災害発生時のマスコミの役割・必要な情報:平成30年7月豪雨(西日本豪雨)
< マスコミ報道の質が、時に命に関わることさえある。復興のスピードを左右することもある。>
■西日本豪雨(気象庁は「平成30年7月豪雨」と命名)
西日本各地で記録的な豪雨災害が発生しました。今、死者100名以上、行方不明50名以上、避難者2万人と報道されています。
政府は「激甚災害」に指定する方針で、このあと予定されていた安倍首相の欧州・中東訪問も取り止めとなりました。とてつもない、大災害です。
■災害発生時のマスコミ報道5つの役割
1.災害発生直後の生活情報
被災地のみなさんには、災害発生直後には気象学的な解説などいりません。今日、明日の安心安全に役立つような、生活情報が必要になります。
地元紙、ローカル放送、特にラジオが活躍します。
各地域の細かい情報を、全国放送や全国紙が行うことは難しいのですが、それでも近年は役立つ生活情報が流れるようになりました。
たとえば、救助を待っている人は、必ず助けは来るから助けを待てとか、布などをふって存在を知らせて欲しいなどの情報です。今回、いったん水没した車のエンジンを不用意にかけてはいけないとの報道もありました。
各関係機関も、以前からネットを通して情報を出していますが、必要なときに必要な人に情報を届けるのが、メディアの役割でしょう。
<水害であなたの車が水没してしまったら:安心安全情報>
・不用意に近づくな。感電の危険あり。・マフラー付近まで水位が上がってしまった場合は、運転を控えよ。・運転中に道路が冠水した時は、速度を十分に落とし(30km/h程度)、車間距離を取り、先行車や対向車による水位の変化に気をつけてエンジンが水を吸わないようにせよ。
避難所の生活上の注意も、役立つ生活情報の一つです。
<より良い避難所のために・災害弱者を守るために:避難所ストレスの今とこれから、そして対処法:熊本地震>
2.被害増大を防ぐ情報
警報を知らせたり、避難情報を伝えたりします。また、増水した川には近づくなとか、命を守る行動をせよ、水の下には見えないけれどマンホールのふたが外れているかもしれないぞ、といった情報です。
水害は逃げ遅れの出やすい災害です。
<水害と逃げ遅れとパニックの災害心理学:命を守る行動を:正常性バイアスの心理>
3.被害の大きさ、悲惨さの報道
悲惨な状況の報道は、スタッフにとっても辛いことです。しかし、報道されなければ、救助も支援も遅れます。被害が大きすぎて、地震の震度計が壊れたり、水害で陸の孤島になると、マスコミや行政にも情報が入りません。取材ができません。そうなると、支援物資が遅れたり、後の義捐金にも差が出ることもあります。
地元新潟県の中越地震のときも、放送局に涙ながらの抗議と取材報道の依頼をしている女性を見ました。今回の西日本豪雨でも、ネットを通して様々な声が聞かれます。
4.被災者へのインタビュー
心無い、無遠慮なインタビューはいけません。ただ、新聞記者やテレビスタッフに話すことで、心が落ち着く人もいます。
私は、ある大きな事件が発生した町にレポーターさんと共に訪問したときに、レポーターさんから言われました。「インタビューすることで、町の人の心が少しでも癒されるようなことをしてほしい」。
5.明るく前向きな情報
悲惨な現状を伝える必要があります。中央からのマスコミの中には、そればかり狙う人もいます。しかし、時間と共に明るい話題も必要とされます。
全国から、こんなに支援が来ている。みなさんは、見捨てられていない。そして、各被災地域で、地元の人達自らが立ち上がり、復興へ向けた活動が始まっているといった報道です。
■マスコミと私達の協力
どの職業でも、様々な人がいます。マスコミにも悪い人はいるでしょう。しかし多くのマスコミ人は、被害者のことを思っているはずです。思ってもらいましょう。地元が、そして全国の人が、マスコミとも協力しながら、防災と災害支援に努めましょう。
地元の人々、地元の警察や消防、自衛隊などプロの人々、地元のマスコミ、そして被災地に全国から駆けつけている様々な職種の人々。彼らを守り、協力したいと思います。
大災害が起これば、地元マスコミ、中央のマスコミだけでなく、各ローカルのマスコミも被災地に入ります。あるマスコミの人は、災害発生時にともかく現場に行けと言われ、50時間寝なかったといいます。毎食カップ麺を食べ続けたとも聞きました。
マスコミのみなさんの良い報道を期待しています。