人新世と日本農業~考えたい現代の農業問題
人新世という言葉と気候変動の記憶
2013年9月16日、大型の台風が上陸し、日本列島を縦断した。同日の朝、気象庁は京都、滋賀、福井の3府県を対象に運用開始後初めて大雨特別警報を発表した。河川近くにあった私の田畑に濁流が流れ込み甚大な被害を与えた。復旧に何十人もの手助けを呼びなんとか農業基盤である農地や水路を復旧。しかしその翌年にも100年に一度と言われた大雨が続き、農家はこの異常気象とともに生きざるを得ないことを体感した。農業経営への影響も大きく、気候変動の影響が残された農家の肩に負担になることも実感した。
人新世と日本農業を考えたときに私の脳裏にまず浮かぶのは、その大雨の中で被害を受けた田畑の前で立ち尽くす己の姿である。ちょうど同じ頃に父を見送ったこともあり当時は感慨にふける余裕はほとんどなかったが、人新世という考えを知った時に私の記憶の中に深く刻まれているその経験が蘇ってきたのである。
地球は、人類の近現代の活動や人口増加の影響により、1万1700年前に始まった完新世から人新世(「ひとしんせい」、または「じんしんせい」と読まれる)に移行したと言われる。その中で人新世の視点から改めて日本農業論そして未来の農業と食料を考える必要があるのではないか、という問いが本連載に取り組む根本にある。
現代の日本農業を取り巻く課題
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