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決勝で実現した大谷とトラウトの対戦は、WBCの興行優先をさらに加速させる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイク・トラウト(左)と大谷翔平 Aug 28, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の最後に、大谷翔平マイク・トラウトは、日本の投手とアメリカの打者として、マウンドと打席で向かい合った。

 彼らは、現在のメジャーリーグを代表するスーパースターだ。どちらもロサンゼルス・エンジェルスに在籍しているので、少なくとも一方が球団を移らない限り、メジャーリーグでは対戦しない。

 場面は、決勝の9回表、2死走者なし。日本が1点リードしていた。大谷がトラウトをアウトに仕留めれば、日本の優勝が決まる。トラウトが大谷からホームランを打つと、アメリカは同点に追いつく。これを上回るのは、9回裏にアウトでもホームランでも優勝――例えば、1点差の2死二塁――のような場面くらいしか思い浮かばない。

 ただ、日本とアメリカは、準決勝で当たることになっていた。それが、途中で変更された。

 そもそも、準決勝のカードも、両チームだけに適用されていた特例によるものだ。日本は、1次ラウンドの通過順位にかかわらず、東京で行われる準々決勝の1試合目(Q1)ではなく2試合目(Q2)と決まっていた。アメリカも同様。1位通過でも2位通過でも、マイアミ開催の準々決勝は2試合目(Q4)とされていた。準決勝で顔を合わせるのは、それぞれ、Q1の勝者とQ3の勝者、Q2の勝者とQ4の勝者だった。

 特例がなければ、日本とアメリカが準決勝と決勝のどちらで当たるのかは、それぞれの1次ラウンドの通過順位によって変動していた。

 また、1次ラウンドのスケジュールは、以下のとおり。4試合ともナイト・ゲームは、日本とアメリカだけだ(ニカラグアは4試合ともデー・ゲーム)。

筆者作成
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 今回、主催者にとっては最高のシナリオ、大谷とトラウトの対戦が決勝で実現したことで、WBCの興行優先はさらに加速するのではないだろうか。

 なお、WBCの運営とルールについては、こちらでも書いた。

「WBCの本気度はどれくらい!? 英語版のサイトは周東佑京を右打ちと表記」

「失点率で順位を決めるのはおかしい!? わざと試合に負けて準々決勝へ進むこともできた〈WBC〉」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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