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これで電子書籍のお悩み解決か、アマゾンがページめくりの新手法

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

手軽に何十冊、あるいは何百冊もの本を持ち歩ける。スマートフォンやタブレット端末など、様々な機器で自分の本を読むことができる。購入した本はネット上に保存してあるので、いつでもアクセスできるし、失う心配もない。

紙の本のように扱えない厄介さ

こうしたことが電子書籍の便利な点だが、やっかいな面もある。例えば、ある箇所を読んでいる時、巻末にある表や地図などを見たり、何章も前のページを読み返したりしたくなる。

そこで、そうしたページにジャンプすると、今読んでいた場所に戻るのが大変になる。そのことが分かっているため、紙の本では当たり前のようにやっているこうしたページめくりをしなくなる。

電子書籍にはしおり機能があり、これを使えばページを一気にジャンプできる。しかし、しおりは読書中に重要、と感じた場所にも付けており、これをむやみに使うと、何が重要箇所だったかが分からなくなり、後で困ることになる。

「Page Flip」で問題解決か?

米アマゾン・ドットコムは6月28日、こうしたやっかいな問題を解決する電子書籍の新機能を開発したと発表した

同日から、アマゾンの電子書籍端末「Kindle」や、タブレット端末「Fireタブレット」、そしてiOSとAndroid用のKindleアプリに無償ソフトウエアアップデートを行い、新機能を提供するという。

これは、「Page Flip(ページフリップ)」と呼ぶ、ページめくりの機能だ。

同社によると、その使い方は主に2つある。1つは、画面をスワイプしてページをぱらぱらとめくる方法。

スワイプしてページを移動すると、画面の左下に小さく、今読んでいたページのサムネイルボタンが表示される。これをタップすると、すぐに元のページに戻ることができる。

もう1つは、アマゾンが鳥瞰図やズームアウトと呼んでいる、複数ページのサムネイル一覧表示。こちらは、画面内に9ページ分のサムネイルが3列3段で表示される。そしてユーザーはこれをスワイプすることができる。つまり9ページ同時にページめくりができることになる。

サムネイルであるため、表示される個々のページは小さいが、その中に、写真や図、ハイライトした箇所といったものがあれば、目に留まる。

こちらも同様に、直前に読んでいたページが自動で保存され、そのサムネイルボタンが画面上部中央に表示される。これをタップすれば、すぐに元のページに戻れるというわけだ。

新機能は読者の指の代わりになる?

アマゾンによると、我々が紙の本を読む際、ぱらぱらとページをめくり、指を挟んでおいた元のページに戻るといったことをするが、この機能はそうした人々の動作からヒントを得たという。

この話題について報じている米ニューヨーク・タイムズの記事によると、アマゾンは定期的にユーザーにアンケート調査を行っており、Page Flipはその中でも特に要望の多かった機能という。

とりわけファンタジー小説の超大作などを読む際には、人物の相関図や、家系図、あるいは地図といったものを参照したくなる。この機能はそうした書籍でとりわけ重宝するだろうと、同紙は伝えている。

対応書籍の拡大に期待

ただし、ソフトウエアアップデートを行ったからといって、すぐさますべてのKindle本でこれが使えるというわけではないようだ。

というのも、Page Flipを使うためには、個々の電子書籍がこの機能に対応している必要がある。アマゾンは、現在Page Flipに対応する電子書籍は数百万冊あり、今後毎日その数は増えていくと説明している。

Page Flipは電子書籍を印刷書籍に一歩近けた素晴らしい機能と言えるが、現時点でそれを利用できるのは一部のタイトルに限られている。今後の対応書籍拡大に期待したいところだ。

JBpress:2016年6月30日号に掲載/原題「これで電子書籍も紙の本のように便利になる? アマゾンがページめくりの新機能」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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