気象予報士からみえる県民性
国家資格「気象予報士」新設に問い合わせ殺到
今から21年前の1994年2月17日、気象庁は天気予報の自由化を発表し、日本初の国家資格「気象予報士」がスタートしました。
左図は当時の気象予報士試験の概要を伝える新聞記事です。合格すると更新する必要がない国家資格だけに関心が高く、気象庁には問い合わせが殺到しました。実は私も問い合わせをしたひとりで、後日、気象庁から試験科目や出題範囲、参考図書が書かれた紙が送られてきました。
当時は気象庁も手探り状態で、勤務10年以上の職員に想定問題を解いてもらったところ、平均点は69点だったそう。とにかく、試験勉強をしたくても問題集がない、参考図書は大学レベルの本ばかりで、天気に興味がある程度では歯が立たない状況でした。
それでも、第一回気象予報士試験には約2700人が受験し、合格者は500人、合格率は18%、主に気象業務に携わった経験のある人が合格しました。
受験者数は減少へ
気象予報士試験は、これまでにのべ16万人が受験し、合格者は約9千人です。スタートした当時は天気予報自由化を円滑に進めるために、ある程度の気象予報士数を確保する目的で年2回の実施とされていました。しかしながら、合格しても資格を活かせない人が溢れている現状でも、未だに試験は年2回行われています。1回の受験者数も2006年の5千人をピークに、現在は3千人台に減少、試験を年2回実施する意味が外郭団体の存続や資格ビジネスに置き換わっているように感じます。
気象予報士は首都圏に集中
気象予報士が一番多い都道府県はどこでしょう?
答えは一目瞭然で、東京都を筆頭に首都圏に集中しています。資格を活かす場所が限られているのが原因でしょう。男女比では差が歴然としていて、女性は約1割です。テレビやラジオでは女性の気象キャスターが活躍していますが、実際はほんの一握りなのです。
おもしろいことに、人口に対する割合でみてみると、宮城県と北海道がランクインしました。宮城県の気象予報士は223人、北海道は470人です。北海道は地域ごとに天気が大きく違い、四季を通して寒暖の差が激しいことが、お天気に興味を持つ人が多い背景にあるのでしょう。また、昭和17年に日本初の長期予報(季節予報)が仙台地方気象台(現仙台管区気象台)から発表されるなど、宮城県には昔から冷害に翻弄された歴史があります。
一方で、人口比からみて気象予報士が少ない都道府県に大分県と熊本県が上位に。九州といえば、梅雨の豪雨や台風被害が大きい土地柄です。また、和歌山県は鹿児島県に次いで台風の上陸が多い県ですが、理由は思いつきません。
気象災害イコール気象予報士とは一概に言えず、まだまだ考えが浅いですが、お天気への県民性が見え隠れしているように思えて、興味は尽きません。
【参考資料】
「気象予報士に問い合わせ殺到」1994年2月18日毎日新聞
気象予報士について(気象庁ホームページ)
気象予報士試験,統計情報(気象業務支援センター)
仙台管区気象台の沿革(仙台管区気象台ホームページ)