バスケ王国アメリカの真価が問われる準々決勝・W杯王者スペイン戦のポイントは?
2勝1敗でグループリーグを終了
いよいよ強豪国の潰し合いが始まる。
8月1日、東京五輪の男子バスケットボールは予選リーグが終わり、3日に行われる準々決勝の組み合わせが決まった。五輪4連覇を狙うアメリカは2019年のワールドカップ王者スペインと対戦。ベスト8の中でもトップの好カードであり、ハイレベルの戦いとなることは必至だ。
初戦でフランスに苦杯を喫したあと、イラン戦、チェコ戦でのアメリカのプレーは今後に期待を抱かさせるものだった。
7月31日のチェコ戦で第1クォーターを18-25とリードされて終えた際には嫌な予感も漂ったが、ゲーム中盤以降はプレーレベルが確実に向上。第2クォーターに逆転すると、チーム全体で20本の3Pを決めるなどロングジャンパーが好調で、最終的には119-84と大差をつけての圧勝だった。
「ショートが決まって気分は良かった。予期していた通り、毎試合、より良いプレーができている。このチームには今夜、僕がやったことをいつでもできる選手が揃っている。だからこそこのチームはダイナミックなんだ」
ゲーム最多の27得点を挙げたジェイソン・テイタムがNBCのインタビューでそう述べていた通り、アメリカの選手たちも手応えを感じているようである。
28日のイラン戦後にも述べた通り、すべては相手次第。イラン、チェコとの対戦はもともとアメリカの勝利が予測されたカードであり、完勝を大袈裟に捉え過ぎるべきではないのだろう。
それでも、ここでプレーの質が向上していることは好材料に違いない。特に大きいのは、もともと得点源として期待されていたケビン・デュラント、テイタムにエンジンがかかってきたことと、チェコ戦では大差がついた展開でも最後までディフェンスの緊張感が途切れなかったことだ。
アメリカのアイデンティティとは
エースのデュラントはチェコ戦の第2クォーターに8得点、第3クォーターに10得点を挙げ、過去通算336得点のカーメロ・アンソニーを追い抜き、アメリカ代表史上最高のスコアラーとなった。アンソニーが31試合で打ち立てた記録を19試合で塗り替えたのは驚異。今後、対戦相手のレベルが上がる中でも、デュラントの決定力はやはりチーム最大の武器であり続けるはずだ。
ベンチからのスパーク役が期待されたテイタムも、チェコ戦ではベンチ登場で5本の3Pシュートを成功。エキジビションゲームのスペイン戦(FG3/9)、フランス戦(FG3/9)、五輪開幕後のイラン戦(3P 2/7)ではジャンパーの精度の悪さが目についたが、このまま調子を上げれば厄介な存在になることだろう。
「今夜、出だしは遅れたけど、第2クォーターにはディフェンスからスピードアップし、トランジションでイージーに得点するという望んでいたことができたと思う。みんな特別なプレーをしていた。適切な位置からショットを決めていた」
デュラントのそんな言葉が示す通り、チェコ戦でのアメリカはディフェンスも上質だった。ドリュー・ホリデー、ドレイモンド・グリーンを先頭に、身体能力を生かして相手にプレッシャーをかけていくのが守備時の特徴といえる。
「(自分たちのアイデンティティを)まだ見極めている最中だ。ただ、ディフェンスから引き締めていくことが重要になる。僕たちは今大会で最も身体能力に秀でたチーム。それを攻守両面で生かし、相手をストップし、パスを出してプレーを決めていきたい」
実際にアスリート系の選手の数では他国を圧しているだけに、テイタムの意見は単なる身びいきとは思えない。
守備で相手の機先を制し、スペースを作り、イージーバスケットやオープンジャンパーを生み出していることが過去2戦の高得点につながっている。そんな戦い方を確立し始めているとすれば、今後のゲームが余計に楽しみになる。
スペイン戦で現在のアメリカの真価が見えてくる
もちろんこれまでも述べて来た通り、今大会のアメリカは完璧なチームというわけではない。米ウェブサイトのThe Athleticはチーム全体のサイズ不足がゆえ、スイッチ後に小柄な選手が狙われるのがアメリカの弱点だと指摘している。
1日のスロベニア戦では敗れてグループCの2位になったとはいえ、経験に裏打ちされたスペインのスキルとケミストリーはお墨付き。サイズ、技術に秀でたマルク、パウのガソル兄弟をはじめ、ベテラン揃いのチームはアメリカのウィークポイントを上手についてくるかもしれない。上り調子のアメリカの現在の実力が、ここで試されることになるのだろう。
身体能力を生かしたバスケットボールで難関を突破できるのか。2戦目以降に手にした勢いを保ち、スペインをも印象的な強さで下すようなら、金メダルが視界に入ってくる。そういった意味で、準々決勝は現在のアメリカの力を測るリトマス紙的なゲームだといっても良いのだろう。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】