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ディーン・フジオカが中国語で好演!台湾ドラマプロデューサーが描く「日台合作」の未来

鎮目博道テレビプロデューサー・演出・ライター。
瀚草影視文化事業股份有限公司 提供

Netflixで配信が始まったばかりの台湾ドラマ『次の被害者 シーズン2』が話題となっている。アスペルガー症候群の元鑑識官(ジョセフ・チャン)が15年前の事件に関連した連続殺人事件の謎を追っていき、スリリングな展開の中で互いに信頼し合うことの大切さや命の尊さといった、人間関係における複雑ながらも共感できるテーマを掘り下げていく犯罪サスペンスドラマ。ディーン・フジオカが検察官役を、全編中国語のセリフで好演し、エンディングテーマを歌っていることでも話題になっている。

今回、『次の被害者 シーズン2』の制作にあたった、台湾「グリーナー・グラス・プロダクション(瀚草影視)」のハンク・ツェンプロデューサーにインタビュー。撮影現場でのディーン・フジオカの様子や、日本と台湾の合作の将来についてなども含め、話題のドラマの撮影秘話を聞いた。

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Q:ディーン・フジオカさんとお仕事をしてみて、どうでしたか。

A:とても真面目な俳優だな、と思いました。演技に対するしっかりした考えを持っていますね。そして、それをしっかり正確に表現したい人だと思います。

制作チームに、すごくたくさん質問をされました。

セリフは中国語がすごく多かったし、検察官役ということもあって難しいセリフも多かったので、プレッシャーすごかったと思いますが、中国語の先生とたくさん勉強をされて臨まれたと思います。

とはいえこんなに大変な役を任せたことが、我々としては申し訳ないと思っています。検察官という役はネイティブにも演じるのが難しい役ですが、それをディーンさんがしっかり成し遂げたのをみて、感動しました。

彼は、監督のOKが出ても一回では簡単に満足せず、やり直すんです。

こんなに中国語のセリフがたくさんあったら、ディーンさんもやりにくいだろうと思って、日本語のセリフを増やす提案もしたんですが、中国語でしっかりやりきりました。

現場の状況の理由で上手く収録できなかった台詞などをアフレコにしたのですが、アフレコも自分でしっかりやるということで、すごく努力をされたと思います。

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Q:撮影現場でディーン・フジオカさんは周囲とどんな感じでしたか?

A: ディーンさんが台湾作品の撮影をしたのは、おそらく10年以上ぶりだったと思いますが、みんなとすごく馴染んでいました。特に、ディーンさん演じる検察官と組んで捜査を行う刑事の小廖(シャオリャオ)役の張再興さんとは仲がよくて、張再興さんが台湾語をいろいろ教えて、それで冗談を言い合っていました。

ディーンさんは台湾の現場について「非常に心地よい現場だ」と言ってくれていました。「みんなが自由に過ごしてる。カメラの前ではプロフェッショナルだけど、カメラが止まると、みんなが自分らしく過ごしている。クリエイティブのためにフレキシブルで、とてもいい環境だ」と言ってくれたのが嬉しかったです。

ディーンさんはいろんな言葉ができるので、いろんな役で今後も中華圏で活躍してくれるんじゃないかと思っています。

Q:ディーンさんがエンディングテーマを歌った経緯は?

A:いろんな形でいいコラボができたらいいなと思っていましたが、歌手としてもたくさんの経験があるディーンさんと音楽もコラボできたらと思い、お願いしたら快く引き受けていただきました。

でも、ひょっとしたらディーンさんに過大なプレッシャーを与えたのでは、と少し心配しています。「いろんな言語のバージョンの歌があったらいいですね」とお願いしましたが、そうしたらいろんな言語のバージョンを歌っていただけました。

Netflixなので世界中の人に見てもらえるから、国際色が豊かだということをこのドラマでは表現したかったので、まさにその狙い通りになりました。

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Q:御社(台湾の制作会社・グリーナーグラス)では積極的に海外コラボを進めていると聞きましたが、その理由は?

A: 私たちのコンテンツを、より多くの人に見てもらって好きになってもらいたいんです。ドラマのストーリーは、人が交流する媒体となるものだと思っています。長年、映像業界の仕事をしてきて、ストーリーが持っている力を感じています。

「国境も言語も乗り越えていける」とわかっているので海外コラボを進めていきたいです。アフターコロナに、いろんな大変なことが起きていますよね。人が理解し合うのも難しくなっていて、戦争も起きてしまっています。ストーリーが人に暖かさや癒しを与えられて、みんなの交流のきっかけになれたらいいなと思っているんです。

Q:日本の他の俳優さんが、台湾のドラマに今後出演する可能性はありますか?

A: そういうケースは増えていくと思います。一方的な話ではなくて、双方向の交流が増えると思っています。実際、私たちにも、日本の制作会社からいろんなお声がけをいただいています。

国際合作にとってタイミングはとても大事で、今がちょうどいいタイミングだと思っています。台湾人が日本の作品に参加することも増えていくのではないかと思っていますし、現在、台日合作の企画がいくつか進行中です。

台日合作が優れているポイントは、台湾と日本の間には「さまざまな双方に関連するストーリーがたくさんある」ということだと思います。「自分だけが関係する話だと思っていたら、別の人にも関係していた」というような素敵なストーリーが、台湾と日本の間にはたくさんあるので、非常に合作をするには素晴らしい環境だと思います。

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Q:「アスペルガー症候群の元鑑識官」を主人公にしたのはなぜですか?

A: 元々これは小説原作で、映像化にあたって大きく改変しました。ドラマを作ろうと決めた時がコロナ前で、みんながコミュニケーションなかなか取れないというのが社会にあると考えたんです。

一対一もグループも、人とのコミュニケーションを望んでいるということをどう描くかという中で、アスペルガーの主人公にして、推理とか鑑識の能力は優れているが娘とのコミュニケーションはなかなか取れないという設定にしました。

シーズン1は2020年で、コロナが一番大変な、コミュニケーションをとるのがみんな難しかった時期なので、みんなの心に響いたんだと思います。ミステリードラマなのですが、主人公が人とのコミュニケーションをどう築いていくかにも注目してほしいと思います。

Q:映像も美しいけれど暗いトーンだと感じましたが、それはそういう狙いですか?

A: 社会的な「人の孤独」を描いたので、こういうトーンの映像にしました。全員が「孤島」という世界観を表したかったので、その孤島で「先がわからない不確定さ」などに追われている感じを描きたくて「孤島のような暗い画面」にしたんです。

みなさんにも、主人公とか役柄にしっかり入り込んでもらって、感じてもらいたいです。犯罪者の暗部とか、街の中でもがき苦しむ様子を暗いトーンで描いたつもりです。

ハンク・ツェン(曾瀚賢)

台湾生まれ、プロデューサー。

開発期から後期のマーケティングまでプロジェクト全体の戦略立案と実行を手がける。

市場への鋭い感性と社会への関心を融合させ製作。情感溢れ、社会現象に共鳴するヒット作品を次々と送り出している。

代表作

映画『紅い服の少女』シリーズ

Netflix『模倣犯』(世界20以上の国、地域でTOP 10にランクイン、2023年Netflixの中国語ドラマで最も視聴された作品となる。)

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テレビプロデューサー・演出・ライター。

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教を取材した後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島やアメリカ同時多発テロなどを取材。またABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、テレビ・動画制作のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

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