死とは何?森山未來がダンスで可視化する「Dance of Death(仮称)…答えなき実験【神戸市】
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/top_1647667529358.jpeg?exp=10800)
「デザイン都市・神戸」の拠点施設である、デザインクリエイティブセンター神戸「KIITO(キイト)」。ここで、あらゆるクリエイティブな取り組みが行われているのをご存知でしょうか。先日、ちょっと面白いイベントがあったのでご紹介いたします。
「Dance of Deth (仮称)」は、神戸出身の俳優・ダンサーの森山未來、認知神経科学者の中野信子らが参加する実験的なプロジェクトで「生と死」がテーマになっていました。ここではそれぞれの視点での対話や実験をしながら、表現の在り方を探っていきます。
(このプロジェクト創作のため、KIITOで10日間をかけた滞在制作が行われていて、最終日にその発表の場としてこのショーイングが行われました。)
![写真提供:デザイン・クリエイティブセンター神戸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/internal_1646127722062.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
薄暗く照らされた体育館のような広い空間。その一部が、床に描かれた四角い線によって区切られています。床にあぐらをかき、パソコンを見ながらリラックスした状態の森山さんがその中央にいて、私たちは少し離れてその曖昧な境界線の周りを取り囲んでいました。
暗い中、サウンドアーティスト・佐久間海土さんによるアート作品、「Liquid Mirror」と呼ばれる一見鏡のようなスピーカーから鳴り響く心臓音。
森山さんの頭にはヘアバンドが固定され、背中辺りからはコードが長く伸び出ていて、まさに人体実験のようなものを想起させます。どうやら今からダンスをしながら脳波を測定するようです。
![写真提供:デザイン・クリエイティブセンター神戸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/internal_1647667996286.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
何もない四角形のスペースの中に、一つだけ大きなモニターが置かれていました。森山さんが不意に立ち上がると、モニターに女性の顔が大きく映し出されました。森山さんがゆっくりと踊り始め、時折モニターの女性と少しの会話を交わします。
モニターの中から淡々と話し続けるのは、認知神経科学者の中野さん。彼女から発せられる言葉が、ゆっくりと身体を動かし続ける森山さんの脳波を刺激していきます。
シータ波は紫色、デルタ波は赤色、アルファー波は青色…そんな色々の線が絡み合いながら上下している様子が、後ろの壁に大きく映し出されています。その中で、ガンマ波は「私という枠を超えて、世界と繋がっている時に出てくる」のだそう。
![写真提供:デザイン・クリエイティブセンター神戸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/internal_1646129241896.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
脳にセロトニンが増えると安心感が増え、オキシトシンは愛情ホルモン、愛の誕生に関わっていると中野さんは話します。脳はずっと進化してきていて、人は人と繋がることによって生き延びてきたのだとか。だから「存在を忘れられる」ということが死の恐怖に繋がるのだと、モニターの画面を通して語ります。
逆に、死んだとしても思い出され続けられているうちは、生きているということでもあるのだとも言いいます。いないのか、いるのか。その曖昧さはもはや身体という実体を伴わない魂レベルの感覚ですが、ここでは言葉を蓄積して体でその世界を表現していきます。
![写真提供:デザイン・クリエイティブセンター神戸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/internal_1647667712262.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
抽象的な「死」と向き合った言葉が続く中、淡々と踊り続ける森山さん。さっきから身体を動かすことを一向に止めません。壁に映る森山さんの脳波の絡まりは、いろんな色がバランス良く混ざっていて綺麗ですが、時折頭で考えている時に脳波は赤一色に変化します。
もしこの瞬間に森山さんの中で「死に対する答え」のようなものが見えた時、ガンマ波の一色に染まった壁の前でどんなダンスが繰り広げられるのでしょうか。そんな奇跡的な瞬間が来るのをどこかで期待しつつも、答えなどない世界を目前にただ見つめることしかできません。
![写真提供:デザイン・クリエイティブセンター神戸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/internal_1647667929175.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
心と身体の繋がりが可視化されているこの「Dance of Death (仮称)」。ダンスを見ているようであり、言葉の朗読を聞いているようであり、更に実験でもあるようなこのパフォーマンス。「死」という深いテーマをイメージしながら、どこまでも答えの出ない心の揺らぎを体感していきます。
死とは?生きるとは?問いかけながらの未知なるダンスは続き、私たちは目の前で展開される世界にとろりと浸かったまま、ひとつの同じ空間で溶けるように彷徨い続けていました。
![写真提供:デザイン・クリエイティブセンター神戸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/hinatayoshioka/article/00191055/internal_1647667779480.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
KIITOでは、独創的で面白いイベントやワークショップが数多く行われてきています。この日のイベントもそうでしたがとにかく個性的で参加型。誰でも無料で参加できるようなものもあり、とにかく見逃せませんよ。
感覚を大きく刺激するような体験は、どこか冒険や旅にも似ています。自分の内側から起こる変化を促してくれるKIITOのイベント。ぜひイベントスケジュールをチェックして遊びに行ってみてはいかがでしょうか。
KIITO HP (外部リンク)
住所:神戸市中央区小野浜町1-4 デザイン・クリエイティブセンター神戸
TEL:078-332-7102
アーティストサポートプログラム エラ・ホチルド×中野信子×森山未來『Dance of Death(仮称)』 (外部リンク)
ショーイング(ワーク・イン・プログレス)ダイジェストムービーURL (外部リンク)
森山未來HP (外部リンク)
中野信子FB (外部リンク)
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KIITOにある可愛いカフェ「KIITO CAFE」 (外部リンク)