IWC脱退後、クジラの捕獲数は? 値段は? オリンピックは?
苦境に立たされてきたクジラ専門店
大阪のクジラ店の老舗「徳家」が商業捕鯨再開を目前に5月25日に閉店した。徳家の女将さんである大西睦子さんは商業捕鯨再開に向けた活動を民間から声をあげ長年にわたり尽力されてきた。商業捕鯨が禁止されてから捕獲数の減少、値段の高騰により鯨肉専門店の多くは苦境に立たされてきた。調査捕鯨の基地である山口県・下関ですら鯨肉専門店は、かつては数十件あったが現在では「くじら館」の1店舗のみになり、年々、全国的に鯨肉専門店は街から消えてきた。
日本政府は30年以上もの間、禁じられていた商業捕鯨の歴史にピリオドを打つため、今年の6月末にIWCから脱退、7月1日に正式に200海里内の排他的経済水域においての商業捕鯨が再開する。
だが、捕鯨船の乗組員や流通業者の間で手放しで喜べる状況でなく不安がある。
捕獲数による鯨肉確保の問題、見通しが立たない値段、消費者離れ、高額な母船の確保の問題など、不安要因は山積だからだ。
発信不足に変化
これまで、島国である日本は言葉の壁もあり、日本からの発信の不足が指摘されてきた。
日本から発信しても、「慎重になりすぎて遅くなっては意味がなくなる」、など指摘があり、近頃では影響あるマスコミに対しては、間違いがあればスピードをもって反論、訂正がされ、これまでとは違い看過することが少なくなってきている。仲違いと報道されてきた外務省と水産庁も協力体制である。
世代ごとの違い
商業捕鯨が禁止されてから30年以上。
スーパーや飲食店で鯨肉を見かけることは限られている。
鯨肉に関しては世代ごと、また、「食べたことある・ない」など生活習慣により捕鯨への賛成・反対に意見が分かれているのが特徴的だ。
値段は下がるの?上がるの?捕獲数は?情報の錯綜
日本政府がIWCを脱退することに向けて、今後の捕鯨について情報が錯綜してきた。
南氷洋からの調査捕鯨で確保していたクジラ333頭は獲れなくなる。
そうなると実際、商業捕鯨が再開した後の捕獲数が増えるのか、減るのか気になるところだ。
この捕獲数により鯨肉の確保、値段、船の準備など全てが変わってくる。
いずれにせよ将来的に安定した供給の考察していかなければならない。
また、日本としてIWCに変わる新組織の結成、いずれは南氷洋捕鯨を再開を見込んでいる。ただその時期に関しては現在、水産庁は、「食料難になった時に世界が南氷洋のクジラ資源の必要性がわかるだろう」との遠い将来への見解を示しているが、元IWCコミッショナーである島一雄氏は、商業捕鯨を禁止に追い込まれた状況の経験から、国際的な巧妙なやり方を危惧している。また、たとえEU諸国で捕鯨に賛成している国でも、EUに加盟しているという理由で様々な案件で賛同できない事情がある。
「食糧難になってからでは遅すぎる。新しい組織を捕鯨に反対していない中国など近隣国とまず今のうちに準備しておく必要がある」と重要性を唱えている。日本が南氷洋の捕鯨を諦めない理由はクジラの多く約7割が南極に集中していることをこれまでの調査で把握しているからだ。
オリンピック
現在、ワシントン条約において鯨肉の輸出入が大幅に制限されている。外国の方で鯨食に興味をもっている人がいても多くの国では鯨肉を食べる機会を得られない。オリンピックでは、世界中から多くの海外の方が訪ねてくることになるが、日本として無形文化遺産に登録されている「和食」の一部として鯨肉を紹介できるチャンスである。
これまで日本は「刺激してはいけない」ということで、外国人に対して鯨食に触れないでおこう、という姿勢があったが、それで捕鯨への理解を深めてきたのだろうか。
刺激してはいけない、という姿勢を貫き「クジラは食べるものではない」のイメージのままにしてしまうのか、「胃袋を掴む」のかオリンピックは鯨肉を紹介できる1つの大きな機会の場としての分かれ道ではないだろうか。