死んだと思ったら、生きていた! 『宇宙戦艦ヤマト』の沖田艦長がよみがえった理由が、あまりにも意外だ!
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
マンガやアニメや特撮では「死んだはずのキャラが生きていた」という展開は、珍しいことではない。
たとえば『ウルトラマン』のエンディングなど、怪獣にやられたはずのハヤタ隊員が、元気に「おーい」と手を振って現れるのが「お約束」だった。
その場合、視聴者はハヤタ隊員が生きているのを知っており、だからこそ安心して番組を見ることができた。
ところが、ときどき意表を突くコンテンツがあった。
視聴者も「死んだ……!」と思ったキャラが、だいぶ経ってから姿を現すことがあったのだ。
推しキャラが生きていたら、もちろん嬉しい。でも、あまりに予想を超えた再登場だと、ただただビックリしてしまう。
――ここでは、筆者がモーレツに驚いた2人を紹介しよう。
それは『宇宙戦艦ヤマト』の沖田艦長と、『仮面ライダーⅤ3』のライダーマンだ。
◆沖田艦長が生きていた!
日本のアニメ史に輝く『宇宙戦艦ヤマト』は、その最終回も感動的だった。
イスカンダルまで往復29万6千光年の旅が、ついに終わろうとしている。
艦長室の窓からは、地球が見える。故郷の星は、どんどん大きくなる。
沖田十三艦長は「地球か……。何もかも皆、懐かしい……」とつぶやく。そして、息子夫婦といっしょに撮った写真を愛おしそうに見ていたが、やがて取り落とし、静かに息を引き取った。
同じ頃、艦長の死を知らないヤマトの乗組員たちは、近づく地球を前に沸き立っていた。その様子に、艦医の佐渡先生は、艦長の死を知らせることができない。喜びと希望に胸を膨らませた若者たちを乗せて、ヤマトは母なる地球に帰っていく……。完。
うーむ、こうやって文章に綴ってみても、胸を打つエンディングだ。
その後公開された映画『さらば宇宙戦艦ヤマト』や、テレビ版の『宇宙戦艦ヤマト2』では、沖田艦長は銅像になっていた。
「英雄の丘」に建てられた沖田の像の下で、ヤマトのクルーたちは酒を酌み交わす。艦長の功績の大きさと人望の厚さが、しみじみ伝わってきたものである。
ところが、その沖田艦長が数年後(劇中の時間では3年後)、劇場版映画第5作『宇宙戦艦ヤマト 完結編』において、突然よみがえったのだ。
その第一声は、発進準備を急ぐ乗組員たちに艦内放送を通じて放たれた。
「私は宇宙戦艦ヤマト初代艦長・沖田十三である! ただいまよりヤマトは出撃準備に入る。総員、配置につけ!」。
乗組員たちはどれほど驚いたことだろう。数年前に亡くなり、銅像まで建てられている人が、いきなり艦内放送で命令を下したのだ。
古代進たちが慌てて集合すると、姿を現した沖田艦長は「心配するな。このとおり、2本とも足はついておる。説明は後だ!」。
いや、心配とかじゃなくて、もはやブキミなんですけど。ちゃんと説明してください。
その説明がなされたのは、ヤマトが大気圏を脱出し、巡航態勢に入ってからだった。沖田艦長同席のもと、佐渡先生が古代たちにこう言った。
「わしの誤診でな」。
ご、誤診ですと!? 佐渡先生が、生死の判断を間違えた!?
法律によって、人の死は医師にしか判断できないと決められており、医師は次の3基準をすべて満たしているとき、その人が死んだと診断する。
①心拍動の停止
②自発呼吸の停止
③瞳孔の光反射の消失
佐渡先生はいったい何を間違えたのだろうか? 問題のシーンを見直してみると……ややっ。
艦長室に入るや否や、佐渡先生はその場でキッと表情を引き締めて敬礼した!
なんと上の3基準の、どれひとつ確認していない。部屋の入口から見ただけ!
これはもう、誤診以前の問題だっ。
劇中の説明によれば、ヤマトが地球に帰還したとき、沖田艦長はまだ生きていた。
そこで、地球防衛軍長官の命令で、ただちに特別医師団が結成された。緊急手術が行われ、艦長はその後、長い療養生活を送っていたのだという。
それはまことにめでたいが、地球防衛軍は沖田艦長の生存を完全に把握していたということではないか。なのに、英雄の丘に銅像を建立した!?
いろいろビックリの沖田艦長復活劇である。
◆ライダーマンが生きていた!
『仮面ライダーV3』に登場したライダーマンは、哀愁を帯びたヒーローであった。物語終盤の第43話から登場し、たった9回しか出演していない。
そのわりに印象に残っているのは、この人が仮面ライダーとしては「ちょっと物足りなかった」からだと思う。
ライダーマンが改造されているのは右腕だけで、それ以外は生身の人間。
あまり強くなくて、もっぱらV3の補佐役だった。そのV3にも「ライダーマンとしての能力で、カマクビガメに勝てると思っているのか!」などとハッキリ言われたりしていた。
そもそも、名前が不憫である。
「ライダー」だけで、バイクや自転車に「乗る人」という意味なのに、そのうえ「マン」。「頭痛が痛い」や「馬から落馬」も同然の、屋上屋を重ねた名前だ。
しかしこのライダーマン、劇中では壮絶な最期を遂げた。
プルトンロケットを開発したデストロンは、これを爆発させて東京を壊滅させようと計画する。
ライダーマンはこのロケットに乗り込むと、操縦してはるか上空に達するや、操縦室内で手榴弾を投げ、プルトンロケットを爆発させた!
壮絶な爆発であった。
地上からこの様子を見ていたV3は言う。
「よく東京を救ってくれた。俺は君に仮面ライダー4号の名を贈る。ありがとう、ライダーマン」。
科学的に考えても、とうてい命はない。
弾頭の威力が、本当に東京23区(半径10km)を壊滅させるものだったとすると、放たれるエネルギーは通常の爆薬190万t分。その身に浴びる爆風のエネルギーは、操縦席と弾頭が10m離れていた場合、V3キックを3400万発受けるのと同じなのだ。
ところが、ライダーマンはその後のシリーズに、あたり前のように登場するのである。
とても不思議なので、劇場版『五人ライダー対キングダーク』を見てみた。これは、ライダーマンが『V3』後に初めて再登場する映画だ。自分の生還について、彼はどんな説明をするのか?
1号からXまで、5人の仮面ライダーが一堂に会すると、V3は立花藤兵衛に説明する。
「1号はニューヨークから、2号はパリから、俺はモスクワから、そしてライダーマンは……」。ここで本人が「俺はタヒチから駆けつけました」。いや、そういうことが聞きたいんじゃない!
劇中の状況から、V3とライダーマンは、この場面以前にどこかで再会を果たしていたようだ。1号、2号、Xはライダーマンと初対面だから、何も聞かなくても不思議ではない。
問題は立花藤兵衛。この人が何か言ってくれれば、ライダーマンが生還できた理由もわかるはずだ。さて、おやっさんの言葉は……!?
ニコニコしているだけなのである。そして話題は、すぐさま悪の組織が何を企んでいるかに移ってしまうのである。わ~っ、なんで~っ!
生きていたのが超フシギなのに、誰も経緯を聞かないライダーマン。さまざまな意味で心に刻まれるヒーローである。