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2025年にブレイクするJリーガー11

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

2024年も大晦日となり、新年を迎えます。今年の活躍度や所属チームでの期待感、今後の伸びしろを総合的に評価して、現時点でJ1在籍が決まっている選手の中から筆者目線で「2025年にブレイクするJリーガー11」を選びました。

GKは木村凌也(横浜F・マリノス)です。やはりJ1のクラブはどこも開幕前の時点で、正GKがほぼほぼ見えている中で、マリノスはサガン鳥栖から復帰する朴一圭、現所属の飯倉大樹なども含めて、新監督の基準でフラットな競争が見込まれます。木村はU-20W杯で守護神を担った逸材であり、マリノスのユースから日本大学に進学してからも、クラブスタッフに目をかけられているのは伝わって来ました。そして卒業を待たずに部活を終了し、特別指定ではなく正式に加入する事実からも期待があります。

オフザピッチでは温和なイメージが強いですが、ピッチでは闘争心を押し出してゴールを守れるパーソナリティ、確かな技術でどこまでレギュラーに迫れるのか。マリノスはACLエリートなど、試合数も多いことが見込まれるだけに、遠からずチャンスはあると予想します。”昇格組”では市川暉記(横浜FC)がJ1のステージでどこまで存在感を発揮できるか楽しみですし、権田修一の退団が決まっている清水エスパルスで、昨シーズン2番手だった沖悠哉が新守護神の座を射止めるのか、ポテンシャルでは引けを取らない梅田透吾などの逆転があるかも注目です。

ディフェンスは中村拓海(セレッソ大阪)、森昂大(アルビレックス新潟)、田中隼人(柏レイソル)、新保海鈴(横浜FC)の4人です。

大分トリニータのアカデミー育ちである中村は東福岡高から鳴り物いりでFC東京に加入しましたが、ブレイクしかかっては伸びきれない状況が続き、横浜FCでもその壁を打ち破れなかった印象。目標だったパリ五輪も逃してしまいました。アーサー・パパス新監督の指導でどう生まれ変わるのか。戦術的にフィットする可能性は高そうなので、長期の怪我をしないこと、そしてメンタル面の成長が鍵かもしれません。

森に関しては徳島で磨いてきたポジショニングやビルドアップの能力を新天地で発揮できないことが想像できないぐらい、最終節まで残留争いを強いられた新潟にとって、とても的確な補強に思います。J2水戸のコーチだった樹森大介監督を迎えて新たな冒険となりますが、前体制のスタイルを引き継ぎながら、課題だった守備の強度を高めてくれる選手でしょう。ポテンシャルに疑いの余地はないですが、カテゴリーが上がることでのプレッシャーに打ち勝てるかどうか。

田中は柏のアカデミー育ちで、昨年はU-20日本代表で高井幸大(川崎フロンターレ)やチェイス・アンリ(シュトゥットガルト)と切磋琢磨したタレントですが、前監督のもとで出番を掴みきれず、J2のV・ファーレン長崎に育成型期限付き移籍。下平隆宏監督のもとでリーグ戦の全試合に起用されて、3位フィニッシュに貢献しました。プレーオフで惜しくも長崎の昇格は逃しましたが、復帰した柏で、対人の強さと若くして備えたリーダーシップ、左足のフィードはリカルド・ロドリゲス新監督の高い評価を勝ち取る可能性が高いです。

新保は元日本代表の田中隼磨氏を父に持つタレントですが、キャリアは順風満帆ではなく、セレッソ大阪のユースからJ2のレノファ山口に加入、そこからテゲバジャーロ宮崎、いわてグルージャ盛岡に期限付き移籍して、J3の環境で揉まれて、山口に復帰しています。そして今年はJ2の舞台で、左サイドバックながら8アシストを記録するなどブレイクを果たしています。鋭い攻め上がりから高精度のクロスに持ち込む左足が武器ですが、山口の志垣良監督のもとで守備も磨いており、J1で通用できるか楽しみです。

中盤は久保藤次郎(柏レイソル)、中島洋太郎(サンフレッチェ広島)、平川怜(東京ヴェルディ)、佐藤龍之介(FC東京)の4人を選びました。

久保はJ2の藤枝MYFCで頭角を表し、移籍先の名古屋グランパスでも独特のドリブルを武器に、出番を得れば相手に脅威を与えていましたが、スタメンに定着できず。途中加入で”救世主”として期待されたサガン鳥栖でも、インパクトは放ちましたが、奇跡的な残留に導くまでの活躍はできませんでした。J1の強度で継続的にハイパフォーマンスできるようになれば、間違いなくブレイクできると思いますが、新天地の柏でどうなるか。ポゼッションを重視するリカルド・ロドリゲス監督のもとで、高い位置で仕掛ける回数を増やせれば、より活躍の可能性は高まるでしょう。

