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藤井聡太王位(19)苦戦からまたも逆転! 豊島将之挑戦者(31)を降して王位戦2勝1敗!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月21日・22日。兵庫県神戸市・中の坊瑞苑において、お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第3局▲藤井聡太王位(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 21日9時に始まった対局は22日18時40分に終局。結果は117手で藤井王位の勝ちとなりました。

 七番勝負はこれで藤井王位2勝、豊島挑戦者1勝。藤井王位がリードし、初防衛まであと2勝としました。

 第4局は8月18日・19日、佐賀県嬉野市・和多屋別荘でおこなわれます。

 藤井王位の今年度成績は15勝3敗(勝率0.833)となりました。

 以前は豊島挑戦者になかなか勝てなかった藤井王位。ここ最近は盛り返し、通算3勝7敗としました。

 防衛する側と挑戦する側、両者は立場を変え、ここからは叡王戦五番勝負でも対戦します。豊島叡王に藤井挑戦者がいどむ叡王戦第1局は7月25日におこなわれます。

藤井王位、連続逆転で連勝

 藤井王位先手で、戦型は角換わり腰掛銀。藤井王位の仕掛けに、豊島挑戦者の応接が巧みでした。2日目の対局が始まってほどなくの段階では、豊島挑戦者リードと見られていました。

 70手目。豊島挑戦者は桂を跳ねて力をためます。上級者らしい落ち着いた、いかにも本筋という一手でしたが、本局の場合はわずかに疑問だったか。代わりに藤井陣のスキに銀を打って攻めていく順が優ったようです。

 藤井王位は金銀の囲いに玉を入城させ、決戦に備えます。

 豊島挑戦者がいよいよ前に出てきたタイミングで、藤井王位は豊島陣に角を打ち込み、成り返って馬を作ります。形勢は逆転。藤井王位がわずかにリードを奪いました。

 そういえば本日朝、駒を並べる前、藤井王位が盤上に駒をあけると、藤井王位の手前に角が一枚立ち、光が当たって輝いて見えました。藤井王位はそっと前に押して横に倒すと、裏返しで馬になります。それは本日の進行の予兆だったのかもしれません。

 豊島挑戦者が馬取りに銀を打ったのに対して、藤井王位は馬を切って寄せに出ます。

 95手目。藤井王位は8三の地点、いわゆる「羽生ゾーン」に銀を打ちます。

 この羽生ゾーンへの銀打ちが好判断。豊島玉を左右はさみうちにする態勢が整いました。

 両者の対戦では驚くような大逆転で豊島挑戦者が勝ったこともありました。しかし本局では勝利に向かう藤井王位の足取りは着実。時間も多く残されています。

 108手目。豊島挑戦者はしばらくの間、手を止めていました。26分を使い、残りは3分。藤井玉の上部に歩を打って、形を作りました。

 藤井王位が113手目を考えている間、豊島挑戦者はマスクをつけました。藤井王位は1分を使って、残りは35分。「羽生ゾーン」に打った銀を不成で7筋に入ります。左右はさみうちの網がしぼられ、これで豊島玉は受けが難しい。

 117手目。藤井王位はずっと動きを封じられていた飛車を気持ちよく縦に走ります。最後にすべての駒が働いてきれいに決まりました。

 秒を読まれる間、ふっと中空を見つめた豊島挑戦者。持ち時間8時間を使い切って、一分将棋となります。

記録「30秒、40秒・・・」

豊島「負けました」

 豊島挑戦者が投了を告げて、両者一礼。第3局が終わりました。

 第2局に続き、第3局でも逆転勝ちを収めた藤井王位。難敵中の難敵を相手に連勝し、王位初防衛まであと2勝としました。

 また豊島挑戦者との対戦成績をまた一つ詰めて、3勝7敗としました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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