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あなたがインフルエンザにかかったら、ペットにうつるのか。フェレットは要注意。

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

寒くなってきました。インフルエンザが流行の兆しを示しています。2019年11月18~24日のインフルエンザの1週間当たりの推定患者数は約109,000人であり、増加傾向が続いています。

飼い主であるあなたが、熱が出て悪寒がひどいので病院へ行ったら、インフルエンザといわれました。感染が広がるといけないので、出社は控えます。それはわかっているけれど、自宅にいる愛猫や愛犬に、あなたのインフルエンザがうつらないか心配ですね。フェレットと共に暮らしているのなら、あなたのインフルエンザはうつす可能性があります。今回は、ペットにあなたのインフルエンザがうつるのか、その反対のペットからインフルエンザはうつるのかをお話しします。

フェレット

2000年、少し前からフェレットは、ペットとして、日本で飼われるようになりました。イタチ科動物で、わが国にいるものは、臭腺除去、避妊・去勢手術をしています。好奇心が強く、人になつくために、いまもペットとして暮らしています。

飼い主であるあなたが、インフルエンザにかかると、愛するフェレットにかかります。

インフルエンザはいろいろな型があるので、全ての型がフェレットに感染するわけではありませんが、可能性としてうつります。反対、つまりフェレットが、インフルエンザにかかると、人にも感染します。

インフルエンザの研究にフェレットを使えますが、飼育することが面倒なので、実験ではマウスが使われていることが多いです。

フェレットのインフルエンザの症状

潜伏期間は短く、発熱して、くしゃみ、涙、粘性のある鼻水が出ます。食欲不振、沈うつ。腸炎や肝臓疾患、視覚障害も報告されています。人のようにフェレット用インフルエンザのワクチンがありません。ワクチン接種で予防は不可能です。飼い主が、インフルエンザにかからない、そしてフェレットがたくさん集まる場所、ペットショップなどに連れていかないでください。

猫は、風邪の疾患が多い動物です。一般的な猫の風邪の原因は、猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)、猫カリシウイルス感染症(FCV)、猫クラミジア感染症などで、猫のインフルエンザというのは、ほとんどありません。わが国において、猫インフルエンザが発生した報告はありません。いまの時点では、人から猫に、猫から人にインフルエンザは感染しません。飼い主がよく「私の風邪が猫にうつって、猫もクシャミをしている」といわれますが、それは上記の猫の風邪で、家の中が寒かったなどの原因で、飼い主と猫の体調が悪くなったのでしょう。

タイで猫のインフルエンザ発生

日本では、インフルエンザの猫の報告はないのですが、2004年2月、タイで2歳の雄猫が、H5N1亜型のインフルエンザウイルスに感染し死亡しました。この猫は、死亡5日前に鳩の死骸を食べていました。この辺りは、多くの鳩が死亡されていることが目撃されています。

インフルエンザにかかった猫の症状

発熱、沈うつ状態で、あえぎ呼吸をしていました。そして、痙攣と運動失調を起こし、発症から2日目に死亡。

猫と違い犬には、ケンネルコフという犬伝染性気管支炎という病気があります。犬のインフルエンザではありません。ケンネルとは「犬小屋」「犬舎」という意味で犬の飼育環境を表し、コフとは「咳」のことを表しています。伝染力が強い、呼吸器疾患です。一般的には、ペットショップから来たばかり、ドックショー、トレーニング教室に行ったあとに、かかります。犬同士の感染であって、飼い主にはかかりません。

原因は、ウイルス、細菌、マイコプラズマ属菌など、さまざまです。日本において犬のインフルエンザは発生していません。

だから、犬が咳をしているからといって、人にかかることは、いまのところ日本ではありません。

犬伝染性気管支炎・ケンネルコフの症状

ガチョウの鳴き声のように鳴り響く空咳です。犬は健康ではあれば、咳はほとんどしません。咳をし始めるとこの病気にかかった可能性があります。発熱、食欲不振、呼吸困難、ぐったりする。

アメリカで犬のインフルエンザが発生

2004年1月、アメリカ合衆国のフロリダ州のドッグレース場で犬インフルエンザの発生が初めて報告されています。22頭のレース用グレイハウンドのうち、8頭が出血性肺炎で死亡しました。この事例から分離されたウイルス3株を解析したところ、すべての株は馬インフルエンザウイルス2型と同じH3N8亜型と一致ました。グレイハウンドが馬とどのような関係にあったかは不明。

犬のインフルエンザの症状

犬インフルエンザの臨床像は軽症型と重症型に分類されます。

軽症型: 10日から30日間持続性の軽度の湿性の咳をします。ケンネルコフと似た咳をするので、間違えられる可能性があります。

重症型: 犬は高熱(40~41℃)を発し、呼吸促迫や努力呼吸といった肺炎の兆候を示します。肺炎は細菌の二次感染による場合もあります。致死率は5~8%。

飼い主ができること

いまのところ、フェレット以外は、犬や猫には、インフルエンザは日本では発生していません。インフルエンザウイルスは、目に見えるものではないので、どこにいるかいつ感染するか誰も見えません。

感染する可能性があるのは、野鳥がウイルスを持っている可能性があります。

気を付ける方法は以下です。

・鳥が多くいるような場所にあえて犬を連れていかない。

・野鳥と遊ばせたり、野鳥の羽を拾ったり、鳥のうんちをなめさせたりしない。

・猫は室内飼いにして、野鳥を取って来させないようにする。野鳥を食べさせないようにする。

・万が一犬や猫が風邪のような症状を起こしたら、獣医師に相談ください。

まとめ

人がインフルエンザにかかっても多くのペットはかかることはありません。フェレットだけは、飼い主がかかるとうつすし、フェレットがかかっても飼い主にうつします。寒い時期、体調管理に気をつけて、手洗いをしてインフルエンザにかからないようにしたいものです。

映画『アウトブレイク』のようなことが起こらないとはいいきれないのです。ノーベル賞学者のジョシュア・レダーバーグは「人類の優位を脅かす最大の敵はウイルスである」といっています。インフルエンザの最新の知識を持って、ペットに接することが大切ですね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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