GW中、満室状態だった各地の温泉旅館 「正直、怖かった」と漏らす旅館女将と奮闘する経営者
4月25日から発出された緊急事態宣言はGW中の人の流れを抑えるためだったが、適用範囲外の箱根や熱海は人で賑わう光景が話題となった。混み合った温泉地の旅館では、何が起きていたのだろうか――。旧知の旅館オーナー数人に訊ねてみた。
まず大人気温泉地の草津温泉はどうだったのか――。
草津で旅館5軒を経営する小林恵生社長によれば、
「草津温泉全体では一昨年の6割といった感じです。例年ですとGWは満室なのですが、本年は5月1日、2日、3日は満室でしたが、それ以外は30%程の稼働です」
旅館の宿泊スタイルによって、お客の入りも異なるそうだ。
「1泊2食付きよりも、素泊まりが人気でした。最も人気だったのは『源泉一乃湯』の露天風呂付き&キッチン付きです。近所のスーパーで食材を購入して、お部屋で自炊ディナー、お部屋の温泉を満喫という内容で、お客様のニーズにピタリとマッチしていたのだと思います。
また、『草津ナウリゾートホテル』のテラス露天風呂付き客室は20代のカップルが多く利用されました。ほとんどのお客様はビュッフェディナーを選ばれましたね。若いお客様にとって、好きな料理を自由に食べられることが楽しみのようです」
小林社長は「昨年のGWは政府の緊急事態宣言に加え、群馬県の営業自粛要請によって休館でした。今年はしっかりと感染予防対策をして、営業できたので本当に嬉しかったです」と、感慨深げだ。
昨年、小林社長から「お客様のいない宿は、本当に寂しいんです」と聞いていたこともあり、私も喜びを共にした。
一方、伊豆半島の老舗旅館の女将は、「有難いことに静岡県内からたくさんのお客様がいらっしゃいました。みなさん、『県内ならいいだろうと思った』とおっしゃっていまして。ただ東京、大阪や兵庫からも大勢いらして……。人の多さが、正直、怖かったですね……」と、本音を漏らす。
コロナ禍の下でお客さんを受け入れることへの怖さは、あって当然だろう。
箱根の雄、10軒の旅館から成る一の湯グループは連休中の稼働率がなんと90%! 小川尊也社長に好調の理由を訊くと、「うちはコロナ蔓延が伝えられた昨年から『一の湯クリンリネスポリシー』というコロナ感染予防対策を実施してきました。それはお客様と対面するスタッフの安全を守るためでもありました。現在はお客様の旅の楽しみ方も変わり、例えば食事を静かに召し上がったり、三密回避対策に積極的にご協力いただいたりと、意識が高まっています。
そして私にとって、スタッフを守るとは、なにより雇用を守ることです。長引くコロナ禍の状況でも気を緩めることなく営業して参ります」と、経営者として奮闘する顔を見せてくれた。
ちなみに筆者は、連休中、自宅がある東京から出なかった。
だが、小川社長の「お客様の意識が高まっています」という言葉に、私自身、ハッと気づく。
そういえば、私も取材に出かける直前にPCR検査を受け、陰性であることを旅館に伝えるようになった。
コロナ禍での安全な旅は、旅館と旅行者の両方が気を付けながら作り上げていくものなのだろう。