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激戦区の終盤情勢② 愛知・京都・福井=JX通信社 参院選終盤情勢調査

米重克洋JX通信社 代表取締役
(写真:イメージマート)

安倍晋三元首相のご冥福をお祈りします。本稿は、今月7日から8日にかけて行った終盤情勢調査に基づく記事です。参院選における有権者の投票の判断材料となるよう、予定通り出稿します。

JX通信社では、今月10日投開票の参院選について、独自調査を踏まえて「激戦」と判断した注目選挙区の終盤情勢を探った。情勢分析にあたっては、電話情勢調査の結果に予測モデルを適用して分析した結果に加え、自社アプリNewsDigestを通じた「スマホ出口調査」の中間集計も加味した。

本稿では、愛知選挙区(定数4)、京都選挙区(定数2)、福井選挙区(定数1)の終盤情勢を詳しく紹介する。

当選確率シミュレータ

愛知:維新新人と国民現職が激しい当選圏内争い

愛知選挙区では、自民現職の藤川政人氏と立憲現職の斎藤嘉隆氏が先行している。公明現職の里見隆治氏も議席獲得を窺っている。残る1議席をめぐって、維新新人の広沢一郎氏と国民現職の伊藤孝恵氏が激しく競り合っている。共産新人の須山初美氏がそれに続く。

7月1日から3日にかけて行った前回調査と比べ、広沢氏、伊藤氏、里見氏の支持がやや増えた。6月17日から21日にかけて行った調査も含めて推移を見ると、広沢氏と伊藤氏の支持拡大に比較的勢いがあり、両者の熾烈な議席争いは選挙戦終盤までもつれ込んでいる。

無党派層では、斎藤氏、藤川氏が1割強ずつを、伊藤氏と広沢氏、須山氏が1割ずつを固めている。自民支持層については、藤川氏が6割程度を固めている一方、里見氏、広沢氏がそれぞれ1割弱を取り込んでいる。維新支持層は、広沢氏が約半数を固めるにとどまっており、一部は藤川氏や斎藤氏、里見氏に流れている。

地域別に見ると、伊藤氏は前回調査から7日にかけて西三河で支持を伸ばした。広沢氏は尾張で支持を伸ばしている。職業別では、専業主婦層で藤川氏、斎藤氏、里見氏に伊藤氏と広沢氏が続く。民間企業勤務では藤川氏が圧倒し、斎藤氏と広沢氏が追いかける展開だ。

報道各社の情勢報道では、いずれも藤川氏、斎藤氏が優勢で、里見氏がやや優勢、広沢氏、伊藤氏が当選圏内入りをめぐって横一線で競り合っていることを伝えている。

各社の情勢報道を集約して分析するJX通信社の「当選確率シミュレータ」では、藤川氏と斎藤氏の当選確率は「95%以上」となっている。それに里見氏が90%で続き、広沢氏が57%、伊藤氏が53%で横一線だ。各社の情勢報道を統合した分析では、広沢氏と伊藤氏が選挙期間を通じて接戦を展開していたが、投開票日が近づくにつれて両者の差が縮まった格好だ。

京都:自民現職、立憲現職、維新新人の三つ巴続く

京都選挙区では、自民現職の吉井章氏、立憲現職の福山哲郎氏、維新新人の楠井祐子氏が終盤にかけても三つ巴で互角の争いを続けている。

支持政党別の動向を見ると、特に公明支持層で、特徴的な動きが見られる。前回調査では、公明支持層のうち5割が吉井氏を支持していたが、終盤にかけて楠井氏を支持する割合が高まり、8日時点で半数以上となっている。

無党派層では、前回調査以降、楠井氏と福山氏が伸ばしている。前回調査では、無党派層での楠井氏への支持は1割強にとどまり、福山氏が3割弱、吉井氏が2割弱を集めていた。今回調査(8日時点)では福山氏が4割弱、楠井氏が2割の支持を集めている。

維新支持層でも動きが見られた。前回調査時点では、楠井氏は維新支持層の8割の支持を集めていた。しかし、一部は吉井氏に流出しており、より支持を固めるには至っていない。

地域別では、大票田の京都市では福山氏、吉井氏、楠井氏が横一線。山城地域では福山氏、楠井氏、吉井氏の順となっている。一方、前回調査で楠井氏が優位に立っていた中丹地域や南丹地域では、吉井氏が肉薄している。

職業別では、民間企業勤務で楠井氏と吉井氏が3割弱ずつ、福山氏が2割を引きつける。専業主婦層では福山氏が3割、吉井氏が3割弱、楠井氏が2割強を固めた。

なお、現時点で公表されている報道各社の情勢報道では、各社それぞれ候補の名前順が異なっており、激戦ぶりが窺える。7月2日から5日にかけて京都新聞が行った調査では「立憲民主党の現職がやや優勢で、自民党と日本維新の会の新人2人が激しく競り合う」とされているほか、7月4日から5日にかけて朝日新聞が行った調査では「自民吉井氏が優位、立憲福山氏と維新楠井氏が激戦」とされていた。

各社の情勢報道を集約して分析するJX通信社の「当選確率シミュレータ」では、吉井氏の当選確率は88%で、公示以降、首位を維持している。福山氏と楠井氏は公示時に差が開いていたが、公示以降に差を縮め、福山氏が56%、楠井氏が54%で横一線となった。

福井:野党系無所属と自民重鎮が激しく競り合う

福井選挙区では、無所属新人で立憲の支援を受ける斉木武志氏と自民現職の山崎正昭氏が横一線で激しく争っている。無所属新人で維新が推薦する笹岡一彦氏がそれを追っている。7日時点では斉木氏が一歩リードしていたが、山崎氏と笹岡氏が8日に支持を伸ばしたことで、差が縮まった。

斉木氏は岸田政権を支持する層からの集票を加速している。また、支持政党別に見ると無党派層からも4割弱、自民支持層の2割弱、立憲支持層の8割、公明支持層の2割からそれぞれ支持を集めている。

対する山崎氏は終盤にかけて、公明支持層からの支持をやや積み増した。自民支持層からの支持も若干伸ばしたものの、なお斉木氏への流出を許している状況だ。

追う笹岡氏は、無党派層や自民支持層、立憲支持層の1割ずつを取り込む。推薦を受ける維新の支持層は3割弱を固めた。

地域別では、前回調査以降、嶺南地方で山崎氏の巻き返しが見られる一方、嶺北地方では斉木氏と笹岡氏がなお支持を拡大している。

なお、現時点で公表されている報道各社の情勢報道では、毎日新聞/JNNの調査を除き、いずれも山崎氏のリードを伝えている。各社の情勢報道を集約して分析するJX通信社の「当選確率シミュレータ」では、山崎氏の当選確率はいまだ「95%以上」とされている。一方で、各社の情勢報道を統合した分析では、山崎氏と斉木氏の差が序盤よりも縮まっている様子が窺える。

JX通信社 代表取締役

「シン・情報戦略」(KADOKAWA)著者。1988年(昭和63年)山口県生まれ。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。

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