銀行預金金利100倍だと喜んでいる場合じゃない 今の銀行は実質マイナス預金ですよ
(↑YouTubeでの本記事解説動画です)
メガバンク、定期預金金利を100倍に引き上げ
ここしばらく、「銀行が金利を100倍引き上げた!」というようなニュースが出ています。
2023/11/3 テレ朝ニュース 三井住友銀行も…10年物の定期預金「金利100倍」に引き上げへ
2023/11/2 NHKサクサク経済Q&A 定期預金金利が100倍に!金利がある世界は本格的に到来するか?
(こちら、分かりやすい解説として良記事だと思いますので読んでみてください)
簡単にいえば、10年満期の定期預金の金利が「年0.002%」から「年0.2%」に引き上げられたことを「100倍!」と紹介しているわけです。
まあ、100倍に変化したとなれば、驚きのニュースのようですが、そもそもなんで100倍になるような変化が起きたのでしょうか。
銀行預金金利の大原則がようやく復活へ
銀行にお金を預ける、つまり預金をすると銀行はそのお金を使って法人への融資などいろんな事業を行います。その見返りとして預金者には利息をつけます。このとき、金利にはいくつかの原則があります。
- 普通預金(いつでもおろせる)より定期預金(予め一定期間の預入期間を定める)のほうが金利が高くなる
- 300万円以上あるいは1000万円以上、のように高額をまとめて預けると金利が高くなる
- 1カ月満期ではなく5年、10年のように長期で預けると金利が高くなる
ところが、マイナス金利政策がスタートして以降、この大原則が崩れていました。銀行の金利表をみると普通預金も1000万円預けた10年定期預金も、全部が「0.001%」のようになってしまったのです。
今回、長期の定期預金預け入れについては金利を引き上げるということで、預金の大原則が少しだけ復活したことになります。とはいえ、300万円未満も以上も同じ「0.2%」となっており、預け入れ金額の違いはまだありません。
(執筆時点の情報ですので、閲覧時点では変化している可能性があります。最新の金利は下記でご確認ください。)
※最新の金利表はこちら
しかしまだ落ち着け! 喜ぶのは金利が年2.5%を超えてから
さて、このニュースをみて、「100倍の金利! 100倍なら乗り換えようか!」と思うかもしれませんが早計です。
まず、ネット専業バンクなどはこれ以上の金利提示をしています。
SBI新生銀行は5年定期預金(パワーダイレクト円定期預金。30万円以上)について、年0.35%を提示しています。175倍まで差がでてきました。
オリックス銀行は300万円以上、7年満期の定期預金(スーパー定期300)について年0.45%を提示しています。なんと225倍の差です。
これらは本コラム執筆時点(2023/11/9)のものですが、あなたが本記事を読んでいる段階では、高金利を設定する銀行が出ているかもしれません。
なお、2行を始めたとしたネットバンクは普通預金の金利も相対的に高い設定をしていることも多く、そもそものベースで違いが出ていることも見逃せません。100倍の前提そのものが違っていることもあるわけです。
(一方で、金利はまだ上げていないネットバンクもあるので確認が必要)
さて、ネットバンクが225倍であったとしても、実はまだまだ「低い金利」であることには変わりがありません。
ひとつの目安としては「年2.5%」を超えてこないと、今の銀行預金金利は足りないと思います。
この目安「2.5%」とはなんでしょうか。
今はまだ実質マイナスの定期預金である
メガバンクの金利見直しが100倍になったとしても、ネットバンクが200倍以上だったとしても、そもそもこの程度の金利は「実質マイナス」状態であることを意識するべきです。
2022年の消費者物価指数はプラス2.5%でした。電気代やガス代、食パンや牛乳に冷凍食品などいろんなところで値上げが続いています。
モノの値段はあちこちで上昇していますから、銀行預金金利はこれと同じくらいの利息をつけてくれなかったとしたら、預けていても実質マイナスということです。
銀行預金と言えば「元本割れしない」ことがメリットだと言われます。確かに元本割れしていないわけですが、実質的には元本割れなのが、今の金利状況です。
銀行預金は、理想的には「物価上昇率と同じかあるいはもうちょっと高め」を設定してほしい金融商品です。その点では0.2%でも0.4%でも、まだまだ低いままなのです。
なお、こうした低金利情勢は、日銀の金融政策(マイナス金利政策)が継続されている限り、大幅な見直しが期待できない状況にあります。そして、政策金利が動いたとしても、「物価上昇率+アルファ」となるかは微妙だと私は予想しています。
だとすれば、もうひとつの選択肢として「投資」を考える必要があります。投資信託などで株式市場で運用をすれば、こちらは原則としては物価上昇率や預金金利を上回るリターンが期待できるからです(もちろん、短期的には下回る可能性もある)。
銀行預金が0.2%で慌てて預け替えをするくらいなら、NISAやiDeCoを用いて、資産運用にお金の一部を振り向けることも検討してみるべきでしょう。
40年前は高利回りで良かったはウソ 「物価上昇率」と「預金金利」を比べるのが正解
SNSではよく、1970~80年代の高金利を示して「当時は良かった」のように言いますが、実はこれも間違っています。年5~7%のような高金利が当時設定されていた背景には、同水準の物価上昇があったということがあるからです。
実は、どんなに高い金利が提示されていたとしても、同時期に物価上昇が同じくらいあれば、それは「プラスマイナスゼロ」で消えていってしまったのです。
私たちは単純に「金利が高いかどうか」をチェックするのではなく、
「実質マイナスか(物価上昇率>預金金利)」
「実質プラマイゼロか(物価上昇率≒預金金利)」
「実質プラスか(物価上昇率<預金金利)」
で見極める必要があります。
「物価上昇率」と「預金金利」を比べる感覚は、この20年以上、私たちにはなかったものです。その意味でもこれから学び直していく必要があるおカネの知識です。
とにかく深刻なのは「実質マイナス」の状況が何年も続くこと。「0.002%が100倍になって、なんと年0.2%!」で喜んでいる場合ではないのです。
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