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天才・藤井聡太挑戦者(19)史上最年少三冠まであと1勝! 叡王戦第3局で豊島将之叡王(31)に快勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月9日。愛知県名古屋市・か茂免において第6期叡王戦五番勝負第3局▲藤井聡太二冠(19歳)-△豊島将之叡王(31歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は17時39分に終局。結果は121手で藤井挑戦者の勝ちとなりました。

 五番勝負はこれで藤井挑戦者の2勝1敗。あと1勝で叡王位獲得、および史上最年少19歳での三冠同時保持となります。

 第4局は8月22日、愛知県名古屋市・名古屋東急ホテルでおこなわれます。

 両者の対戦成績はこれで豊島8勝、藤井5勝となりました。

 藤井二冠の今年度成績は19勝4敗(勝率0.826)となりました。

藤井挑戦者、またも先手角換わりで快勝

 先手の藤井挑戦者は王位戦第3局、叡王戦第1局に続いて角換わりを採用しました。

 藤井挑戦者の動向は別として、将棋界の最前線では、先手角換わりは多く指されるようになったのでしょうか。渡辺明名人に尋ねてみました。

渡辺「いや、全体としては流行ってはいないと思いますね。相居飛車の三大戦法(相掛かり、矢倉、角換わり)は分散傾向かと。豊島ー藤井戦がなぜ角換わりのみのシリーズになってるのかは、私には分かりません(笑)」

 角換わりの中でも本局は腰掛銀。藤井挑戦者が桂を跳ねて動いたのに対して、豊島叡王も反撃。午前中からハイペースで71手まで進みました。

 13時、対局再開。72手目、豊島竜王は当たりになっていた銀を引きました。

 藤井挑戦者は69手目に打った角を基軸に上部を手厚くしていきます。持ち駒の角を打って自陣で使うと、逆に攻撃の対象になってしまうこともあります。しかし藤井挑戦者はいつも、実にうまく角を使っていきます。

 豊島叡王もカウンターで自陣に角を打ち、藤井陣の足元の薄味をついて攻めていきます。藤井玉のすぐそばに角を成り込んで馬を作り、取った香で包囲網を作ります。

 藤井玉は身動きが取れない形。観戦者の目には、なにか受けたいようにも映ります。

 しかし89手目、藤井挑戦者は自玉は大丈夫と見て、桂を打って攻め合いに出ます。きわどく踏み込んで、形勢は藤井挑戦者がリードを奪いました。

 藤井挑戦者が席をはずしている間、豊島叡王は後ろ頭に手をやっていました。考えること37分。豊島叡王は玉を上がって受けます。持ち時間4時間のうち、残りは藤井57分、豊島39分。時間も逆転しました。

 観戦者にはどうしても藤井玉は怖く見えてしまうところ、藤井挑戦者は臆せずビシビシと指し進めます。111手目。飛の上に香を重ね打ち、二段ロケットの形をつくって、勝勢を確かなものとしました。

 120手目。豊島叡王は持ち時間を使い切って、あとは一分将棋となりました。対して25分を残している藤井挑戦者。すぐに銀を出て豊島玉に迫り、きれいに決めました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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