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いよいよ直前 知っておきたい2023年度共通テストの注意点 「これくらい大丈夫」が落とし穴に

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆読解力がないと解けない時代に

コロナ禍での3度目となる大学入学共通テスト(以下「共通テスト」と略)が目前に迫りました。受験生や保護者が知っておきたい注意点をまとめます。

共通テストは1月14日(土曜)、15日(日曜)に実施されます。

共通テストは2022年、「数学が難しすぎる」とSNSで話題となりました。

実際に2022年度の共通テストは全30科目中、「数学I・数学A」など7科目の平均点が過去最低となりました。

共通テストを実施する大学入試センターの外部評価分科会は数学2科目の難易度について、

「計算量の多い設問も散見され、解答時間に余裕がなくなった受験者が多いことが推察される」

として、適切ではない、としました。

あわせて、生物は「問題の分量が多すぎる」、化学は「一定数の受験者にとってすべての問題を時間内に解答することは難しい構成であった」としています。

高校教員や予備校講師にこの傾向について聞いてみると、皆さん「問題そのものの難易度は昔のセンター試験と同じ」としつつ、「ただし…」と続けます。

「会話文形式や資料を読ませるなど、読解量がどの科目でも増えた。解答に至るプロセスを考えれば、総合的な難易度は高い。この傾向は今後も変わらないだろう」(東北・高校進路指導教員)

「英語はセンター試験1年目の1988年度は2500語程度でした。それが2022年度の共通テストは6000語にまで増えています。リスニングも、センター試験時代は2回読みでしたが、共通テストは1回読み・2回読みの混合です。高速で読み解く力が問われます」(英語・予備校講師)

「他の科目でもそうだが、数学も日常生活でその知識がどう生かされるかを見る問題が増えた。その分、問題文の量はセンター試験時代から4倍程度まで増えている。数学の知識だけでなく読解力がないと高得点は望めない」(西日本・高校教員数学担当)

◆受験前日までに確認しておきたいこと

受験前日となる13日には試験会場の下見をする受験生も多いです。

「13時~17時」「14時~16時」など大学によって下見可能となる時間帯は異なりますので、下見に行く場合は必ず、試験受験会場となる大学のサイトなどを確認しましょう。

試験前日までに確認しておきたいポイントは、「受験当日の自宅から会場までの交通手段の確認」と「会場となる建物・棟の確認」の2点です。

交通手段については、行き方などはもちろんですが、受験当日は土日のため、平日ダイヤとは異なる可能性も高いです。当日慌てないためにも、ダイヤもしっかり確認しておくといいでしょう。

また、建物・棟の確認も重要です。

高校生は高校も大学も規模は変わらないと思うかもしれませんが、大規模な大学の場合、棟を間違えると、その移動だけで10分程度かかることもあります。共通テストの会場となる大学は中・大規模校が大半ですので、どの棟・建物になるのか、確認しておくといいでしょう。

◆当日の持ち物を確認しよう

持ち物リストをまとめましたので、これを元に確認するといいでしょう。

以下、それぞれ個別に解説します。

まず、黒鉛筆・シャープペンシルについて。

試験会場で利用できるのは黒鉛筆(H、F、HB)のみです。シャープペンシルはメモや計算をする際の補助としてのみ、利用できます。

シャープペンシルで解答した場合、解答が読み取れないこともあるので、大学入試センターは利用しないよう、呼び掛けています。

持参するかどうかは受験生次第ですが、「持ち替える手間が意外とかかるので、黒鉛筆だけにした」と話す受験生も。

黒鉛筆は、「和歌・格言等が印刷されているものは不可」と大学入試センターが指定しています。それと、丸鉛筆だと、机で転がりやすいので避けた方がいいでしょう。

鉛筆削りは試験中に机に置くことができます。ただし、試験中に鉛筆を削るとそれだけで解答回答時間が減ってしまいます。

「うちでは、黒鉛筆は10本、持っていくように指導しています。多すぎるとも言えますが、それだけ多ければ芯が折れても、『まだあるから』と安心できます。芯が折れた鉛筆は休み時間に削ることも勧めています」(首都圏・私立高校進路指導教員)

時計は「辞書,電卓,端末等の機能があるものや,それらの機能の有無が判別しづらいもの・秒針音のするもの・キッチンタイマー・大型のものは不可」(大学入試センターサイトより)となっています。

なお、受験会場・教室によっては時計があります。ただし、時計の有無や見やすい位置にあるかどうかは、試験当日にならないと判明しません。最悪の場合、時計を確認できないこともあり得ます。それを考えれば、時計は持参した方がいいでしょう。

