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勝利を盗まれた10戦全勝9KOのコロンビア人ファイター

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
David Martin-Warr / DKP どうみても、カストロの勝ちだった

 91歳のドン・キングが手掛ける興行で、また疑惑の判定が見られた。

 WBAコンチネンタル・アメリカズ・ミドル級タイトルマッチは、ニュージャージー州出身のイアン・グリーンが、コロンビア人挑戦者、アレキサンダー・カストロを2-1の判定で下し、王座を防衛した。スコアは、96-94、96-94、94-96。

 だが、どう見ても、カストロが終始優勢に試合を運んでいた。

David Martin-Warr / DKP
David Martin-Warr / DKP

 26歳のコロンビア人ファイターは治安の悪い街で育ち、貧しさと戦いながら成長した。いつも「次の食事はいつになるだろう?」と思いながら生きてきた。そんな彼を救ったのは16歳で始めたボクシングだった。

 カストロは自身と家族に、より良い生活を手に入れるために努力し、栄光を掴もうと駆け上がってきた。祖国のコロンビアとメキシコで試合を重ね、ファンを増やした。今回が、初の米国での試合だった。

 手数も多く、ファーストラウンドからフルスイングを繰り返してグリーンを苦しめた。それによってグリーンは左目をカットし、後手に回った。時折、接近戦で右アッパーに光る物をみせはしたが、劣勢だったことは否めない。

David Martin-Warr / DKP
David Martin-Warr / DKP

 試合後、17勝(11KO)2敗となった勝者は語った。

 「私のプランはボクシングをすることだった。1ラウンドにカットされた後、ガードを固めて前に出るだけだった。彼はハードにファイトしたね」

 明白なホームタウン・ディシジョンで初黒星を喫することになったカストロ。この悔しさを、今後のリングパフォーマンスで晴らしてほしい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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