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「スター・ウォーズ」、最新作でアジア系女優を起用

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」に出演するケリー・マリー・トラン(左)

遠い昔、はるかかなたの銀河系は、今のハリウッドより先を行っている。「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」に 、新しい重要なキャラクターで、アジア系女優が登場するというのだ。

このニュースは、フロリダ州オーランドで開催されているルーカス・フィルム公式イベント「スター・ウォーズ」セレブレーションで発表されたもの。ライアン・ジョンソン監督、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、マーク・ハミルらが登壇する「最後のジェダイ」パネルで、ケリー・マリー・トランは、司会のジョシュ・ギャッドの紹介を受け、観客の前に姿を現した。

トランは、昨年、ロンドンで行われたこのイベントに、ファンとして出席していたと告白。フィン(ボイエガ)を支持する服装をし、ライトセーバーを持っていた彼女が次の映画に出演する女優であるなどとは、誰も知らなかった。家族にも長い間秘密にしていなければならず、撮影の間は、「カナダでインディーズ映画を撮っている」ということにし、信じさせるために、カナダ名物メイプルシロップを持って帰ったこともあるそうだ。

ローズを演じるケリー・マリー・トラン
ローズを演じるケリー・マリー・トラン

トランが明かしてくれたところによると、彼女の役は、ローズという名前。整備工だったが、反乱軍の一員として駆り出されることになるらしい。ジョンソン監督は、「ルークやレイ同様、ローズも、戦士になるつもりもヒーローになるつもりもなかった。なのに、フィンと一緒に大冒険に出ることになるんだ」と、ローズがフィンと組んで戦うことを示唆。誰でもヒーローになれる可能性があるのが「スター・ウォーズ」の世界なのだとも語っている。

トランはカリフォルニア州サンディエゴ生まれ。短編映画やウェブ用番組に出た程度で、ほとんど無名だ。彼女がどのようにして「スター・ウォーズ」のメジャーな役を獲得したのかについては、今後もっとわかっていくだろうが、これが朗報であることは、間違いない。

パネルにはBB-8も登場
パネルにはBB-8も登場

南カリフォルニア大学が行なった調査によると、2014年に公開された映画、あるいは放映されたテレビで、セリフのある役でアジア人が出演していたものは、全体のたった5.1%。黒人、ヒスパニック系の役も少ないが、アジア人俳優が置かれた状況は、さらにひどいのだ。人種が特定されていない役柄でオーディションを受けても、わざわざアジア人が選ばれるケースは少なく、だからこそ「ゴースト・イン・ザ・シェル」のキャスティングが非難されたのである(映画公開で再燃した「ゴースト・イン・ザ・シェル」キャスティング論議)。

“白すぎるオスカー”批判が爆発する直前に公開された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が、重要なキャラクターに女性(リドリー)と黒人(ボイエガ)を選んでいたことは、静かに尊敬を集めていた。

「最後のジェダイ」パネル会場
「最後のジェダイ」パネル会場

昨年末公開された「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」でも、主役は女性で、ヒスパニックと中国人の男性が出演している。監督が全員白人男性であることが指摘されたりもしたが、それに関しても、ルーカス・フィルムのトップ、キャスリーン・ケネディは、女性の監督候補とも何人も会ったと主張している。

「スター・ウォーズ」は、 40年にもわたって愛されてきたシリーズ。今の子供たちや、次の世代にも、多大なる影響を与えていくことだろう。そんなシリーズが先頭を切って、自然な形で多様な顔ぶれを見せていってくれることの意義は大きい。世界では、いろんな肌の色の子供たちが、ライトセーバーを持って遊んでいる。そろそろ現実の状況が逆にスクリーンに反映されるようになってもいい頃なのだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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