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「総本店」を標榜する大型ゲームセンターがオープン eスポーツチームの拠点作りも視野に

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
9月20日にオープンした「GiGO総本店」(※筆者撮影。以下同)

ゲームセンター経営大手のGENDA GiGO Entertainmentは、9月20日に「GiGO(ギーゴ)総本店」を東京、池袋にオープンした。

同店はサンシャイン60通り沿いにあり、ビルの地下1階~地上3階までの4フロアを使用し、営業面積は実に947坪もある大型店舗だ。JR池袋駅から程近い、絶好のロケーションに居を構えたこともあり、オープン当日は開店前から約500人もの客が並んでいた。翌21日以降も客足、売上ともに好調なようで、同社広報によると「オープンから当初計画を上回っております」とのことだ。

オープン直後から多くの客が来店。某キャラクターのぬいぐるみが投入されたクレーンゲームには、数十人の行列ができるほどの盛況となっていた
オープン直後から多くの客が来店。某キャラクターのぬいぐるみが投入されたクレーンゲームには、数十人の行列ができるほどの盛況となっていた

店内で稼働するゲームの大半はクレーンゲームで、同社の発表によると269台を設置しているとのこと。1階はクレーンゲームコーナーで、2階はクレーンゲームに加えキッズカードゲームも多数稼動しており、たい焼きやポップコーンなどを販売するカフェスペースも併設している。

3階はレースゲームのほか、大型ミラーやドレッサーを設置した地域最大級を標榜するシールプリント機コーナーなどがあり、地下1階にはビデオ、音楽、カードゲームがズラリと並ぶ。

2階のシールプリント機コーナーには、無料で利用できるドレッサーも用意されている
2階のシールプリント機コーナーには、無料で利用できるドレッサーも用意されている

以前に拙稿「5年連続で市場拡大もビデオゲームは人気低迷 アーケードゲーム市場の実態は」などでも述べたように、近年は業界全体のオペレーション(店舗)売上高のうち、約6割をプライズ(景品)ゲームが占めている。今では1軒だけで数百台ものクレーンゲームを稼働させている店舗は、もはや珍しいものではなくなった。

「GiGO総本店」も、その光景を見ればほとんどの人が「どこにでもある、今どきのゲーセンだよね」との印象を受けるかもしれない。だが、実は筆者が同店で最も注目したのが、地下1階のビデオゲームを中心としたコーナーおよびオペレーションである。

地下1階の音楽ゲームコーナー
地下1階の音楽ゲームコーナー

「eスポーツの拠点」として機能するかにも注目

業界全体で絶好調のプライズゲームとは対照的に、ビデオゲームはずっと以前からオペレーション売上も設置台数も全国的に減少し続けている。

そんなご時世にあって、同店には「beatmania IIDX 30 RESIDENT」をはじめ「SOUND VOLTEX EXCEED GEAR」「DanceDanceRevolution 20th anniversary model」「maimai でらっくす BUDDiES」「CHUNITHM SUN PLUS」など各種音楽ゲームのほか「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト 」などのビデオゲームもズラリと揃えている。

これほどまでに多くの音楽ゲームをまとめて、しかもタイトルによっては10台以上をいっぺんに稼働させる店は、筆者は過去に見た記憶がない。同店の音楽ゲーム設置台数は、おそらく現時点で国内最大級ではないかと思われる(※上記のほかにも、3階には「太鼓の達人」が11台設置されている)。

なぜ、同店はビデオや音楽、カードゲームを、とりわけコナミ製の音楽ゲームを大量に導入したのか? その答えは、GENDA GiGO Entertainmentはコナミが主催するeスポーツ大会「BEMANI PRO LEAGUE」に、以前から「チームGiGO」の名前で参戦しているからである。

ズラリと並んだ「beatmania IIDX 30 RESIDENT」のLIGHTNING MODEL筐体(※同店では全12台が稼働中)
ズラリと並んだ「beatmania IIDX 30 RESIDENT」のLIGHTNING MODEL筐体(※同店では全12台が稼働中)

地下フロアの一角には「BEMANI PRO LEAGUE」の動画を常時流し続け、イベントステージが用意できるスペースも設けられており、同店は「チームGiGO」の関東の拠点になることを目指すという。

では、同店では今後「BEMANI PRO LEAGUE」を通じて、どのようにしてeスポーツを利用したオペレーションを展開する予定なのか?

20日に行われた記者会見で筆者が質問したところ、同社の代表取締役社長である二宮一浩氏から「定期的に他チームの方々をご招待して交流戦を実施するなど、音楽ゲームファンの皆さんにお楽しみいただけるような企画を実施していたきたいと思います」とのコメントをいただいた。

地下1階のスペースでは「BEMANI PRO LEAGUE」に参戦する「チームGiGO」のアーカイブ動画を流していた
地下1階のスペースでは「BEMANI PRO LEAGUE」に参戦する「チームGiGO」のアーカイブ動画を流していた

同店では音楽ゲームに限らず、ほとんどのビデオゲームにネット配信設備が用意されているのも注目ポイントだ。スタッフによると、ユーザー自身で用意した配信用アカウントで備え付けのPCにログインすれば、誰でも無料で利用できるそうだ(※ただし、ネットでの事前予約が必要)。

ゲームの実況、配信設備があるゲームセンターは多々あるが、これだけの数の機材がそろう例は極めて珍しく、ネット界隈でも店舗を盛り上げようとする同店の強い意欲がうかがえた。店内から気軽に配信できる環境を用意した結果、もしかしたら現行の「チームGiGO」所属のプロゲーマー以外にも、新たな人気ストリーマーが同店から誕生するかもしれない。

無料で利用できる配信機材を完備した「SOUND VOLTEX EXCEED GEAR」の筐体
無料で利用できる配信機材を完備した「SOUND VOLTEX EXCEED GEAR」の筐体

誤解を恐れずに言えば、以前からトレンドになっているeスポーツを、風営法や景表法など法規上の問題があるとはいえ、アーケードゲーム業界ではまったくと言っていいほど取り込めていないのが現状だ。

「BEMANI PRO LEAGUE」が開幕して久しいが、いまだに参戦するオペレーター各社の店に行っても、自社のチームにどんなプロゲーマーがいて、どんな大会に参戦しているのか、その成績はどうなっているのか、何も情報が入ってこないことが非常に多い。

ほかのeスポーツ対象タイトルも同様で、同じタイトルでもPCや家庭用での盛り上がりとは対照的に、アーケード版はゲームセンターにただ「置いてあるだけ」にしか見えないものばかり。先のコロナ禍で大打撃を受けたはずなのに、業界全体を挙げての危機感が全然伝わってこないのだ。

二宮社長によると、同店は「誰もが主人公になれる『舞台』がコンセプト」だという。はたして「総本山」を標榜する同店が、eスポーツのオペレーションでもその看板にふさわしい、新たなムーブメントを起こすことができるのか。今後の動向には大いに注目したい。

オープンセレモニーのステージ
オープンセレモニーのステージ

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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