オーバーヒートするアラスカ 北極圏で史上最高気温観測
「チリー(寒い)」、「フロスト(霜)」、「フリーズ(凍る)」など、名前だけから寒さが伝わって来る地名がアメリカには多々ありますが、ここはその上を行っています。アラスカにある「デッドホース(死んだ馬)」は、北極海に面し、地球の最果てとも言われるくらい寒い土地です。
観測史上最高気温記録
この、動物が生きていくことさえ拒む極寒の地で、先週かつてない記録が作られました。それは、寒さの記録ではなく、暑さの記録です。13日(水曜)気温が29.4度まで上昇し、北極海周辺における観測史上最高気温をマークしました。この時期の平均気温を15度以上も上回ったことになります。
デッドホースのみならず、アラスカの各地では猛暑となり、諸所で日最高気温を記録しました。例えば、フェアバンクスでは13日(水曜)、14日(木曜)共に31度まであがり、その日のロサンゼルスやニューヨークよりも暖かかくなりました。
異常高温の続くアラスカ
アラスカの異常高温は今に始まったことではなく、この前の冬も春も史上最高気温を観測しています。
気温上昇は、ここ数十年間にわたっての傾向で、過去60年間で年間平均気温が約2℃も高くなっています。これは、世界平均の2倍で、特に冬の気温変化が顕著です。
温暖化で得する面
温暖化になると、得する国と損する国があるのですが、一般的に寒い地域は恩恵を受けることが多いとも言われています。
なぜかというと、北極海の氷が溶け、航路が開けて貿易が盛んになったり、石油開発がしやすくなったり、観光客が増えたり、農業のできる期間が長くなったりするからです。
そういった意味では、アラスカはまさに温暖化の勝ち組と言えましょう。
温暖化で損する面
しかし、実際のところ、いい面だけではありません。ゆっくり暖かくなるならまだしも、その変化が急だからです。
アラスカの大地はその約80%が永久凍土ですが、それが溶け始めると、地盤沈下が起き、道路や建物などが壊れる危険が高まります。さらに冬季にできる氷の道路なども使用できなくなり、交通網が遮断されます。加えて、山火事のリスクも高まるのです。
また、生態系にも大きな変化が起こります。海氷を頼りに生活するシロクマやセイウチの生息が危ぶまれたり、南から外来種が侵入する恐れもあります。
それだけではありません。気温が上がることで低木が育ち、代わりにコケ類が減少することから、それらを餌にするカリブー(右:写真)などに影響を与え、それを食べるクマや狼の生態系にも変化が出るといいます。
こうしたリスクを抱えるアラスカですが、今世紀半ばまでには、さらに1~2℃も気温が上がるとも試算されているのです。
- 参考文献