右打者のレンドーンが初めて左打席に立ち、ホームランを打つ。スイッチ・ヒッター以外に前例はある!?
5月10日、リード・デトマーズ(ロサンゼルス・エンジェルス)がノーヒッターを達成した試合で、その前に椿事が起きた。
0対8で迎えた8回裏、タンパベイ・レイズのケビン・キャッシュ監督は、ライトを守っていたブレット・フィリップスを登板させた。
これは、椿事というほどではない。過去にも2度、フィリップスはマウンドに上がっている。昨シーズンの7月2日と、今シーズンの4月11日だ。先月の登板では、ファウル・フライに対してマウンドから猛然とダッシュし、三塁側のダグアウトの目の前でスライディング・キャッチをしてみせた。
3登板目のフィリップスは、シングル・ヒットと内野ゴロで1死一塁となった後、マイク・トラウトにホームランを打たれ、大谷翔平にもあと少しでホームラン――そうなっていれば、前日に続く2者連続アーチ――となりそうな二塁打を喫した。
椿事は、ここからだ。次のアンソニー・レンドーンは、左打席に入った。そして、2球目をスタンドまで弾き返した。レンドーンは右打者だ。スイッチ・ヒッターではない。これまでの通算4528打席は、すべて右打席に立っていた。レンドーンの通算本塁打は、右打席で154本、左打席で1本となった。
似たような例としては、ジマン・チェ(タンパベイ・レイズ)が思い浮かぶ。左打者のチェは、20002020年7月26日の試合で、右打席に立ってホームランを打った。その前の36本塁打とその後の15本塁打は、計51本とも左打席からだ。
もっとも、チェの場合、レンドーンとは事情が異なる。左投手を苦手とするチェは、出場機会を増やすため、スイッチ・ヒッターになろうとして、20002020年のシーズンが始まる前に練習をしていた。また、ホームランを打ったのは、右打席としての2打席目だ。直前の打席は、同じ左投手に三振を喫している。
この年、チェは右打者として11打席に立ち、ホームラン1本とシングル・ヒット1本打った。翌シーズン以降は、左打席にしか立っていない。
なお、5月10日は、左投手のデトマーズが相手だったからだろう、チェは試合に出場しなかった。