◆お弁当・参考書は意見が分かれる

お弁当・飲み物は、持参するかどうかは受験生の任意となります。

ただし、受験会場で販売しているかどうかは会場によりますし、販売があっても、混雑で大変な思いをした、との報告もが多数あります。

持参するか、当日に最寄り駅のコンビニ等で購入する方がいいでしょう。

ただし、受験会場近くのコンビニでは、考えることが皆同じで、こちらも混雑します。

取材していくと「コンビニなら自宅近くの店で買うのが一番」と話す大学生が多くいました。

参考書やノート、それに教科書も持参するかどうかは受験生の任意です。

こちらは意見が大学生や高校教員などの間でも分かれました。

「休憩時間中に少しでも読んで点数の積み上げを図るべき」とするのが肯定派。

「たくさん、持って行ったところで、邪魔なだけ。いっそ、持参せずに休憩時間中にはトイレに行くなり、心を落ち着かせる方がいい」とするのが否定派。

それぞれ、一理あり、どちらを取るかは受験生次第でしょう。

なお、中間派とも言えるのが、ノート持参。

「普段、使っているノートを持ち込みました。休憩時間中にパラパラめくることで、『今まで頑張ってきたのだから』と自信を持つことができました。後輩にも勧めています」(早稲田大・1年)

「私は、試験用のノートを事前に作成。各教科10分程度で読めるようにしました。そこに、何度も間違えたポイントや公式などをメモ。ノート1冊なら邪魔にならないですし」(神戸大・2年)

◆試験当日~もしも遅れた場合どうする?

共通テストの実施時期は例年、北日本を中心に荒天となりやすいです。試験当日、交通機関が止まり、試験時間に間に合わないこともあるでしょう。

「試験当日,交通機関の事故又は災害等が発生した場合は,試験開始時刻を繰り下げることがあります。受験票に記載されている「問合せ大学」へ連絡し,試験場に向かってください」(大学入試センターサイトより)。

もし、試験当日、試験会場に向かう途中で事故にあったなどの理由であれば、試験当日の終了時間までに追試験申請をすれば追試の受験が可能となります。

◆試験当日~もしも受験票・写真票を忘れたら?

試験会場で申請、仮受験票・仮写真票が交付されると受験することができます。

ただ、申請に無用の時間がとられることになります。

仮写真票のためには、スピード写真も用意しなければなりません。

自宅を出る前に、忘れないよう持ち物確認をしっかりとしておきましょう。

◆2022年カンニング事件によりスマホは規制強化

大学入試センターは不正行為と「不正に準じる行為」をそれぞれ定めています。

この中にはカンニングや試験中のスマートフォン利用なども含まれます。

2022年には、スマホとイヤホンをつなぎ解答を外部から得た受験生によるカンニング事件が発覚。この受験生は2021年にもスマートフォン持ち込みで成績無効となっていたのですが、2022年はさらに巧妙な手口を用いてきました。事件発覚後、この受験生は偽計業務妨害で家裁送致、保護観察処分となりました。なお、共通テストについては失格(前年度も含めて成績無効)となっています。

2021年にはマスク不着用で受験生が逮捕・成績無効となったトラブルが起きました。

逮捕理由は長時間、会場に居座ったためであり、成績無効となった理由は試験監督の指示に従わなかったことが「不正に準じる行為」に抵触したためです。

大学入試センターが公表している「受験上の注意」はきちんと読み、その内容を了承していることが受験の前提となります。

「受験上の注意」をきちんと読まなかったことで成績無効となることがあるので注意しましょう。

具体的には2022年のカンニング事件を受けて強化された「スマホ・イヤホンの所持」、それから「定規の利用」「終了後の解答」「周囲への迷惑行為・試験監督の指示無視」の4点を特に注意したいです。

まず、「スマホ・イヤホンの所持」について。

2023年度からは、試験中に使用を禁止する機器として、従来のスマートフォンやウェアラブル端末などに加え、イヤホン、タブレット端末、音楽プレーヤーが追記されています。

そして、イヤホンは試験中に装着しているだけで不正扱いとなりました。

補聴器や人工内耳の日常的な使用、聴覚過敏で耳栓を使用する時などは、診断書を添えて事前に申請することが必要となります。

スマートフォンなどの電子機器はこれまでも試験会場ではかばんにしまうことなどを求められていました。

2023年度からは「試験室に入る前に電源を切る」「試験前に監督者の指示で電源が切られているか確認を行う」、この2点が明記されました。

付言すると、2022年にはカンニング事件以外にも、太もものあいだにスマートフォンを挟んでいた受験生が全教科で成績無効となっています。

2023年度からは」「不正行為は警察へ被害届を出す場合がある」とも明記されるようになりました。

なお、仮にですが、電源切り忘れなどでかばんにしまったスマートフォン・携帯電話が鳴った場合は、試験監督に申し出ましょう(その前に飛んでくるかと思いますが)。

かばんにしまってある場合は、失格・成績無効とはなりません。

「試験時間中にかばん等の中でスマートフォン等の着信音やマナーモードの振動音などが発生した場合には,監督者が本人の了解を得ずにかばん等を試験室外に持ち出し,試験場本部で当該試験時間終了まで保管します」(大学入試センター・サイトより)。

