SM嬢にも、お堅い役場職員にも難なくなれる役幅の広さ!女優、菜葉菜の魅力を中村真夕監督が語る
SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。
「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて驚かせてくれる。
いまそのような活躍を見せてくれているのが女優の菜 葉 菜だ。
バイプレイヤーとしてしっかりと作品にアクセントを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。
そんな彼女のこれまでのキャリアをひとつ振り返る特集上映が現在開催中だ。
横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品(?)まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアを振り返る。
すでに菜 葉 菜本人に話をきいたインタビューを連載中だが、こちらはアナザーサイド編。
「ワタシの中の彼女」で菜 葉 菜とタッグを組んだ中村真夕監督に「女優・菜 葉 菜」の魅力について話を訊く。全三回。
こんなに負のオーラをまとう役がぴったりとはまる女優さんはなかなかいない
はじめに監督として菜 葉 菜という役者を意識したときをこう振り返る。
「その前にも出演していた作品をみていたかもしれないですけど、『こういう女優さんがいるんだ』とはっきり意識したのは、瀬々敬久監督の『ヘヴンズ ストーリー』だと思います。
わたし、『ヘヴンズ ストーリー』は大好きで4時間30分を超す、大長編なんですけど、3回見ている。
この作品で菜 葉 菜さんのことが印象に残って気になるようになり、そのあとに『赤い雪』をみたら、これがまた印象的で。
なにより印象に残ったのは目ですね。一言で表すと、目力がある。その眼差しで何かが語れる。
『ヘヴンズ ストーリー』も『赤い雪』もけっこうな過去があってすさんだ状態にいる女性ですけど、もうそれが目をみるだけでわかる。
こんなに負のオーラをまとう役がぴったりとはまる女優さんはなかなかいないよなと思いました。
だから、実際にお会いしたとき、びっくりしたんですよ。
もちろん役の印象とその役者さん本人とのイメージが違うことがあることは承知しています。
でも、それでも少しは影のあるタイプかなと想像していたら、本人はめちゃくちゃ明るくて、笑顔が絶えない。
ダークな役のイメージがありますけど、本人は真逆なんですよね。
だから、びっくりしたんですけど、次の瞬間に、『この人はバイタリティ豊かな人になんだろうな』と思いました。
いい意味で、どんな役にも染まれる人ではないかと思いました。
役者さんでも自分にわりと近い役とか、それまでのキャリアでついたイメージに近い役しかできないという人がいますけど、彼女はそうではない。
どんな人にもなれてしまう。
今回の特集で上映される作品をみてもわかりますけど、エロティックなSM嬢にもなれれば、役場の職員のようなお堅い仕事の職員もなんなくこなす。
すごい特性をもった役者だなと思いました。わたしが言うのもおこがましいんですけど(苦笑)。
自分のカラーをもった役者さんていっぱいいらっしゃると思うんです。
でも、それの逆である意味、無色みたいな人ってあまりいない。
自分のカラー前面に出てくる人は多くいるけど、自分のカラーが前面に出過ぎない。
いい具合に、自分のカラーをその役になったときに消すことができる。
だから、その役に匿名性を帯びさせることができる。
菜 葉 菜さんは、そういう俳優さんなんですよね。
菜 葉 菜さんは、目標とする女優さんとしてよく田中裕子さんをあげられる。それはすごくわかるような気がします。
田中裕子さんが、それこそ隣近所にいるようなおばさんを演じると、ほんとうにどこかにいそうで、自分の近所で見かけたようなおばさんになる。
女優さんがおばさんを演じているって感じにならない。芸能人オーラみたいなものが微塵も出ていない。
もうどこにでもいるようなふつうの人になってしまう。
菜 葉 菜さんもどんどんその領域に入ってきているんじゃないかと思います」
実感として得たことを演じる役にアウトプットして反映させている
演じることに対して、貪欲でもあるという。
「『ワタシの中の彼女』では、リサーチから彼女は参加してくれたんです。
リサーチ取材を一緒にしたんです。
たとえば、盲目の役があったので、そのリサーチで。途中から視力を失った方と取材を兼ねたランチを一緒にしたり、二人で『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』を見に行ったりしました。
俳優さんによっては『演じることが仕事』と割り切っていて、めんどくさがられると思うんです。
けど、菜 葉 菜さんは『ちょっと興味がある』と言った感じで、時間が許す限り付き合ってくれたんですよね。
そういう実際に自分が感じたこともすごく大切にされていると思います。
そして、その実感として得たことを演じる役にアウトプットして反映させている気がします」
(※第二回に続く)
<女優 菜 葉 菜 特集>
「ハッピーエンド」(2008 年/山田篤宏監督)
「どんづまり便器」(2011 年/小栗はるひ監督)
「百合子、ダスヴィダーニヤ」(2011 年/浜野佐知監督)
「雪子さんの足音」(2019 年/浜野佐知監督)
「モルエラニの霧の中」(2020 年/坪川拓史監督)
「赤い雪」(2019 年/甲斐さやか監督)
「夕方のおともだち」(2021 年/廣木隆一監督)
「夜を走る」(2021 年/佐向大監督)
「TOCKA[タスカー]」(2022 年/鎌田義孝監督)
「鋼-はがね-」※オムニバス『コワイ女』より(2006 年/鈴木卓爾監督)
「ワタシの中の彼女」(2022 年/中村真夕監督)
「ヘヴンズストーリー」(2010 年/瀬々敬久監督)
以上、主演作、出演作あわせて12作品を一挙上映!
開催期間:9月16日(土)~10月1日(日)
横浜・シネマノヴェチェント
<トークイベント決定>
9月30日(土)11:00~「ヘヴンズストーリー」
ゲスト予定/菜葉菜、寉岡萌希、瀬々敬久監督
10月1日(日)12:00~「鋼-はがね-」オムニバス『コワイ女』より」
『ワタシの中の彼女』
ゲスト予定/菜葉菜、鈴木卓爾監督、中村真夕監督
14:30~「ハッピーエンド」
ゲスト予定/菜葉菜、長谷川朝晴、山田篤宏監督
詳細は劇場公式サイトへ → https://cinema1900.wixsite.com/home