どろどろの温泉は強烈な匂いのアレだった! 意外な温泉大国・アゼルバイジャンの秘湯
2005年から移住先を探して世界中を旅している夫婦がいる。なんと、軽自動車で車中泊をしながら! 書籍『今夜世界が終わったとしても、ここにはお知らせが来そうにない。』(外部リンク)の著者でもある石澤義裕さんが訪問した地域は120数カ国に及ぶという。
前回に続き、知られざる温泉大国・アゼルバイジャンで入浴した温泉について聞いた。
前回の記事:これぞ秘境! 「燃える温泉」の入り心地は? 軽自動車で世界一周の旅をする夫婦が出会った秘湯(外部リンク)
――書籍の中でも触れられていますが、アゼルバイジャンで強烈な温泉を体験されたとか?
石澤:オイル風呂ですね。原油風呂とでも呼んだらいいのか。アゼルバイジャンは産油国なので、売り物にならない質の悪い重油をお風呂として活用しているようです。なので、正確には温泉とはいえませんね。
――まあ、それは置いておいて。日本にもオイルのような匂いを放つ温泉が北海道の豊富温泉に湧いています。個性的ですばらしい湯です。
石澤:そんな温泉があるんですか、北海道に! 札幌出身なのに知らなかったです。
――アゼルバイジャンのオイル風呂は、どこで入れるんですか?
石澤:オイル風呂に入れる安宿や銭湯はなく、いろいろ探し回ってサナトリウムを見つけました。
――サナトリウムって、療養所ですよね?
石澤:はい。お年寄りが療養する施設で、受付では「1泊2日のショートコースはない」「医者の診断書がいる」とかなんとか言われたと思うのですが、言葉もあまりわからないので笑っていたら、なぜか宿泊を許されました。
――言葉が通じないというのは、ある意味、武器になりますね。どんな浴室でしたか?
石澤:介護士っぽいスタッフに案内されて個室に入ると、そこに外国の家によくある浅い浴槽があって。お風呂というより、診療所のような雰囲気でした。
――個室ならゆっくりできそうですね。
石澤:いやいや、室内には作業療法士みたいなお兄さんがいて、「服を脱いでください」って。彼の前で、というか彼に見張られながら、全裸になりました。
――それは一種の羞恥プレイですね。
石澤:これ見よがしに見せつけるわけにもいかないので、さりげなく膝を曲げて大事なところを隠したりして。だいぶ不自然な格好だったと思います。
――肝心な温泉、いや、オイルはどうでしたか?
石澤:空の浴槽に入って待っていると、お兄さんが蛇口を開いてオイルを投入してくれます。真っ黒な液体がどろーり、どろーりと流れてくる。冷たくも温かくもなく人肌程度。ただただドロドロで黒く、ガソリンの匂いがしました。
――入り心地はいかがでしたか?
石澤:胸までオイルにつかると、お兄さんが砂時計をひっくり返しました。オイル風呂は発がん性があるため、入浴時間は10分と決まっているそうで。お兄さんに見られていることもあいまって、とにかく緊張感がすさまじかったです。
――日本の温泉とは違って癒やされませんね。あっ、そもそも温泉ではなかったですね。
石澤:きっかり10分で浴槽から出ると、黒いオイルがべったりと体に張り付いて流れ落ちない。「シャワーでも洗い流せそうもない」と思っていたら、お兄さんが小さな靴べらみたいな器具で、こそげ落としてくれました。体の隅々まで……。
――それは恥ずかしい……。入浴後に体に変化はありましたか?
石澤:いろいろな意味で、ものすごく疲れたのか、その日はよく眠れました。ある意味、名湯でした。
――そんな旅の珍道中をまとめた書籍『今夜世界が終わったとしても、ここにはお知らせが来そうにない。』(外部リンク)が発売中です。
石澤:ぜひお風呂に入りながら読んでください。ただ、450ページの大作なので、くれぐれものぼせないようお気をつけください。
石澤義裕
札幌市出身。2005年より、妻Yukoと移住先を探して世界一周中。スクーターや車で旅をするオーバーランダー。海外放浪リモートワーカー歴18年のデザイナー。2015年より、軽自動車で地球横断中。訪問した地域は120数カ国。海外キャンピング・車中泊は、50カ国以上。海外でのスクーター、車の走行距離20万キロ以上。海外に古い家を買って、リノベしながら住みたい。
ブログ「旅々、沈々」、Twitter「Yuko@軽自動車で南アフリカへ行こう。」で旅の模様を発信中。