Yahoo!ニュース

あなたの家の周りにも山ほどいる身近なかわいい害虫その4=バラの最大の敵チュウレンジバチ

天野和利時事通信社・昆虫記者
バラの大敵、アカスジチュウレンジの成虫(左)と幼虫

 バラ園芸家の最大の敵は、チュウレンジバチ(チュウレンジハバチとも言う)、アカスジチュウレンジという2種類の小さなハチだ。幼虫が植物の葉を食べるハチの仲間をハバチと言う。チュウレンジバチはこのハバチの仲間の中でも、特に知名度が高い。バラ愛好家で、このハバチを知らないという者がいたら、その人は愛好家の風上にも置けない似非愛好家だろう。

こんな街中の無防備なバラは、ほぼ確実にチュウレンジバチの仲間に侵略されている。
こんな街中の無防備なバラは、ほぼ確実にチュウレンジバチの仲間に侵略されている。

 素人園芸家は、庭のバラを食い尽くそうとしているイモムシを見つけた時、きっと蛾の幼虫だと思うことだろう。そして近くを飛び回っている黒っぽい小さなハチのことを、芋虫を退治してくれる正義の味方だと思うことだろう。

 しかし、その小さなハチこそが大敵なのだ。チュウレンジバチの雌は、尻先の産卵管でバラの茎に切れ込みを入れ、その隙間に卵を山ほど産み付ける。

バラの茎を切り裂いて産卵中のチュウレンジバチ成虫。
バラの茎を切り裂いて産卵中のチュウレンジバチ成虫。

アカスジチュウレンジは胸部背面に赤い斑紋がある。やはりバラの茎に産卵中。
アカスジチュウレンジは胸部背面に赤い斑紋がある。やはりバラの茎に産卵中。

 孵化した幼虫は集団行動が好きで、ひとかたまりになってバラの葉を食べ進む。やつらが大量発生する、あっという間にバラはボロボロにされてしまう。

 この幼虫が発生しているかどうか確かめたければ、バラの茂みをゆすってみればいい。チュウレンジバチの幼虫は、危険を感じると、お尻を高くつき上げる習性があるので、大量発生していれば、バラの枝葉のあちこちで小さなイモムシが尻を突き上げる恐怖の光景(虫好きにとっては楽しい光景)が見られるだろう。

チュウレンジバチの仲間の幼虫は集団でバラの葉を食害する。静かに食事中の幼虫集団。
チュウレンジバチの仲間の幼虫は集団でバラの葉を食害する。静かに食事中の幼虫集団。

チュウレンジバチの幼虫は、危険を感じるとお尻を高く突き上げるので、バラの茂みをゆすってみると割と簡単に見つかる。
チュウレンジバチの幼虫は、危険を感じるとお尻を高く突き上げるので、バラの茂みをゆすってみると割と簡単に見つかる。

大きくなった幼虫の頭が薄い色になるのはアカスジチュウレンジ。なのでこの集団はたぶんアカスジチュウレンジ。
大きくなった幼虫の頭が薄い色になるのはアカスジチュウレンジ。なのでこの集団はたぶんアカスジチュウレンジ。

 この尻上げの習性を利用して、幼虫の集団を見つければ、やつらを一網打尽にできるかもしれない。しかし、チュウレンジバチは年に3,4回も発生するらしいので、一度駆除したからと油断してバラの管理を怠っていると、大逆襲を受ける恐れもある。

チュウレンジバチの仲間の卵。産卵されたバラの枝はやがて大きく裂けて、卵が見えるようになる。
チュウレンジバチの仲間の卵。産卵されたバラの枝はやがて大きく裂けて、卵が見えるようになる。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

天野和利の最近の記事