アメリカがイランに54点差の大勝 フランス戦の敗北でバスケ王国は目を覚ましたのか
自信回復の一戦
「僕たちのアジャストメントはもっとシュートを決めることだ。このチームには世界最高のタレントが揃っている。シュートを決めるか、外すかに多くのことが左右される。シュートをもっと効率的にすれば、良い方向に運ぶはずだ」
前日の練習時、リモート会見でケビン・デュラントが残した言葉はシンプルではあったが、真実をついていたのだろう。
7月28日、さいたまスーパーアリーナで行われた東京五輪のバスケットボール男子予選ラウンドで、アメリカは120-66でイランに圧勝。フランスに敗れた25日の初戦ではFG成功率36%、3Pは同31%とオフェンスが不発だったが、この日の3P成功率は49%、特に前半は13/21とよく決まった。
第1クォーターを16-3のランで締め括ったアメリカは、この10分を終えた時点で28-12と圧倒。シュートが好調だっただけでなく、ディフェンスの寄せも鋭く、ターンオーバーのバトルで6-0と引き離したのも大きかった。
もともと力が劣ると目されていたイランは技術、身体能力ともにアメリカに太刀打ちできるレベルではなく、第2クォーターに入っても点差は順調に拡大。前半を60-30でアメリカがリードして終えた時点で、勝負の行方は定まったも同然だった。
リラードが火付け役に
アメリカの中で特に積極性が目立ったのはデイミアン・リラードだった。第1クォーターの最初の6分間に3本の3Pを沈めてチームの方向性を定めると、前半だけで18得点(3P 6/11)。その迷いのないプレーからは、第1戦にはなかった切迫感と、自分がチームを引っ張るという決意が確かに感じられた。
「(フランス戦では)正しいプレーをしようとしすぎて、自分らしくアグレッシブにプレーできていなかった。僕たちは支配し、勝つためにここに来たんだ」
試合後、NBC局のインタビューを受けた際のリラードのそんな言葉からは、吹っ切れたような響きが感じられた。
寄せ集めの印象が強いチームがケミストリーを養成するために、大切なのは無理にパスを回そうとすることではない。まずは自分本来のプレーすること。もともと才能は飛び抜けたものがあるアメリカ選手たちが無理のない形でそれをすれば、自然とスペースは広がり、パスワークもスムーズになる。
チーム内の格的にはデュラントと並んでトップクラスであろうリラードがそういった心持ちで臨んだことが、アメリカ全体にプラスの効用をもたらしたことは想像に難くない。
今後に向けて
もちろんスポーツの内容、結果は対戦相手の質次第で変わるものであり、この日の大勝はイランが格下だったがゆえに可能になったことではある。ディフェンスのプレッシャーもフランスとは雲泥の差。おかげでアメリカはのびのびとプレーし、必然的にシュートの精度も上がった印象があった。
ただ、たとえそうだとしても、手痛い敗戦直後のプレッシャーのかかるゲームで、チーム結成以来最高のプレーが見せられたことの意味はやはり大きい。
まだ負けられない戦いが続くが、間違いなく先に繋がる1勝。次の相手のチェコはトマス・サトランスキーという現役のNBA選手が軸になっており、油断のならないチームではあるが、上昇気配のアメリカがそこでどんなプレーを見せるかがより楽しみになって来た。