台風の高潮は暴風とセット。風が吹く前に避難しないと間に合わない。洪水とは避難場所が違うことにも注意を
台風10号では高潮・高波の発生も懸念されています。
高潮のハザードマップは、市町村のものが最も詳しいハザードマップになります。洪水時の想定最大規模の最新情報が反映されていて、地震まで重ねて表示できる、国土交通省の重ねるハザードマップはいつもお薦めしているものですが、高潮については重ねられません。市町村のハザードマップでチェックしないと見落としがちかもしれません。
高潮の怖さは3つ 急に海面が高くなる 低い土地で水が引かない 高潮になる前に暴風になるので暴風前に避難しないと間に合わない
日本気象予報士会サニーエンジェルス 山本由佳さんは台風による高潮の危険についてこのように語ってくれました。
福岡市の高潮ハザードマップを見ても、高潮の継続時間が12時間から1日となっている場所もあります。
さらに、怖いのは、台風の際には、高潮になる前に暴風になっていることです。波が高いまま押し寄せてきても、避難するには、時すでに遅しとなっているかもしれません。避難したくても風が強くて逃げられないこともあるのです。暴風の前に避難しなければいけない事は意識しておかないと逃げ遅れます。
高潮の避難場所は洪水の避難場所とは異なる場合が
さらに、注意してほしいのは、高潮の避難場所と洪水の避難場所が異なっている場合があるということです。
こちらは、福岡市の高潮ハザードマップに避難場所を重ねたもの。高潮独自の避難場所が重ねられて、福岡市のWEB版ハザードマップは使いやすいです。
福岡市の洪水ハザードマップは、最新の想定最大規模のハザードマップになっています。これに、避難場所を重ねると避難場所が高潮と異なっている場所があります。台風の際には、高潮も洪水も両方発生する場合があります。あわせてチェックしておくことが必要です。
波が高くなるのは、高潮の仕組みで理解
高潮の起こる原因は、吸い上げ効果、吹き寄せ効果、ウェーブセットアップなどが有名です。でも、私は前述の山本由佳さんにお話をお聞きするまでちっとも理解できていませんでした。こどもたちにはしっかり伝えたいです。
吸い上げ効果があるから、高潮対策は中心気圧情報が大事!
まず、吸い上げ効果。台風は低気圧だから、周囲より気圧が低いのです。そのため海面を吸い上げていくので高潮になります。1hPa気圧が低くなると、海面は約1cm上昇します。日本の平均気圧は1013hPaなので、例えば950hPaの台風が来た場合、単純に引いてみると63なので、低気圧による海面上昇だけなら、63cm、海面が上昇することになります。
簡単に引き算だけで計算できてしまうのですね。引き算を習った時に覚えたかったです。
中心気圧による潮位が異なるので、東京都の江戸川区や葛飾区などの江東5区では、台風の中心気圧が930hPa以下の猛烈な台風が東京に接近していることがわかると、高潮・氾濫発生の発生2日前に自主的広域避難情報が発表され、1日前には広域避難勧告が発令されることになっています。低い土地では江東5区に限らず同じ危険があります。人口が多い都市部では、避難に時間がかかるからです。
吹き寄せ効果
次に、風による吹き寄せ効果です。台風の強い風が海岸に向かって吹きこんできたら、陸にむかって水位をあげるのです。
吹き寄せ効果により、風速が2倍になれば潮位は2乗になり、いつもの4倍の海面上昇が起きてしまいます。だから台風のように風が強いと高潮の威力が強まるのです。だから暴風前の避難が重要になります。
ウェーブセットアップ
さらに、浅瀬で波が高くなり、海岸付近で波の形が不安定になって、海水が沖に戻りにくくなり、沿岸部の潮位が特に上昇するウェーブセットアップという現象も高潮の原因です。
高潮と高波で破壊力アップ
ところで台風は、高潮と高波がセットで襲ってくる可能性があります。
潮位が堤防を越えなくても、潮位が高い中で高波があると、波が海岸堤防を越えて浸水するおそれもあります。高潮や、高潮と重なり合った波浪による浸水などにも厳重に警戒が必要で合わせ技は怖いです。
2018年、関西で被害をもたらした台風21号は高潮と高波がセットで起こっています。
台風の高潮・高波は暴風となる前に避難 避難場所の確認を
以上から、台風による高潮・高波対策として、風が強くなる前に避難すること、都内だと台風の2日前から自主的広域避難情報が出される場合もあるほどに早期避難が大切であること、避難場所は、いつもと違う場合があることを知って、早めの避難を検討していただければと思います。