中国・ロシア主導“強権・独裁”グループが国連舞台に参加国募集、北朝鮮ミサイルへの安保理対応は大丈夫?
中国やロシアなど17カ国・地域が最近、米国やその同盟国に対抗するため「国連憲章を守る友好グループ」を名乗る枠組みを立ち上げ、他の国連加盟国に参加を呼び掛けている。メンバーには北朝鮮やベネズエラといった「強権」「独裁」色の強い国が名を連ねており、反「自由・民主主義」連合の様相を呈している。北朝鮮による25日の弾道ミサイル発射に関しても、この枠組みを意識した攻防が展開される可能性もある。
◇「国連憲章を守る友好グループ」
現時点で「国連憲章を守る友好グループ」に参加している17カ国・地域は次の通り。
▽アジア(4):中国、北朝鮮、ラオス、カンボジア
▽中東・北アフリカ(4):イラン、シリア、アルジェリア、パレスチナ
▽アフリカ(2):アンゴラ、エリトリア
▽中南米(5):キューバ、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、セントビンセント・グレナディーン
▽独立国家共同体(2):ロシア、ベラルーシ
関連報道を総合すると、「友好グループ」は▽内政不干渉である▽紛争を平和的に解決する▽国家の領土保全、政治的独立に対して武力の行使や威嚇をしない――などを原則としている。そのうえで「対話、寛容、連帯は国際関係の中核にあり、国家の平和共存に引き続き極めて重要であるという事実を心に留め、これらの価値観をより広く擁護する」と掲げている。
グループ結成の趣旨が記されているという文書には、「米国第一」を掲げて国際協調に後ろ向きな姿勢の目立ったトランプ政権時代の米国を指して、次のような文章が記されている。
「国連憲章の柱のひとつである多国間主義が現在、一方的な強制措置の発動や、画期的な協定や多国間機関からの離脱などという国際法違反により、前例のない攻撃を受け、それが世界の平和と安全を脅かしている」
グループは中国やロシアが主導しているとみられる。特に中国は、バイデン政権になっても米国との溝は埋まらず、先日の高官協議でも対立が目立った。中国としては、国際社会で主導権を握る米国に対抗するためにも、同国と緊張関係にある国々と同一歩調を取り、多数派を構成して影響力拡大を図りたいという思惑があるようだ。
◇違反してきたメンバー?
グループは3カ月ごとに会合を開き、状況が許せば年1回、ニューヨークで外相級会合を開きたい考えだ。メンバー国が持ち回りで1年間、議長を務めるとしている。またメンバー国やオブザーバー、国連機関の意思と関心に沿って構成を更新するという。
国連加盟国に広く参加を呼びかけており、来月9日までに意思表示をするよう求めている。
ただ、メンバー国を見れば、強権や個人崇拝、一党独裁の批判を受けている国が多いことは一目瞭然だ。ロイター通信の取材に対し、欧州のある上級外交官は匿名を条件にこう答えた。「いわゆる“友人”と呼ばれる国々は、国連憲章に最も多く違反してきたメンバーだ。彼らは自国の人権と基本的自由を尊重することから始めるべきではないか」
◇安保理決議違反の北朝鮮ミサイルへの対応
こうしたなか、そのメンバーである北朝鮮が25日午前7時4分ごろと23分ごろ、咸鏡南道(ハムギョンナムド)宣徳(ソンドク)から日本海に向けて弾道ミサイル計2発を発射、日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。
日本の防衛省は「北朝鮮が既に保有しているスカッドミサイルの軌道よりも低い高度で、いずれも約450km飛んだと推定される」としている。韓国側は高度を「約60km」と発表している。
北朝鮮は通常、3月の米韓合同軍事演習に対抗する形で冬季訓練を実施し、昨年のこの時期にも短距離弾道ミサイルの試射を繰り返している。ただ、試射のたびにミサイルの性能を高めており、周辺国の脅威が増している状況には変わりない。
今月21日にも北朝鮮は黄海に向けてミサイルを試射しているが、この直後には関係国は発表せず、米メディアが3日後に報じたことでようやく情報が発信された。今回は当初から弾道ミサイルの可能性が指摘されていたため、日米韓各国の当局は発射直後に情報を発信した。米CNNテレビは「米国がレーダーと人工衛星を通して、北朝鮮のすべての兵器の実験を追跡している。米国の人工衛星はミサイル発射の事実をその直後にとらえられる」とあえて強調している。
弾道ミサイル試射なら昨年3月29日以来で、バイデン米政権発足後初めてとなる。射程距離とは無関係に「北朝鮮による弾道ミサイル技術を使った発射」であれば国連安保理決議違反となる。
ただ、現状では米国と中露の対立が深刻化しているため、北朝鮮に圧力をかける際に足並みが乱れるのは間違いない。中国は「北朝鮮に対する影響力」を対米交渉のカードとして用いているうえ、安保理常任理事国である中露が共同で対北朝鮮制裁の緩和を求めているという事情もある。
こうしたことから「友好グループ」メンバーである中露が、北朝鮮に対する圧力強化の動きを押し返しながら結束を図るという展開も考えられそうだ。