定点あたり新型コロナ感染者数が各地で増加 感染拡大に注意を
新型コロナが「5類感染症」へ移行したことによって、これまで毎日把握されていた感染者数が、定点医療機関あたりの週1回の報告になりました。さて、足元の感染者数が多くの地域で増えているようです。
定点医療機関あたり感染者数とは
定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数は、定められた一部の医療機関で1週間ごとの患者数を行政でまとめたものです。
たとえばインフルエンザの場合、「1人以上で流行期入り」、「10人以上で注意報」、「30人以上で警報」というくくりになっています。新型コロナの場合、これから手探りで検討していくので、特段、注意報・警報の基準は定められていません。
毎日感染者数が報告されることで、私たちも感染動向を注視しながら診療にあたることができたのですが、現在は日々の感染者数が目隠しされた状態になっているため、少し不安があります。
定点医療機関あたり感染者数は、先週の時点で全国平均2.63人でしたが、明日発表される数値はこれより高くなると予想されます。
沖縄県で感染者数が急増
全国の定点医療機関あたりの感染者数は毎週金曜日に報告されますが、各地域の感染者数が木曜日に先だって報告されます。本日の報告を見ると、かなりの都道府県で前週比増加に転じています。
特に、沖縄の定点医療機関あたり感染者数は10.80人と前週の6.07人から1.78倍増えています。沖縄県の主要病院のホームページをみても、院内クラスターが発生しているようで、職員の感染が診療を制限している構図が観察されます。
若い世代の再感染が多いと考えられますが、海外からのインバウンド観光客も増加しており、今後の感染動向が懸念されます。
下水サーベイランスでも感染者数は増加
本日報告された北海道の定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数は5.44人で、前週の4.36人から1.25倍増えています。
札幌市では、下水中の新型コロナのウイルス量も観察していますが、こちらのほうも増加に転じています(図1)。下水サーベイランスは限られた地域でしか行われていませんが、感染拡大を知るための有用な指標になります。
現時点で医療逼迫は?
現時点で、新型コロナの入院要請が増えているという印象は持っていません。
救急搬送困難件数も下げ止まってはいるものの、急増に転じているほどではありません(図2)。
ゆるやかな感染拡大局面に差しかかった段階で、基礎疾患のある人や高齢者へまだ感染が広がっていないためかもしれません。
小波で終わってくれるとよいですが、今後じわじわと医療が逼迫する可能性があります。
まとめ
今後、ワクチン接種率が低い若い世代で感染が広がってくるかもしれません。
新型コロナとはしばらく共生しなければいけませんので、季節を問わず何度か波のような現象が体感されるかもしれません。
ほとんどの人は軽症で済みますが、基礎疾患を持っている人や高齢者の方はご注意ください。
インフルエンザとは異なり後遺症のリスクは軽視できないため、政府が推奨している時期での新型コロナワクチン接種をご検討ください。
また、周辺で明らかに流行している場合、インフルエンザシーズンと同じように手洗いなどの手指衛生や場面に応じたマスク着用をご検討ください。
(参考)
(1) 札幌市下水サーベイランス(URL:https://www.city.sapporo.jp/gesui/surveillance.html)