サイクロン『ニサルガ』ムンバイ直撃のおそれ 1882年以来初
相次ぐ災難に直面しているインドですが、3日(水)にはサイクロン「ニサルガ(Nisarga)」が上陸する恐れが高まっています。ではニサルガとは、一体どのようなサイクロンでしょうか。
ニサルガの予想
日本時間2日(火)午後、サイクロン「ニサルガ」がアラビア海で発生しました。
海水温が30℃以上と高いことなどから、今後さらに発達する見込みです。3日(水)午後までには、最大風速31m/sの「シビア・サイクロン」の勢力となり、西部マハラシュトラ州などに上陸する予想となっています。ニサルガの中心がムンバイを通過する可能性も出ています。
当局によると、上陸時に予想される最大瞬間風速は33m/s、総降水量は200ミリに達するおそれがあるとのことです。
2つの記録
ニサルガは下記の点で、記録に残るサイクロンとなる可能性があります。
【史上初、6月にマハラシュトラ州上陸か】
もしマハラシュトラ州に上陸すると、観測が始まった1891年以来初めて6月にサイクロンが同州に上陸することとなります。本来アラビア海のサイクロンシーズンは10月から5月までで、通常は6月にはサイクロンの発生は落ち着くのです。
【1882年以降で初、ムンバイを直撃か】
さらに、もしマハラシュトラ州州都のムンバイを直撃すれば、1882年のサイクロン以来初の出来事となるようです。
ムンバイ一帯は、人口が2,000万人超と世界有数の過密都市であると共に、証券取引所や金融機関が集まるインド最大の経済都市です。
アラビア海はサイクロンの発生数が少ないだけではなく、そのほとんどが西に進んでアラビア半島に向かうことが多いのです。つまり、インド西部に上陸するサイクロンは多くありません。
物議をかもす1882年のサイクロン
ところで、過去に唯一ムンバイに上陸したとされる1882年のサイクロンとはどのような嵐だったのでしょうか。
その嵐は「グレート・ボンベイ・サイクロン」という名前で呼ばれています。6月6日に夜明けのボンベイ(現在のムンバイ)を直撃、50m/sの強風と5メートルに及ぶ高潮で都市を壊滅させ、10万人が亡くなったと伝えられています。
しかし、そもそもそんなサイクロンは存在せず作り話ではないか、という見解もあります。2019年に米コロンビア大学とマサチューセッツ工科大学が行った研究では、これほど甚大な被害を出したサイクロンにもかかわらず、インド気象庁の記録に記載されていなかったことが判明しています。
新型コロナウイルスの脅威
謎は深まるばかりですが、たとえ存在していたとしても1世紀以上も前の話です。
いま、ムンバイでは誰も経験したことのないサイクロンが接近しています。折しもこの大都市は、インド国内でもっとも新型コロナウイルスが蔓延していて、その感染者は41,000人以上(2日時点)に達しているのです。
大きな被害が出ないよう、ただただ願うばかりです。
※追記(6/3): 日本時間3日16時頃、ニサルガは「シビアサイクロン」の強さで、マハラシュトラ州に上陸したもようです。上陸地点は、ムンバイから数十キロ南のアリバグ付近でした。