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レノファ流貫き、4得点快勝! 吉濱は3戦連続ゴール/レノファ山口

上田真之介ライター/エディター
笑顔で声援に応える菊池と吉濱=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2レノファ山口FCは6月22日、維新みらいふスタジアム(山口市)でFC岐阜と対戦し、吉濱遼平の3試合連続ゴールなどで4-0で快勝した。勝ち点3を積み上げ、17位に浮上している。

明治安田生命J2リーグ第19節◇山口4-0岐阜【得点者】山口=吉濱遼平(前半8分)、高井和馬(同32分)、山下敬大(後半7分)、佐々木匠(同27分)【入場者数】4845人【会場】維新みらいふスタジアム

岐阜は新体制。システムは変えず

 試合前の段階で19位のレノファと22位の岐阜。下位直接対決ながら、今節のJ2リーグ戦の中では注目度の高い試合になった。岐阜が監督交代に踏み切り、讃岐で長く指揮を執ってきた北野誠監督が新指揮官に就任したからだ。パスサッカーを主体としてきた大木武前監督のスタイルを、1週間でどのように変化させたのか、采配に注目が集まった。

レノファの先発布陣
レノファの先発布陣

 レノファにとっては相手にどれほどの変化が起きるのかが読めず、練習中から「相手というよりも自分たちのサッカーを大事にしなければいけない」(三幸秀稔)と積み上げてきているサッカーの質に集中。試合では前節からメンバー2人を変更したが、3-4-3のフォーメーションは変えなかった。対する岐阜は準備期間が短かったことを受け、大木前監督が採用した3-5-2を維持。メンバーだけは4人を入れ替え、川西翔太が初先発した。

レノファは佐々木と吉濱がスタメン復帰
レノファは佐々木と吉濱がスタメン復帰

 試合を通してゲームを優位に運んだのはレノファ。三幸と4試合ぶりに先発した佐々木匠のダブルボランチを攻撃の糸口に、左ウイングバックの瀬川和樹が高い位置でボールを受け、クロスから何度もチャンスを作っていく。

 佐々木の起用は「相手の監督が代わりどういう形で来るかは分からなかったが、三幸のところを抑えにくるという予測があったので、三幸をおとりに、もう一つ中盤でパスの出どころを作りたい」(霜田正浩監督)という狙いからで、守備にはリスクを背負うことにはなるが、バランサーの佐藤健太郎ではなく、個での打開もできる攻撃的な顔ぶれを選択。岐阜もダブルボランチに対しては厳しくアプローチしていたが、クオリティーでレノファが上回った。

こぼれ球を押し込む吉濱
こぼれ球を押し込む吉濱

 序盤から前線にボールを送っていたレノファは前半8分、前貴之の縦パスに高木大輔が反応して右サイドの深いエリアへと突破。グラウンダーのクロスにニアサイドで山下敬大が合わせると、GKビクトルがセーブしたこぼれ球を吉濱遼平が押し込んで、早い時間帯での先制に成功した。

 吉濱は直近2試合で途中出場からゴールを挙げ、いずれも0-1だった試合を同点に持ち込んでいた。その活躍が認められた形で今節はスタメンをつかみ、10分もたたないうちに先制点。3試合連続のゴールとなった場面を、「信じて走った。受けないで戦うとミーティングでも話があったので、出鼻をくじけて良かった」と振り返った。

アクシデントを乗り越え、追加点

 しかし前半15分、1-0でリードしていたレノファだったが、左サイドを突くスプリントの際にシャドーの池上丈二が負傷。立ち上がりはしたものの、プレーの続行を断念した。池上は佐々木同様にボールを受けられて、ドリブルもできるプレーヤー。相手のバックラインとボランチの間でボールを引き出し、攻撃を再展開できるキーマンを失うことになった。

 もちろんアクシデント一つでゲームプランの全てが崩れたわけではなく、ここで投入された高井和馬が奮起した。決定機を逸するなど課題を抱え4試合ぶりに先発を外されていたが、霜田監督は「こういうこと(アクシデントによる交代出場)もサッカー選手にとって一つのチャンスになる。結果を出せるかどうかが非常に大事だ。思い切ってやりなさい」と声を掛け、高井も「しっかり結果を残し、チームに貢献するということだけを考えて入った」と急な出場にも気負わずにピッチに入った。

途中出場で結果を残した高井
途中出場で結果を残した高井

 訪れた最初の決定機が同32分だった。左サイドを瀬川が突破してアーリークロスを供給。ニアサイドで山下が潰れてチャンスを広げると、ファーサイドに走り込んだ高井が右足を振った。「テンションが上がって外してしまうことがあった。今日はテンションを抑えてしっかり落ち着いて」(高井)放ったシュートは浅い角度ながらゴールイン。最初の好機を逃さず、待望の追加点をもたらした。高井にとっては第8節長崎戦以来のゴールで、リードは2点に拡大した。

