「ハリケーン・デルタ」メキシコ高級ビーチリゾート直撃か
今年台風の上陸がない日本とは裏腹に、大西洋は記録的なハリケーンシーズンを迎えています。日本時間7日(水)には、今年25号目となるハリケーン「デルタ」が、メキシコ随一のビーチリゾート・カンクンに上陸または最接近する恐れが出ています。
「デルタ」の予想進路
日本時間6日(火)夜時点、ハリケーン「デルタ」の中心はメキシコの700キロ南東に位置しています。中心気圧は968hPa、最大風速は43m/sで、勢力は上から4番目に強い「カテゴリー2」です。デルタは急速な発達を遂げ、中心気圧は24時間で38hPaも急降下しました。
急速発達の一因は、高い海水温です。メキシコ南東沖の海水温は31℃と、例年より約1℃高くなっています。
「デルタ」は今後も発達し、「カテゴリー3」いわゆる「メジャーハリケーン」の勢力へと強まる見込みです。日本時間7日(水)夜には、その勢力のままメキシコ随一のビーチリゾート・カンクン周辺に上陸または最接近する見込みです。
カンクン直撃は「100年で3つ目」
カンクン周辺に「メジャーハリケーン」が上陸したのは、気象学者のエリック・ホルサウス氏によると、ここ100年の間に2回しかないとのことです。
それは1988年の「ギルバート(Gilbert)」と、2005年の「ウィルマ(Wilma)」です。ともに「カテゴリー4(※1)」で上陸した「ウィルマ」は、西半球の24時間降水記録となる1,633ミリの大雨を降らせました。またカンクンの属するキンタナ・ルー州の98%にあたるリゾート施設が被害を受け、カンクンだけでも30万人が家を失ったと伝えられています。
1週間で2つ目の嵐
メジャーハリケーンの上陸が予想されているカンクン周辺ですが、別の熱帯低気圧「ガンマ」の直撃で先週末から大雨が降り続いています。洪水や土砂崩れの影響で、少なくとも6名の死者が確認されています。間髪入れない新たな嵐の上陸に、大きな被害が心配されます。
名前の秘密
大西洋では今年25個のハリケーン(※)が発生しています。これは現時点における観測史上最多記録です。
本来ハリケーンには人名が付けられますが、今年は用意されていた21個の名前がすべて使われてしまい、現在はギリシャ文字が使われています。「デルタ」というのは、ギリシャ文字の4番目に来るアルファベットです。
ギリシャ文字が使われるのは、史上2度目の珍事です。前回が2005年で、この年は観測史上最多となる28個(※1)のハリケーン(※2)が1年で発生、最後の名前は「ゼータ」でした。なお今年は30個発生するとも言われており、そうなれば史上初めて「シータ」が誕生することになります。
※1: 修正しました。
※2: 名前が付いたものは27個発生したが、後の検証で亜熱帯低気圧1つが追加されたため計28個となる。
※3: 正確にはハリケーンのほかに、最大風速17m/s以上33m/s以下のトロピカルストームと、亜熱帯低気圧を含んだ個数。