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海外オファーに揺れるエディー・ジョーンズ いまの仕事は日本代表ヘッドコーチ【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
渦中の指揮官。以前は「ジャパンはラグビーのI phone(革新の象徴)に」とも。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)に、海外からのオファーが舞い込んでいるようだ。

一部報道によれば南半球最高峰スーパーラグビーのストマーズからHCを打診されており、「選択肢のひとつ」と語っているという。ジョーンズHCは来季から発足するスーパーラグビーの日本チームでの「ラグビー・オブ・ディレクター」に就任しているが、その件について聞かれたら「その質問は今後一切答えない」と声を大にしたことがある。

理由は、いまの仕事がクライマックスを迎えているからだ。

4年に1度のワールドカップ(イングランド)を9月に控え、チーム強化の最終段階を迎えている。8月15日には東京・秩父宮ラグビー場で、南半球の実力者を並べた世界選抜と戦った。25―40で敗れた。

日本代表はワールドカップの初戦で南アフリカ代表と激突(9月19日・ブライトン)。皆アフリカ代表は今季のラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)では最下位に終わったが、パワフルな突進と肉弾戦に定評のある難敵だ。ジャパンは8月22日、福岡・レベルファイブスタジアムでウルグアイ代表とぶつかる。

以下、世界選抜戦後の記者会見における、ジョーンズHCのおもな一問一答。

「窓ガラスをたたき割りそうだ。ワールドカップの準備としては素晴らしい機会でした。(7月からあった)パシフィック・ネーションズカップ(PNC)でディフェンスの規律に問題があった。それがまた起こった。また、ブレイクダウン(接点)。ボール保持者が簡単に倒れてしまい、相手に絡まれてしまうことがありました。クリーンアウトも困難になる。修正が必要。この4週間でできるかどうか。相手のチームは力強く、ベテランも多く、若手はワールドカップに出たい意志があった」

――今後の練習メニューは変えますか。

「新しいメニューの必要はありません。いまやっていることをやるだけです。きょう、勝てるだけのチャンスはあった。ただ、問題点としてあったところを修正するだけ。選手の責任もあります。プレッシャーがあるなか、いつロールアウェーするのかなど、ディフェンスの規律を守らなければならない」

――すぐに倒れるなどの悪い癖が出てしまう。

「プレッシャーがかかったゲームで、それがつい出てしまうことはある。練習ではなく、質の高いゲームを重ねることでしか修正ができない。きょうは日和佐(篤・スクラムハーフ)が普段しないキックをしてしまった。プレッシャーから。きょう学んだことで、もうそういうミスはしない。もしあったら、彼の足を切ろうと思います。いい刀を持っているのでね(笑みを浮かべる)。まだまだだと思われているかもしれませんが、完成まで遠くはない。テストラグビーはそういうもの。この前も(同時期のテストマッチで)、オーストラリア代表がニュージーランド代表に勝った翌週、同じカードでニュージーランド代表が勝った。我々の仕事は、選手が変えられるんだと、信じさせることです。信じ続ければ、ワールドカップで日本のラグビーの歴史を変える。きょうはクレイグ・ウイングとマレ・サウ(ともにセンター)が(本格的に)復帰したことがポジティブです。マレは、久しぶりのプレッシャーでミスをしていたが。ケンキ(福岡堅樹=ウイング)もPNCに比べたら改善されていた。(得点を奪った)モールも素晴らしかった」

――日本らしいリズムを出すのに、ブレイクダウンの質以外に何が必要か。

「スローボールになるとジャパンのテンポが出ない。クイックラックを6、7回重ねるとジャパンのテンポになるのですが、最後のパンチ力が足りない。もっといいクリーンアウトで相手とファイトして球出しをすれば、我々のチャンスは増える」

――スクラムハーフとスタンドオフの連携。

「フミ(田中史朗=スクラムハーフ)もハル(立川理道=スタンドオフ)も、成長していると思います。パニックする状況から、脱出しないといけない。大事なところで、相手からのプレッシャーを受けていたとしても、いいアタックを。得点に変えるところで簡単なミス、不必要なペナルティーがある。プレッシャーのある所へボールを回してしまって、落とすべきではないところでボールを落とした。ワールドカップではそれがないように」

――練習は。ウルグアイ代表戦に向けた対策は。

「トレーニングは勝とうが負けようが、変えない。今日負けたからと言って何か変わるということはありません。ワールドカップにウルグアイ代表戦はないので、そういうことはしません」

――守備時のブレイクダウンでの反則。

「2人目に入る選手がもっといい判断をしなければいけないかも。相手にハードに行き過ぎているかもしれないし、議論する必要がある。ラックにチャレンジするかどうかで、もっといい判断があるかもしれない。リッチー・マコウは、ボール保持者とサポートの間にスペースがなければ入りません。そこでの精度、ち密さが足りないと、不必要なペナルティーが起こる」

――(当方質問)このゲームでは、部分的に南アフリカ代表戦を想定した…。

「リハーサルに関する質問であれば…。もちろん、南アフリカ代表戦で試したいと思ったところは、ありました。いまの南アフリカとワールドカップでの南アフリカはメンバーが違うかもしれません。ハイパント、フォワード…。(最近、負けが込んでいる)南アフリカはプレッシャーを感じているのではないでしょうか。それは幸運です。この先、何週間かで非常に興味深いことが起きます。バッキース・ボタ(元同国代表でこの日の世界選抜のキャプテン)が出るかもしれません。彼は日本が好きだと言います。日本が彼を好きかどうかは知りませんが」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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