アマゾン今度はメッセンジャー便による配達を計画、ドローンやタクシーなど、あの手この手の商品配送
米アマゾン・ドットコムが、バイクメッセンジャー(自転車便)を使った商品配送サービスを計画していると、米ウォールストリート・ジャーナルなどの米メディアが伝えている。
注文から1時間で届ける「Amazon Prime Now」
同社は米ニューヨークのエンパイアステートビル近くにあるビル1棟を17年間リースする契約を結んだ。新たなサービスでは、このビルを拠点として、マンハッタン地区の顧客に1〜2時間で商品を届けるという。
ただし現在は試験段階。ウォールストリート・ジャーナルによるとアマゾンがリース契約したビルはメッセンジャーの間で「ベース」と呼ばれている。
ここにはメッセンジャーが配達の合間に時間をつぶせるよう、ビリヤード台やエアホッケーゲーム、テーブルサッカーゲームなどが置かれているという。
現在のところ、メッセンジャーが指定された建物に所定の時間内に行き、建物の番地表示の写真を撮り、「ベース」に戻ってくるという試験が行われている。
この試験には、少なくとも3社のメッセンジャー業者が参加しており、アマゾンはその中から最も迅速、丁寧に商品を運ぶ業者を選定し、新サービスの配達要員として雇い入れる計画という。
この新サービスの名称は「アマゾン・プライム・ナウ(Amazon Prime Now)」。米ザ・バージはアマゾンの計画に詳しい関係者の話として、その配送料は1時間以内の場合5ドルで、2時間以上の場合は無料だが、メッセンジャーにチップを渡す必要があると伝えている。
ライバルは実店舗を持つ小売業者
アマゾンの狙いはサービスの競争力強化。ウォールストリート・ジャーナルによると、アマゾンは実店舗の小売業者よりも多くの在庫を持ち、低価格で商品を提供する業者として知られている。
だが同社の弱みは即座に商品を求める顧客への対応。この点では実店舗を持つライバル企業の利便性に勝てず、アマゾンはそうした顧客層の取り込みに苦慮している。
一方で、百貨店大手のメーシーズやスーパー大手のウォルマート・ストアーズは、一部の店舗で即日配送サービスを手がけるようになってきた。アマゾンも米国の主要都市で即日配送を行っているが、「アマゾン・プライム・ナウ」はさらに時間を短縮し、利便性をより高めるという。
あの手この手で時間短縮
このほかにも同社は、都会の配送センターの数を増やしており、顧客と物流拠点との距離を縮めて配達時間の短縮を図っている。
また同社には、生鮮食料品を当日の夕方6時まで、あるいは翌朝の6時までに届けるという会員制通販「アマゾンフレッシュ(AmazonFresh)」があるが、その対象地域をシアトル、南カリフォルニア、北カリフォルニア、ニューヨーク、フィラデルフィアへと拡大した。アマゾンフレッシュでは自前でトラック輸送網を構築している。
さらにアマゾンは街角に商品の受け取りができるロッカーを設置したり、小型無人飛行機(ドローン)を使った配送システムの試験を行ったりしている。ここ最近は、タクシーを使って1時間以内に届けるサービスの試験をサンフランシスコとロサンジェルス行っていると伝えられた。
ドローンの許可下りず、業を煮やすアマゾン
このうち、ドローンを使った配送サービスは同社が「アマゾン・プライム・エアー(Amazon Prime Air)」と呼んでおり、来年中にも実用化したい考え。こちらは、8つの回転翼を持つ無人飛行機が商品を入れた専用ケースを自動で取り付け、配送センターから30分以内に顧客の玄関先に届けるという配送システムだ。
ただ、別の記事によると、ドローンは空中においても地上においても人に危害を及ぼすリスクがあるとして、米連邦航空局(FAA)が商用利用や屋外の試験を認めていない。FAAは無人飛行機の利用に関する規定を策定する計画だが、それにはあと数年かかるという。
なおドローンの利用には一部例外が認められており、アマゾンはそのための申請を行っている。だがFAAの対応が遅く、なかなか進展しないという状況。そうした中、アマゾンは英国ケンブリッジ近くの私有地で屋外飛行の試験を行っている。
英ロイター通信によると、アマゾンはこうしたFAAの対応に業を煮やしているようだ。
アマゾンのポール・ミセナー副社長はこのほどFAAに書簡を送ったという。これには「米国で許可が下りなければ国外での試験を拡大せざるを得ない」と書かれていた。アマゾンはドローンの研究開発拠点を国外に移すことを示唆し、FAAに対し早急に許可を出すよう強く求めたと、ロイターは伝えている。
(JBpress:2014年12月10日号に掲載)