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勝率1位を争う19歳、伊藤匠五段と藤井聡太竜王 叡王戦挑決に進んで好調、出口若武五段と服部慎一郎四段

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 年度末の将棋界。記録4部門も最終盤の段階を迎えました。

 今年度、もっとも活躍したのは藤井聡太竜王(19歳)。公式戦では64局戦って、52勝12敗(勝率0.813)。記録4部門のうち、対局数、勝数、連勝の3部門でトップを走っています。

 王将戦七番勝負は4連勝のストレートで制し、対局はしばらくの間、ありません。

 勝率部門はデッドヒート。伊藤匠五段(19歳)が勝率0.815(44勝10敗)でトップに立っています。

 伊藤五段は3月30日、王位戦リーグ紅組で西尾明七段と対戦します。

 伊藤五段は勝てば勝率1位のまま、発表されている公式対局をすべて終えることになります。

 ところで伊藤五段の成績には、NHK杯1回戦、松尾歩八段戦の負けがカウントされていません。それは今年度が始まる前、2021年3月15日に対局が収録され、前年度成績に含まれているからです。一般的に公式成績は伏せられているテレビ棋戦の結果などもあって、公式側がアナウンスしない限り確定しません。

 さて勝率歴代1位の表を見れば明らかな通り、トップでも勝率8割を超えることはまれです。いや、藤井現竜王が5年連続で達成しているので「まれだった」というべきでしょうか。藤井竜王出現以降、8割台取っても1位になれないかもしれないわけです。

 2018年度は藤井聡太七段に次いで、渡辺明二冠、永瀬拓矢七段の3人が8割でした。(肩書は当時)

 叡王戦準決勝では服部慎一郎四段(22歳)、出口若武五段(26歳)が順に勝って、挑戦者決定戦進出を決めました。

 下から1番目と2番目から本戦に進んだ若手が勝ち上がる状況は「叡王戦ドリーム」といえるでしょう。どちらが勝ってもタイトル戦初出場。そして規定により段位が一つ上がります。

 今年度、服部四段は43勝12敗(勝率0.782)。出口五段は36勝13敗(勝率0.735)。いずれも好成績です。服部四段は現在勝率3位。例年であれば、やはりトップであってもなんら不思議ではない数字です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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