交通機関が混乱する「行きは曇か雨で帰りが雪」
週明け早々、本州南岸を低気圧が発達しながら東進し、大雪の可能性があります。
寒気の谷間で南岸低気圧
シベリアから強い寒気が南下してくると、日本海側を中心に大雪となり、太平洋側では晴れます。強い寒気が南下中は、大陸に中心を持つ大きな高気圧が日本を覆いますので、本州の南岸を低気圧が通過することはありません。
シベリアからの寒気の南下が峠を越すと、本州の南岸を低気圧が通過するようになります。この「南岸低気圧」と呼ばれる低気圧の進路が、八丈島の真上を通る時には、今度は、太平洋側でも大雪の可能性がでてきます。
同じ大雪と言っても、日本海側の大雪に比べれば、太平洋側の大雪と呼ばれているものは量が少ないのですが、雪に対する備えがないために大きな影響がでます。南岸低気圧が八丈島より北を通過するときは、南から暖気が入りやすくなるため雨の可能性が高くなります。
逆に、南岸低気圧が八丈島より南を通過するときは、北から寒気が入りやすくなるため雪の可能性が高くなりますが、低気圧から離れていることから雪の量は少なく、場合によっては降りません。
南岸低気圧が発達しながら日本の東海上に達すると、日本付近は「西高東低の気圧配置(冬型の気圧配置)」となり、シベリアから強い寒気が南下し、日本海側を中心に大雪となります。
つまり、南岸低気圧は強い寒気の南下の谷間に通過します。
八丈島の真上を通過
平成30年1月22日(月)は低気圧が九州南部から本州の南岸を低気圧が発達しながら通過します(図1、図2)。
関東地方では、朝の通勤・通学時間帯は曇か雨ですので、雪に対して油断しがちですが、夕方は雪で交通機関が混乱する可能性があります。しかも、関東地方では大雪警報を発表する可能性が「中」となっています(図3)。
そして、南岸低気圧が通過後、西高東低の冬型の気圧配置が強まって、シベリアから強い寒気が南下してきますので、23日(火)と24日(水)は、暴風警報や波浪警報を発表する可能性は「中」となっています。
本州の南岸を低気圧が東進するときの雪は、雨になるかもしれない気温の時に降る雪です。下層のちょっとした温度の違いによって雪になったり、雨になったりする難しい予報です。
しかも、現在、黒潮の大蛇行により、東海沖には冷水塊ができており、予想を難しくしています。
日本近海を流れる代表的な暖流である黒潮は、日本列島の南岸に沿って流れ、房総半島沖から日本列島を離れることが多いのですが、平成29年(2017年)8月から黒潮が紀伊半島沖から大きく南下したあと、関東の南海上に北上するという黒潮大蛇行が継続中です。(図4)。
黒潮の大蛇行が起き、黒潮の一部が分離して、関東から東海の沿岸を東から西へ流れ込むようになって渦をまきます。この渦は、低気圧が中心部で気圧が低く周囲で気圧が高くなるように、中心部で海面が低く、周辺で海面が高くなります。海の渦の中心部には下層から上層に向かって海水が動いています。海は、下層ほど温度が低いので、冷たい水があがってきて冷水塊となります。冷水塊があると南岸低気圧の進路が少し南を通るようになるという調査があります。
難しい予報ですが、雨と雪では社会生活への影響には雲泥の差があります。東京で5センチの雪が降ると、交通機関は遅れたり運休するなどで大混乱をしますが、5センチの雪に相当する雨(約5ミリの雨)が降る場合は、社会生活にほとんど影響がありません。
今週前半は、大荒れの一週間となりますので、常に最新の気象情報の入手に努める必要があります。
地球温暖化でも降雪の記録はでている
近年、地球温暖化で雪が降らなくなったと言われていますが、これは、北陸地方の豪雪地帯での話です。
北陸地方の豪雪地帯では、地球温暖化により、雪として降るケースが雨として降ることになるので、降雪の記録は観測しなくなっています。しかし、北日本の日本海側では、冷たい乾いた雪が、0度近い湿った雪として降ることが多くなり、降雪の記録がときどきでます。
太平洋側の大雪の場合も同じです。昭和28年(1953年)以降の東京の日降雪量をみると、上位10位のうち、4つは平成になってから観測しています(表)。
現在より地球温暖化がさらに進めば、北日本の日本海側や太平洋側で雪として降るケースが雨として降ることになり、降雪の記録はでないと思われますが、現時点においては、地球温暖化といっても、記録的な降雪が降ることがあり、気象情報に注意が必要です。
表、図1、図2、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。