バイデン政権と中東(4)
もう一つ、このピサールの交友関係に言及しておきましょう。ピサールはレナード・バーンスタインというウエストサイド物語を書いた作曲家と非常に親しかったのです。バーンスタインが交響曲をいくつか書いていますが「3番」というのがあります。「カディッシュ」というユダヤ教の挽歌というのかな。亡くなった方を悼む曲があります。それは朗読と音楽を一緒にやるという曲なのですが、それの「朗読部分をお前、書いてくれ」と、ピサールはバーンスタインに頼まれました。ただ「バーンスタインの素晴らしい音楽に合うような文は、私には書けない、私は、もともと英語のネイティブではないから」と、いったんは断ります。ですがバーンスタインが亡くなった後、気持ちが変わって、「カディッシュ」に祈りの言葉を書いています。ただその祈りの言葉が非常に厳しくて、神様を叱りつけています。アウシュヴィッツというこの世の地獄があって、ダンテの地獄よりも酷いことが起こっていて、罪もない人たちが焼かれていった時、貴方はどこにいたんだ、貴方はなぜ助けに来なかったんだ。私は許さない、貴方を。そう神様を??りつける。最後は祈るのですが、凄まじい詩を書かれています。そういう義理のお父さんの話を子どもの時にずっと聞きながら育ったとブリンケンは言っています。私もユダヤ人の本をいっぱい読んでいるから、アウシュヴィッツに行くと、何か懐かしいような不思議な気持ちがしました。もう、ここは来たことがある。良く知っているという。不思議な感覚がしました。
この記事は有料です。
高橋和夫の中東・イスラム・国際情報のバックナンバーをお申し込みください。
高橋和夫の中東・イスラム・国際情報のバックナンバー 2021年4月
税込275円(記事15本)
2021年4月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。