中島は広島の若きホープとして期待される逸材で、今年もACL2で勝利に貢献したり、リーグ戦でも短い時間ながらキラリと光るプレーを見せています。来年はタイトル奪取を目指すチームで中心的な存在になれるか。中盤の主力だった松本泰志が浦和レッズに移籍するなど、戦力の入れ替わりもある中で、本格的な一本立ちが求められます。9月にはU-20W杯も予定されており、佐藤龍之介やベルギーのゲンク移籍が濃厚と伝えられる保田堅心(大分トリニータ)などと、世界に名前を売り込むことができるか。

FC東京のアカデミー育ちである平川は2017年に行われたU-17W杯の主力メンバーで、久保建英(レアル・ソシエダ)や中村敬斗(スタッド・ランス)とも並び称される逸材でしたが、プロの世界で壁にあたり、東京から鹿児島ユナイテッド、松本山雅への期限付き移籍を経て、ロアッソ熊本に加入。大木武監督の信頼を得て、司令塔として獅子奮迅の活躍を見せ、2023年にはキャプテンも務めました。

そこから飛躍が期待されたジュビロ磐田ではチーム事情から左サイドで起用されるなど、プレー強度やデュエルは成長したものの、本来の技術やセンスを発揮できたとは言い難い2024シーズンでした。不退転の覚悟で、古巣と同都市のライバルであるヴェルディに移籍を決断した平川ですが、3ー4ー2ー1をベースとする城福浩監督のチームで、どういった活躍を見せるのか。インサイドであることは間違いないですが、やはりアビスパ福岡に移籍した見木友哉が担っていた左のシャドーが適任でしょう。そこで主力に定着するには7得点9アシストを記録した熊本時代のような数字も求められます。その先には夏のE-1選手権から念願の日本代表入りも視野にあるはずです。

佐藤は平川の後輩で、高度なテクニックと卓越したビジョンを兼ね備えるタレント。昨年暮れに16歳で東京とプロ契約を結びました。今年夏にはトレーニングパートナーとしてパリ五輪のチームに帯同。大岩剛監督をして「チームに残したかった」と言わしめました。中島とともにU-20日本代表で、主軸としての活躍も期待されますが、育成力にも定評のある松橋力蔵監督の評価を掴んで、リーグ戦でチャンスを掴めるかどうか。便宜上、左サイドハーフに置いていますが、ボランチも二列目もこなせるポリバレントで、爆発的な成長を見せれば、先輩の久保建英がそうであったように、ロス五輪を待たずして”森保ジャパン”入りも見えてきそうです。

2トップは神田奏真(川崎フロンターレ)と大卒ルーキーの中村草太(サンフレッチェ広島)を並べました。神田は全国高校サッカー選手権でも活躍した静岡学園から川崎に加入。幅広いポストワークとボックス内の勝負強さを武器に、高卒ルーキーながらACLエリートなどで鬼木達前監督にアピールし、最終節のアビスパ福岡戦で、J1デビューを果たしました。その対戦相手がわのベンチにいた長谷部茂利新監督が率いるチームで、今シーズン19得点の山田新を中心とする前線の主力争いに食い込んでいけるか。

ネックは広島の中島や東京の佐藤とともに、参加が見込まれるU-20アジア杯。2月12日から3月1日にわたって行われるため、少なくとも世界行きが決まる準々決勝が終わるまで、所属クラブで活動できないですが、国際舞台での経験をクラブでの活躍にも還元できるはず。この世代には後藤啓介(アンデルレヒト)や塩貝健人(NECナイメヘン)、貴田遼河(アルヘンティノス)など、すでに海外で挑戦しているアタッカーも多く、ロス五輪に向けた競争は激しくなりますが、、まずは川崎での活躍が飛躍のメインルートになります。

中村は2025シーズンの大卒ルーキーで最注目の一人。前橋育英高から明治大学に進学し、競争の激しい明大で押しも押されぬエースに。今年の関東大学サッカーリーグでは得点王とアシスト王の二冠を達成しました。広島は機動力と決定力に優れるFW加藤陸次樹が存在感を高めています。さらに今シーズン磐田で19得点を記録したジャーメイン良も獲得しましたが、外国人FWのピエロス・ソティリウとドウグラス・ヴィエイラの退団がリリースされており、前半戦のACL2、後半戦のACLエリートなど、過密日程のシーズンになる中で、中村にはいきなりのフル稼働も期待されます。

筆者の視点でブレイク期待の11人を選びましたが、皆さんも2025年に向けて、それぞれ期待のタレントを探してみてください。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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