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日本代表、先週勝ったイタリア代表になぜ負けたか?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真左が背番号7で先発のリーチ。右がジョセフヘッドコーチ(筆者撮影)。

 ワールドカップ日本大会を翌年9月に控えるラグビー日本代表は6月16日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸で欧州6か国対抗戦に出場のイタリア代表に22―25で敗れた。

 9日に大分銀行ドームであった同カードは34―17で制していたが、この日は序盤に自軍ボールの接点で一時退場処分を食らうなど苦しい立ち上がりを強いられる。19分にはチェイスラインを破られて先制を許し、続く26分は自軍ランナーが孤立した接点で笛を吹かれたのを契機に自陣で攻められ0―12と追う展開となった。

 3-12で迎えた後半も、自軍ボールの肉弾戦でイタリア代表の圧力を受けた。4分に3-19とされる直前には、自陣中盤で大きく突破したアマナキ・レレイ・マフィが孤立して相手に囲まれる。寝たまま球を放さないノット・リリース・ザ・ボールのペナルティーを取られた。

 終盤はイタリア代表の反則が増えたが、敵陣ゴール前左へ入った12分に姫野和樹が落球するなどミスにも泣いた。20、25分にトライを決めるなどして17-19と追い上げながら、17-22と5点差を追う34分に自軍ボールの接点で反則を犯す。17―25と9点差をつけられた。

 試合後はジェイミー・ジョセフヘッドコーチとリーチ マイケルキャプテンが会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ

「まずは皆様、お越しいただきありがとうございます。正直、残念でした。ただ、学ぶことが多かったです。イタリア代表はタフで、前半から畳みかける攻撃で日本代表にプレッシャーをかけてきた。彼らのことを褒めたたえたいです。ジャパンのコーチとして、ワールドカップに向けてチームの改善点を見極めなければならないです。今回は、いつものジャパンと違って、規律を守り切れていなかった。イエローカードは時として出るが、それによって払った代償があまりに大き過ぎました。反則数自体はイーブンでしたが(日本代表の11に対しイタリア代表は12)、相手は我々の反則から得点を重ね、スコアボードでプレッシャーをかけていた。我々は(チャンスで)取り切ることができず、試合展開で上回られた。ソフトな瞬間も多々あった。

 前向きなところは、19点差をつけられてもキャラクターを発揮し、タオルを投げずに勝てる立場までもってこられたこと。接戦に持ち込みましたが、ミス、反則が多く、簡単にトライを取られたところがあった。2回のテストマッチ。最初の試合で、イタリア代表を力で上回ったが、今回はこういう形になった」

リーチ

「皆さんこんにちは。今週のフォーカスはメンタリティを重視していた。やられてからやり返すという場面はなかったです。自分から、日本代表から、しっかりと相手のいいアタックを止めた。ただ、そのなかで、点数を失って、流れが悪くなった時に、リーダー陣がどう対応するか、どう立て直すか…。すごく勉強になりました。

 後半のメンバーも、途中から入ってどういい流れをもっていくかを勉強できた。全体的に、チームがレベルアップできたと思います。後半の追い上げは惜しかったです。フィットネス的には、自信があります。締め方、どう完全に勝つまでに持っていくかについてはリーダー陣が話し合って、もう1回、プランを立てて次のジョージア代表戦へ行きたいです」

――ハーフタイム明けにニック・ブライアンとレフリーと話す場面がありました。試合全般を通し、レフリーへの対応、ペナルティーマネジメントで苦労する点はありましたか。

リーチ

「ラインアウトから相手がオフサイドを(する傾向がある)。それは事前に言っていましたが、それは取られたり、取らなかったり。試合前から自分たちのラックが『オフサイド気味』と言われていて、そこへしっかり相手がプレッシャーをかけてきて、相手が優位に立ったな…ということは感じました」

――それを受け、選手にはどんな声を。

リーチ

「2人目の速さキャリアの質をしっかりとするように…」

――キックからの展開がうまくいかなかた。先制トライを奪われた場面は、キックの弾道を追うチェイスが乱れたことがきっかけとなりました。

リーチ

「キックオフ、中盤のチェイスとも、コネクション(選手間の連携)が薄くなった感じがしました。ドンピシャで(補給役にタックルを)入れるなら(飛び出しても)いいけど、入れないならラインを揃えるのが優先順位だと、試合中に話しました」

――今日は元日本代表の故・平尾誠二さんのメモリアルマッチとなりました。

ジョセフ

「平尾さんに関する私の思い出は、日本人だけでなく外国人からもリスペクトされている方だという認識です。1995年のワールドカップでは(ニュージーランド代表として)彼と対戦もできました。神戸でプレーするのはいつも嬉しいですが、彼のような偉大な人がいなくなったのは寂しい。きょうは勝つ目的でここへ来ましたが、それができなかった。

 昨日は林敏之さん(元日本代表ロックで、平尾さんと同じく元神戸製鋼)が来て、チームに話をしてくれました。現代ラグビーと当時では違うが、貴重な話を選手は受け止めてくれました。今日、部分、部分で我々の力不足がありました。相手をほめたたえたいと思います」

――要所でミスが起きた理由は。 

リーチ

「試合中は必ずハンドリングエラーが起こります。ただ、今日は簡単なノックオンが多かった。なぜかは、わからない。ペナルティーに関しては、いつもと違う感じがしました。必死ななかでボール欲しい、欲しいという思いが強く、やりすぎてしまう感じでした。どう対応するか。(自分の人差し指を頭に向けて)マインドセットを変えるだけ」

――スタンドオフの田村優選手のゲームメイクへの評価。後半20分に松田力也選手へと交代させましたがその意図は。

ジョセフ

「田村は前回非常にいいパフォーマンスをしていました。過去に桜のジャージィを着ていたどの時よりも。ただ、今回は全く違った。相手にとっては彼がターゲットとして絞られてしまった。プレッシャーを受けていました。前回は田村が自由にプレーできていたが、封じられ、若干、自信を失いかけたと思います。

 交代はいいタイミングでした。あそこで松田と中村亮土を入れたことでゲームのテンポを上げられ、スペースへアタックできた。なぜか。前半、彼らはずっとゲームの流れを読み、把握したうえで出たからです。チームを立て直すところまでできたと思います」

――ボールを回すなか、相手の足が止まりだしたようでもあったが。

リーチ

「本当にそう思います。選手も気づいていて、相手の表情も落ち込んだ状態。ただ、自分たちで規律を持ってプレッシャーをかけなきゃいけないところで、ペナルティーをしてしまった。そういう大事なところが、テストマッチの勝ち負けにかなり繋がると思う」

 某選手は「準備の重要性を再確認した」と発言した。日本代表は9日の初戦に向け約2週間の準備を施し勝利を掴むも、今週は修正点を明確化したイタリア代表が自分たちのパフォーマンスを良化。別な選手は、相手の防御方法やレフリーへの対応に「時間がかかりすぎた」点も悔やんでいた。

 なお会見では、リーチの資質が垣間見える場面が多くあった。

 レフリーとの対話について聞かれると、戦前に受けた「(日本代表のラックは)オフサイドが多い」という言葉に過剰反応してしまったと反省。終盤の問答では、追い上げるさなかの反則を指してか「プレッシャーをかけなきゃいけないところで、ペナルティーをしてしまった。そういう大事なところが、テストマッチの勝ち負けにかなり繋がると思う」と続けた。

 残酷な結果の背景を正直に明かしながら、かつ後ろ向きなメッセージを発しない。発言通り、23日には愛知・豊田スタジアムでジョージア代表とぶつかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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