【コラム】スペイン戦に臨む日本代表へ 「韓国にも負けんなよ」
3戦目が終わって、結果が出た後に言おうかとも思ったがやっぱり今言おう。
スペイン戦を控える日本代表に韓国との比較から、チクリとやる話だ。
日本:15分
韓国:32分
先のグループリーグ第2戦、両国の試合終盤で両国が試合終了まで「相手のリードを追いかけた時間」の総計だ。両国の試合はくしくも似た展開となった。ドタバタの総攻撃を仕掛けたのだ。
日本はコスタリカに81分に先制を許し、6分のアディッショナルタイムを含め、計15分の総攻撃を仕掛けた。韓国は2-2で迎えた68分にガーナに勝ち越しゴールを許す。同様に果敢にアタック。アディッショナルタイムは10分だったから、計32分間だった。
この内容の違いに憤懣やるかたなし。
もう切り替えてスペイン戦に、とも思うのだが、やっぱりもぞもぞする
はっきり言って日本ーコスタリカ戦はつまらなかったし、韓国ーガーナ戦は面白かった。後者については地上波中継の解説、中澤佑二さんも「熱くなった」と言っていた。ABEMAの玉田圭司さんも「観ていて面白い」と。筆者は後者を観て、前日の怒りが2倍になってぶり返してきた。
何なのかというと「日本は全然やりきってなかった」からだ。
日韓両国ともに今大会はまるでこれまでとは違うスタイルを志向して臨んでいる。
日本は速くて強いフォワードを揃え、それを活かしたサッカー。森保一監督就任時の公約通りに言うと「ロシア大会の攻撃サッカーにカウンターを加え、臨機応変に戦える」スタイル。
韓国はボルトガル人監督パウロ・ベントの下、「ビルトアップ(韓国で使われている用語ママ)」を志向している。
ところがだ。
両国ともに「いざという時」に化けの皮が剥がれた。素顔が見えた。しかも日本だけが悪い方向に。
日本のあの15分間のスタッツはこうだった。
クロス:2
シュート数:1
(枠内シュート1)
つまりは力強くやろうと取り組んできたのに、いざとなったらやりきれない。韓国では90年代後半以降、日本のサッカーを「かわいらしい(アギチャギハダ)」とよく表現してきたが、その姿まんま。強く行こうとしてるのだが、シュートすら打てないのだから。
一方、韓国の32分のスタッツは日本のものと完全に符合するものは見つけられなかったが、手元の計算ではこうだった。
クロス:20
シュート:16(枠内3、枠外13)
時間としては韓国のほうが2倍以上だった。またあの時間帯で日本の最大のストロングポイントは「三苫薫の突破から深い位置をえぐること」であり、韓国とは違う。しかしそれでも比較にならない数字だ。
ドカンドカンと後ろから、横から、放り込むやり方で何か事故を起こそうとした。あららそれ、結局昔のやり方やん。そっちのほうが怖くないか? とも思った。まあ彼らの言う「ピルトアップ」があってこそ、その対比として放り込みが活きたのかも知れないが...
それでもあちらはやりきった。現に試合後の韓国では伊藤洋輝のような「バックパス多発」で批判を浴びるような選手は一人もいなかった。
ついでに言うと、ガーナ戦で2得点を挙げたチョ・キュソン(全北)のような国内組が結果を残している点もちょっと気にかかる。サッカーの日韓比較を長年やってきた立場から言うと、スペイン戦ではJリーグ組の活躍を切に祈る。なぜなら今年はACLで韓国勢を制した一年だったからだ。
のみならず代表クラスでも2021年3月以降、A代表・各年代別代表・大学選抜含め日韓戦トータルスコア17-0を記録した時代を生きているのだ。韓国に完勝。それをここでひっくり返されたくない。
でも日本は今大会、すでにドイツに勝ったじゃないか。いやいやそれずっと引きずったからコスタリカに...
ちなみにドイツになら前回大会で韓国も勝った。そしてグループリーグ敗退ながらに「世界はベスト16入りした日本よりも、ドイツを破った韓国を記憶している」と誇る向きもあったのだ。それも上回ろう。
おそらくは12月2日の早朝にスペイン戦を見て祈る日本のサッカーファンのうち、1%も韓国との比較云々は考えていないだろう。だが、その日の日本は東アジアサッカー史のこういった一面も背負っているのだ。
この四年間、森保ジャパンを通じて実にいろんなものを見聞きした。監督が東京五輪まで散々繰り返してきた「ラージグループ」、「デュエル」、そして選手の所属チーム名にはどんどん漢字が減っていき、カタカナとアルファベットばかりに。
そうして迎えたこの決戦。最後にこう言いたい。
やりきれ男なら。根性。気合。