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義援金と支援金の違いとは? 復興を支える支援への理解を深めよう

江口晋太朗編集者/リサーチャー/プロデューサー
(写真:ロイター/アフロ)

能登半島地震が発生して2週間が経ちます。この間、被災された方々の救援や被災地における支援体制の構築など、様々な組織や団体が連日現地に駆けつけて活動を行っています。

被災地への支援のため、多くの方が寄付等を行っているのではないでしょうか。ふるさと納税を通じた災害支援の活動では寄付が集まってきています。

まだまだ大変な現場は続きますが、被災直後の混乱からの立ち上がりを経て、これから次第に災害からの復興に向けたフェーズへと移行していきます。とはいえ、家屋の浸水や修繕、生活基盤の再構築、地域経済の再興など課題は山積みです。

活動を支えるために物品提供や人的なボランティア、さらには経済的支援などが挙げられます。

本記事では、復興に向けた支援のあり方について整理してみました。

義援金と支援金の違い

災害支援にあたり、大企業や有名人が「○○万円の義援金を寄付した」というニュースを見かけることも多いかと思います。

ちまたでよく聞く「義援金」と「支援金」。

どちらも、災害の救援や復興に向けた金銭的な支援の一種ですが、その中身は大きく違ってきます。支援する側にとっても、自身のお金がどのようなものに使われているのかを改めて理解してみましょう。

「義援金」とは、被災された方々に分配されるお金

写真:長田洋平/アフロスポーツ

「義援金」とは被災された方すべてに対して公平に分配されるお金のことを指します。

義援金の多くは非営利組織や自治体、内閣府などが窓口となり、一般的に集められたお金はいったん被災自治体に送られ、「配分委員会」のもと被災者に対し「公平・平等」に配分されます。東日本大震災の際には、日本赤十字社や中央共同募金会などが義援金の募金窓口となっていました。他にも、テレビ局や企業などが義援金の募金を行っています。

義援金の特徴はいくつかあります。一つは、集まった義援金はすべての被災者に直接分配され被災者の生活維持やその後の社会復帰のためのものとして活用されます。一方、被災地の復興などに携わるNPOやボランティア団体、行政等が実施する復興事業や支援活動には直接的には使われません。

二つ目は、集まった義援金は被災した県が設置する義援金分配委員会によって、集まったお金をすべて公平に平等に配分します。そのため、集まった義援金の額や被災された人数によって1人あたりに配られる額は変動します。

三つ目は、義援金は公平に平等に配分することが求められるため、被災された方々の情報を正確に把握しなければいけません。そのため情報収集の手間、および配布のための手間が自治体にはかかってきます。また、被災者の情報を正確に集めるという性格上、集まった義援金をすぐに配分するというのは難しく、配られるのに時間がかかるのもポイントです。

つまり、「義援金」とは、今すぐに渡されるわけではないものの、確実に安全に被災者に届くお金という色合いが強いものといえます。

「支援金」とは被災地で活動する団体を支えるお金

提供:イメージマート

「支援金」とは被災地で活動するNPOなどの非営利団体に送られるお金のことを指します。

送られた支援金がどのように使われるかは、人命救助などの緊急支援や食糧支援から、インフラ整備、高齢者のサポートなど団体の活動内容によって変わってきます。

物資提供や人的なマンパワーを投入するなどのハード面での支援活動だけでなく、ソフト面での支援も災害現場では必要です。被災された老若男女、精神的な負担やストレスを抱えることに対するメンタルケアや、被災地の学生さんらに対する教育的な支援の拡充、他にも様々な課題が挙げられます。

また、障害を抱えた方々は被災地において厳しい状況に置かれがちで、もちろん行政らも福祉避難所の開設に尽力しているものの、マンパワーや支援物資や支援体制が不足しがちです。そうした被災地における障害者を支える活動も始まっています。

団体の取り組みの多くは、被災地や被災者からのニーズ、過去の震災・災害を通じた教訓をもとにどのようなフェーズにどのような支援が必要か、これまでの経験やノウハウを活かした支援活動となっており、各機関や団体が独自の判断と責任のもと柔軟に活動を行う支えとなります。

つまり、「支援金」とは「被災地の支援活動に役立つお金」ということになります。

被災者に直接分配する義援金と違い、支援金は支援活動そのものを支えるものであるため、寄付する人は、どのような支援活動に自身のお金が使われてほしいのか、といったことを念頭に寄付先を考えるとよいでしょう。

各団体は支援金を含めた団体への寄付をどのような活動に使ったのかがわかるように支援者や非営利団体の会員を含めて誰もが閲覧できる収支報告書や活動報告書を出しています。どのようにお金が使われたのかも含めて、ウォッチしていくことで、より支援活動への理解も深まることでしょう。

さらに、支援先の団体が認定NPO法人であれば、寄付金が税控除にもつながります。寄付先、支援先を悩んでいる人は、認定NPO法人としてしっかりとした活動実績や活動基盤のある団体から探してみるのも良いかもしれません。

被災の直後に寄付するだけでなく、中長期での継続的な団体支援を

復興は一朝一夕でできるものではなく、多くの時間や労力がかかり、経済的な課題など山積みです。国や行政もできうる限りの支援や政策を行いますが、それだけでは足りず、NPOやボランティア団体などあらゆる関係者が総出となって取り組まなければいけません。

災害の発生時は一時的に支援は集まりますが、残念ながら出来事が風化し支援もだんだんと先細ることも起こりえます。災害発生時の救援のみならず、復興に向けた支援体制の継続的な維持が重要になってきます。

義援金を送って被災者を支えること、さらには様々な災害支援活動を行う団体が継続して団体運営ができるための持続的な活動資源も大切です。

支援金の説明の際に挙げたように、NPOなどの団体の活動を支える寄付は団体の継続につながり、ひいては災害発生後の復興のみならず、今回の災害によって得られた教訓や課題を次に活かし、少しでも被害を抑えたり迅速な復興に向かわせたりするための様々な仕組み作りにつながります。

今回の災害をきっかけに、ぜひとも、団体への継続寄付を検討してみると良いのではないでしょうか。

編集者/リサーチャー/プロデューサー

編集者、リサーチャー、プロデューサー。TOKYObeta代表、自律協生社会を実現するための社会システム構築を目指して、リサーチやプロジェクトに関わる。 著書に『実践から学ぶ地方創生と地域金融』(学芸出版社)『孤立する都市、つながる街』(日本経済新聞社出版社)『日本のシビックエコノミー』(フィルムアート社)他。

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