韓国MERSとマスク問題:笑う、バカにする、叱る?:「知的ワクチン」で感染症と戦う方法
■韓国MERS
韓国のMERS問題がなかなか収まりません。中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスです。122人の感染者、10人の死亡者、約3000人の隔離者と報道され、各方面に影響が広がっています。
韓国経済、MERSで大打撃も:感染者100人超す)・韓国人に「来ないで」、上海国際映画祭で主催者:ウォール・ストリート・ジャーナル 6月11日
韓国MERS感染 死者10人に 感染者は出産直前の妊婦や、発症病院近くで勤務の警察官も:産経新聞 6月11日
(その後のニュースで死者は11人に。「初の4次感染か」との報道も。:6/12)
韓国政府、関係者、感染者、一般市民の対応を問題視する声も上がっています。
はじまりは、たった一人の男性でした。
対応の混乱もありました。
韓国政府は航空機のMERS消毒法分からず、殺虫剤をまくエアラインも・・韓国ネット「助けを求めてください」「大丈夫と自信満々だったことが…」FOCUS-ASIA.COM 6月3日
MERSは、今のところワクチンはなく、治療法が確立していません。予防につながる私たちの適切な行動こそ、大切です。その正しい行動がとれるための、正しい知識である「知的ワクチン」が大切です。
■韓国MERSのマスク
日本人はマスク好きです。カゼでも感染症流行でなくても、マスクをする人もいます(伊達マスクの心理学:人間関係を避ける若者と私達)。諸外国から見ると、奇妙に思えることも多いようです。
しかし、今回は韓国でも大勢の人がマスクをし始めているようです。マスクの売り上げが伸びているとか、「MERS感染予防でマスクを着用するソウル市民」と写真つきで報道されたりもしています(MERS感染 特集:ウォール・ストリート・ジャーナル6.10)。ただし、実際にどれほどの人がマスクをしているのかはわかりません。
そして、韓国MERSとマスクについては、いくつか気になる報道もされています。
■国民には不用と言いつつ自分はマスクする大臣
MERS予防にマスク不要と言っていた韓国保健福祉相、マスク姿で登場=韓国ネット「セウォル号船長と同じ」「もう愛国心なんてなくなった」(Recordchina6.3)。この報道がどれほど客観的な事実なのかどうかはわかりませんが、このような印象を与えてしまったこと、報道されてしまったことは、政府に対する大きな不信感のもとになるでしょう。
■マスクをバカにする人
「去年はセウォル号、今年はMERS」=凍りつく韓国経済、影響は多方面に―韓国:(Recordchina6.10)の中には、こんなネットユーザーの声が紹介されていました。
「先日、映画館に行ったが、マスクをして映画を見ているバカがいた。そんなに気にするんなら、見に来なきゃいいのに」 。
人が集まるところにできるだけ行かないのは賢いことですが、マスクがバカではありません。このような発想は、このユーザー一人ではないでしょう。
■韓国の大学教授、マスク着用の香港学生に「ギスギスした雰囲気を教室や韓国に持ち込むな!」 教室から追い出す
マスクは失礼というのも、わからなくはありませんが、感染症が流行している場合はもちろん別です。「ギスギスする」という理由は、ますますよくわかりません。
■マスク・ジョーク:全員マスクの韓国結婚式写真は冗談だった
全員マスクの結婚式写真がネット上で拡散し、話題になりました。恐怖心をあおっているという批判もありました。
ところが後になって、これは結婚式の時に撮った冗談写真だとわかりました。冗談は良いですけれども、不謹慎とか、マスクをしている人たちをからかっていると感じる人もいるでしょう。関係者は「この写真でMERS感染の恐怖を煽ったり、誰かを怖がらせたりしようという意図はなかった」と語っています。
■MERSとマスク
MERS対策として、マスクが絶対ではありません。しかし、私たち自身ができることの一つです。
また、こんなニュースも。
韓国のMERS感染防止には、微粒子用「N95マスク」は必須:タイ・バンコク空港での検疫強化:Global News Asia 6月8日
■「知的ワクチン」と予防行動先行者(プロトタイプ)に対する態度
MERSの医学的ワクチンがなくても、私たちが正しい知識を持つ「知的ワクチン」なら、使えます。専門家ではなくても、市民にもできることがあります。2009年に日本でも新型インフルエンザが話題になったときには、マスク、うがい、手洗いが、勧められました。不特定多数の人が出入りする建物の玄関には、消毒剤が置かれました。
しかし、あなたは最初からこれらの予防行動をしていたでしょうか。予防活動が正しいとの知識を持っていても、他の人よりも早く率先して予防行動をとっている人に対しては、どう思いましたか。神経質だと笑ったり、臆病者だとからかう気持ちはなかったでしょうか。
私が行った研究(「新型インフルエンザ(H1N1)のリスク関連行動に及ぼすプロトタイプ・イメージと不安の影響」)の結果、このような先行者(プロトタイプ)を私たちがどう見るかこそ、その後の適切な予防行動に影響を与えているとわかりました。
先んじて予防行動に取り組んでいる人に対して、良いイメージを持つことが、その後の私たちの予防行動につながります。先行予防活動者を否定的に見てはいけません。先ほど紹介した韓国の大学教授は、とんでもない間違いをしていることになります。
正しい知識を持つこと、それを行動に移すことが「知的ワクチン」となって、感染症予防が進むのです。