 2-0で迎えたハーフタイムで、霜田監督が「ビルドアップでのミスをなくそう」と指示し、岐阜の北野監督は「スタートをゆるく入らない。チャンスはある。確実に決めていこう」と背中を押す。

 後半の立ち上がりは、実際に気持ちが入った岐阜がゴール前までボールを進める。前監督時代からのパスワークを生かし、市丸瑞希を中心とする中盤の底から川西や風間宏矢を経て攻撃を展開。セットプレーのチャンスも得て、レノファの陣内でプレーしていく。

ゴールを決めて右手を突き出す山下
ゴールを決めて右手を突き出す山下

 それでもレノファも球際に厳しく寄せてゴールには寄せ付けず、再びリズムを取り戻すと後半7分に3点目のゴールを呼び込んだ。敵陣中央から高井がパスを出し、センターバックの右で出場している前が間延びしたスペースを走ってボールを回収。そのまま左足で強烈なミドルシュートを放つと、GKがはじいたこぼれ球に山下が詰めてゴールネットを揺らした。ゴール後にサポーターに向かって雄たけびを上げた山下も、これが3月以来の得点。「やっぱりホームでは絶対に負けてはいけない。勝たなければいけないという使命がある」と熱が入った。

 レノファの勢いは止まらず、同27分、ハーフウエー付近で相手ボールを佐々木がカットして右サイドに流すと、この試合でも上下動が光った高木がオーバーラップしてボールに追いつき、すぐにクロス。これに再び佐々木が合わせて右足でゴールに送り込んだ。「大輔くんがいい動きをしてくれていた。そこでのパス・アンド・ゴーで入れた。一連の動きは良かった」(佐々木)。三幸との連係やオフ・ザ・ボールでのランニングなどにも意識を向けていた佐々木だったが、決定的な仕事にも関わり、ゴール後には右手で力強くガッツポーズを作った。

 4-0でゲームを閉じ、レノファは3試合ぶりに勝利。6月に入ってからは無敗で17位に順位を上げた。

レノファらしさを出した90分

佐々木。得点後には万感の表情が浮かんだ
佐々木。得点後には万感の表情が浮かんだ

 相手がどのような策で臨んでくるか分からない試合で、レノファは自分たちのサッカーに集中。得意とする攻撃パターンを見せたほか、霜田監督の采配がぴたりとはまって先発起用した吉濱、佐々木らがゴールを挙げた。チームの総得点27はリーグ2位タイ(暫定)。3バックを採用することで得点力低下が懸念されたが、4試合続けて得点を挙げ、今節に至ってはシュート22本で4点を奪取。得点力の健在ぶりを示す結果になった。

 レノファはダブルボランチという点は前節と変わらないが、この試合では三幸が重心を下げて全体に目を配る場面が多く、逆に佐々木がストレスをかわして高い位置にも顔を出した。もし岐阜が4-4-2などの形で試合に入っていたならば、いずれの動きも上下から挟み込まれていたかもしれないが、岐阜が前節と同じシステムで臨んだのはレノファにとってはポジティブな要素だったと言えるだろう。

霜田監督は「選手たちが頑張ってくれた」とたたえた
霜田監督は「選手たちが頑張ってくれた」とたたえた

 もちろん仮に岐阜がシステム変更したとしても、レノファは佐藤や田中パウロ淳一などのオプションも持っているため対応はできたはずだ。ただ、三幸に与える役割を少し変え、「三幸をおとり」(霜田監督)に使いながら佐々木を縦に走らせ、シャドーの2選手とともに高い位置でボールを保持させたのはやはり圧巻の采配。シャドーや佐々木からウイングバックにボールが出たり、これまでよりも少しだけ時間を掛けることで前のインナーラップが増えたりと攻撃に厚みが出て、ゲームの質的な支配につながった。

 もう一点付け加えるなら、試合序盤から終盤まで一貫して球際の厳しさが衰えなかったのも収穫。三幸は「4-0になったが、前線の選手もボールを追って最後の最後まで走った。それは次の試合につながると思う」と胸を張った。良い守備と良い攻撃が調和した90分間。久しぶりにホームで見せつけた、レノファスタイルの熱演だった。

ホームでの勝利は4月14日の第9節鹿児島戦以来2カ月ぶり
ホームでの勝利は4月14日の第9節鹿児島戦以来2カ月ぶり

 レノファは次戦は6月30日にレベルファイブスタジアム(福岡市)でアビスパ福岡と対戦する。その後は天皇杯も入ってくる連戦となり、7月3日に天皇杯2回戦でFC琉球と、同7日にリーグ戦でFC町田ゼルビアと、いずれも維新みらいふスタジアムで戦う。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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