◆意外と知らない不正行為

定規の持ち込みは可能ですが、試験時間にはかばんなどにしまうことが求められます。

2019年には現代文の問題を読む際に定規を利用していた受験生が「不正行為」と認定されました。

終了後の解答が「不正行為」となることは、大学入試センター「受験上の注意」にも以下のように明記されています。

「『解答やめ。鉛筆や消しゴムを置いて問題冊子を閉じてください』の指示に従わず、鉛筆や消しゴムを持っていたり解答を続けること」

高校や塾・予備校によっては、答案を回収する土壇場まで解答することもあるでしょう。

が、共通テストではこれも不正行為となります。

長文を読むのに定規を当てるのは、普段なら別に悪いことではありません。土壇場まで解答しようとするのも同様です。しかし、これらはいずれも不正行為として、成績無効という重い処分が下されます。

また、「周囲への迷惑行為・試験監督の指示無視」も注意してください。先ほど紹介した2021年のマスク騒動がこれに該当します。

◆2科目受験の勝手な解釈も危険

不正行為以外でも注意したい事項はいろいろあります。

高校教員や予備校講師などに取材すると、「1学年あたり毎年1人は出てしまう」と話してくれたのが「2科目受験の勝手な解釈」でした。

地理歴史・公民と理科について、共通テスト出願時に2科目受験とした受験生がその後、1科目だけで十分、ということが起こり得ます。

その場合、当日に1科目の受験だけでいいのか、と言えば、それが許されません。あくまでも、出願時に登録した科目数での受験が必要です。

これを勝手に解釈して、当日は1科目だけでいい、と勘違いする受験生がいます。

地理歴史・公民は今年だと、2科目受験の場合、試験開始が9時30分。1科目受験の場合、10時40分。

そこで1科目受験の開始時間前に行くとどうなるか。これがなんと受験不可となります(他の科目は受験可能)。

どの科目でも、大学入試センターは試験開始20分以降の入室を認めていないからです(交通機関の遅れなどは除く)。

もし、1科目だけで十分だったとしても、2科目登録をした場合はあくまでも2科目、受験するようにしてください。

◆きちんとマークされてるかを確認しないと0点に

きちんとマークされていなかったせいで0点になってしまう可能性があるのは、「受験番号」「解答科目欄」「2科目受験の選択ミス」の3つです。

まず、受験番号について。きちんとマークできているのが当たり前、と思うかもしれません。が、意外とできない受験生が毎年一定数います。そのため、大学入試センターはわざわざ、注意を呼び掛けています。

特に次のア~エのようなマークミスが多いので、注意してください。

ア 間違った数字にマーク。(例えば 1 を 0 にマーク、2 を 1 にマーク)

イ 隣り合う数字を逆の順序でマーク。(例えば 1234 を 1324 のように入れ替えてマーク)

ウ 英字のマークがない。

エ 数字・英字の全てにマークがない。

2つ目の解答科目欄についてですが、国語と英語(リスニング)以外には解答科目欄があります。これをきちんとマークしないと「解答科目が特定できないため0点となります」(大学入試センター)。

外国語と数学②については例外規定があるものの、それでも、解答科目欄はきちんとマークしましょう。

最後に「2科目受験の選択ミス」とは、地理歴史・公民、理科②で選択できない科目の組み合わせを選択・マーク、解答した場合です。これは

「第 1 解答科目は選択した科目を通常どおり採点し、第 2 解答科目は 0 点(「科目不明」)として取り扱います」

前記の不正行為と同様、こちらもちょっとした確認で十分に防げる話です。しかし、こちらも毎年、一定数の受験生が確認ミスから0点となってしまうので注意してください。

◆類似科目に注意

試験時の注意点として、類似科目が挙げられます。

地理歴史・公民だと「倫理」「政治・経済」「倫理、政治・経済」、数学①は「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・A」、数学②は「数学Ⅱ」「数学Ⅱ・A」が同一冊子にまとまっています。

そのため、「数学Ⅰ・A」を選択しているにもかかわらず、「数学Ⅰ」を解答してしまい、試験時間中に気づいても取り返しがつかない状態に陥る、というケースが毎年起きてしまっています。

大学入試センターも注意を呼び掛けるほどなので、類似科目にはくれぐれも注意しましょう。

◆試験時の転記・1日目の採点は

共通テストの受験後には自己採点をしたうえで出願校を決める必要があります。

この自己採点のためには、どのような解答をしたか、試験時間中に問題冊子に転記することが必要です。この問題冊子は持ち帰ることができるので、忘れずに転記・持ち帰りするようにしてください。

試験終了後の自己採点はすぐするべき、との意見と、2日目にまとめて、との意見がそれぞれあります。

どちらも一理ありますが、1日目にすぐ自己採点をすると、その分だけ2日目の対策にあてる時間がなくなります。

それに、もしも点数が悪かった場合、2日目に無用のプレッシャーを招くことになります。私としては2日目にまとめてすることをお勧めします。

画像制作:Yahoo!ニュース
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【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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