ホワイトカラーの時短のためには「作業効率」よりも「コミュニケーション効率」をアップさせることが大事
政府が働き方改革を強く推し進める方針を出してから、多くの企業が時短(労働時間短縮の促進)を強く意識するようになりました。「ブラック企業」などという言葉が市民権を得、世間でも労務管理に対する意識が高まっています。残業や時間外労働をどう減らすかに頭を悩ませている人は多いことでしょう。
しかし多くの人は「時短」と聞くと、解決策として真っ先に思いつくのが「作業効率」のアップです。しかし現場に入って目標を絶対達成させるコンサルティングをする私からすると、重要なのは「コミュニケーション効率」です。「コミュニケーション効率」が低いと、どんなに会議をしても、メールのやり取りしをしても、組織の課題解決のための方策が前に進みません。いわゆる「話が前に進まない」という状態に陥るのです。
この悩みを解決するには「話を噛み合わせる」技術を身に付けることです。
「話が噛み合う」ということは、「歯車が噛み合う」ことと同じ。どちらも動力を伝えて前に進めることが目的です。
歯車が噛み合っていない状態を「空回り」と言います。つまり、組織内コミュニケーションが空回りするケースを減らすことで「コミュニケーション効率」をアップさせます。
たとえば、会社の中で、専務、常務、部長、課長3人、担当者4人、アシスタント3人が、あるテーマについて話し合いを繰り返しているとします。専務の意見と部長の意見が合わない。課長3人がそれぞれ担当者と会議を繰り返し、アシスタントに資料を作らせたりして、あーでもない、こーでもないと議論を繰り返しているとします。
それぞれ皆さんまじめに打合せをしたり、メールを送ったり、資料を作ったりしています。それぞれの歯車は回っています。ところが、歯車が多すぎるために、噛み合う歯車と、噛み合わない歯車があるのです。こうなると、組織全体では「空回り」の状態が続いていきます。社長が「あの件はどうなったんだ?」と経営幹部や担当者に聞いても、話が前に進んでいません。それぞれの歯車は噛み合っていても、どこかで噛み合っていないので、3ヶ月経っても、4ヶ月経っても、「空回り」の状態です。
私のような外部のコンサルタントは、それを客観的に眺めますので、
「本件は、常務と課長2人で話し合って決められる話ではないですか」
と、指摘するだけで、一気に動力が伝わり、話が前に進む、ということがあります。社長からすると、「どうして最初からそうしないんだ!」と叱りつけたくなるのですが、これがけっこう難しいのです。たとえ現場の担当者が、
「こんなこと、上司が話し合えば簡単に決まることじゃないか」
とわかっていても、なかなか進言しづらいものです。
これは企業だけで起こることだけではありません。学校のある生徒の問題に対して、いろいろな保護者がそれぞれに話し合いを繰り返し、学校側や、地域社会の重鎮、教育委員会の人まで出てきて、あーでもない、こーでもない、と議論することがあります。結局は、その生徒の担任と、その保護者、そして校長先生がひとつのテーブルについて話し合いをすることで、すぐに解決する場合もあります。
「あの議論はいったい、何だったんだ?」
と思えるような事象は、私たちの周りでたくさん起こっています。
一番大きな問題は、たとえ組織全体で「空回り」していても、それぞれの歯車は噛み合っているように見えるため、どこに問題があり、誰に責任があるか、見えづらいことです。
私は企業のコンサルティングをするとき、客観的に全体を捉えるため、どこで話が噛み合っていないのかを特定することができます。これは外部の人間だからこそできることです。しかし正直なところ、私の組織で、それを見つけることはとても困難です。私自身がひとつの歯車ですから、全体を俯瞰することが難しいのです。このように組織全体で「話を噛み合わせる」ためには、組織全体を俯瞰できる【俯瞰力】を持ち合わせている人物が不可欠なのです。
「コミュニケーション効率」を意識することで、大幅な時短は実現します。特に昨今は、メールやSNS、LINEなど、話が噛み合わなくなる原因のコミュニケーション媒体が増えています。「コミュニケーション効率」を落とす要素が身の回りにたくさんありますので、気を付けたいですね。