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ゲレーロJr.が三冠王の場合、大谷はMVPを受賞できる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブラディミール・ゲレーロJr.(左)と大谷翔平 Aug 10, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月12日を終えた時点で、ブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)は、打率.319、44本塁打、102打点を記録している。

 打率と本塁打は、ア・リーグ1位だ。打率は2位のユリ・グリエル(ヒューストン・アストロズ)に4ポイント(4厘)の差をつけ、ホームランは大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)と並んでいる。打点は3位タイ。1位のホゼ・アブレイユ(シカゴ・ホワイトソックス)とは5打点差だ。ゲレーロJr.は、首位打者、本塁打王、打点王をすべて獲得し、三冠王となってもおかしくない。

 BBWAA(全米野球記者協会)によるMVP選出が始まった1931年以降、ナ・リーグの三冠王は2人いて、ア・リーグは延べ8人を数える。計10人のうち6人はMVPを受賞したが、3人は投票2位。1934年のルー・ゲーリッグは5位だった。その一方で、1950年以降の4人、1956年のミッキー・マントル、1966年のフランク・ロビンソン、1967年のカール・ヤストレムスキ、2012年のミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)は、いずれもMVPに選ばれている。

筆者作成
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 ゲレーロJr.は、出塁率.408とOPS1.018もリーグ1位だ(OPS=出塁率+長打率)。ア・リーグで出塁率.390以上は他に皆無。OPS.980以上もゲレーロJr.以外にいない。通常であれば、MVPは間違いないだろう。ただ、今シーズンのア・リーグには大谷がいる。

 ここまでの大谷は、打率.259、44本塁打、94打点だ。打率は高くないものの、本塁打だけでなく、打点もゲレーロJr.とそれほど変わらない。出塁率.361は11位に位置し、OPS.972はゲレーロJr.に次ぐ。OPS.920以上は2人だけだ。また、ゲレーロJr.の4盗塁(盗塁死1)に対し、大谷は23盗塁(盗塁死9)。三塁打は1本と5本。そして、大谷は先発投手として21試合に登板し、115.1イニングを投げて136三振を奪い(与四球は41)、防御率3.36を記録している。

 前例がないので――ベーブ・ルースが二刀流選手としてプレーした1918~19年は、MVPの前身に当たるアウォードもなかった――比較はできないが、過去に例がないこと自体がMVPに選ばれる理由ではないだろうか。ゲレーロJr.に大差をつけて受賞する可能性も、低くないと思う。

 こういう見方もできる。大谷の打者としての成績は、ゲレーロJr.には及ばないものの、サルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)に勝る。ペレスは、打率.274、42本塁打、105打点だが、出塁率は.315と低く、OPSも.854だ。投手としては、イニングと防御率からすると、116.0イニングで防御率3.26のフランバー・バルデス(アストロズ)や、126.1イニングで防御率3.42のジョン・ミーンズ(ボルティモア・オリオールズ)に近い。その打者1人と投手1人の成績を足して2で割るのではなく、1人で2人分を記録しているのが大谷だ。

 なお、三冠王となった選手がいたシーズンに、そのリーグでMVPを受賞した4人、1933年のカール・ハッベル、1934年のミッキー・カクレイン、1942年のジョー・ゴードン、1947年のジョー・ディマジオは、いずれもリーグ優勝したチームでプレーしていた。この当時、地区制はまだ始まっていない。

 だが、今日のMVP投票において、チームの成績はあまり重要視されていない。例えば、大谷のチームメイトであるマイク・トラウトがMVPを受賞した3シーズンのうち、2014年のエンジェルスは地区優勝を飾ったが、2016年と2019年は負け越して、地区4位に終わっている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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