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「パソコンを新しくして研究環境がガラッと変わった」渡辺明名人、防衛達成後記者会見全文(1)

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――いまの心境は。

渡辺明名人「年明けからやっぱタイトル戦(王将戦、棋王戦、名人戦)がずっと続いてきてたので。それがこの名人戦終わって一区切りというところなので。終わってホッとしている感じがいちばん強いですね、はい」

――名人防衛の実感は。

渡辺「9時間、2日制の長丁場なので。その9時間っていうのはやっぱり名人戦だけの持ち時間なので。まあやっぱり、長い戦いだった、っていうのがいちばんですかね」

――スコアは4勝1敗での防衛。

渡辺「今日の時点では3勝1敗でこの5局目迎えてたんですけども。まあでもやっぱりひとつ落とすと当然苦しくなっていくので。先後(第5局は渡辺先手)の兼ね合いもありますけど、ここの5局目っていうのはそんなに余裕がない状態では迎えていましたね」

――今日の対局の勝因は。

渡辺「1日目から手が広い将棋だったんですけど。まずまず、まとめることができたのかな、っていう。大崩れしないでまとめることができたのかな、っていうのが勝因になったかな、とは思います」

――シリーズ全体を制した勝因は。

渡辺「今期は序盤戦がわりと自分のペースで戦える将棋が多かったので。そのあたりが昨年との違いというか。まあ、この1年間やってきたことが、この名人戦で出せたかな、っていうのは思いました」

――今後の目標は。

渡辺「今後はそうですね・・・(笑)。まあ、そのタイトル戦っていうところでは、この名人戦で一区切りだっていうことは考えていたので。その結果で当然、今年の下半期の過ごし方も全然違ってくるだろうなっていう。スケジュール的にも違ってくるだろうな、っていうことは思ってたので。まあそうですね、とりあえずやっぱりタイトル戦というところでは、年明けからのが一区切りついたので。少しやっぱり休んで、次に向けてなんか考えていきたいっていうか。そこからですかね。

――他のタイトルもファンからは期待されている。

渡辺「そういう目標はとりあえず、常にあるにはあるんですけど。そういう短期的な目標としてはそういうのもあるんですけど。年齢的にも38になったんで。四十代に向けてっていうやっぱ長期的なところを考えていく。そうですね、これからの1年、2年にしたいかな、っていうのはあります。それでやっぱり若い人にどうやって対抗していくかっていうところがまず課題になるので。年明けからのタイトル戦で見えてきた課題とかもあるので。そういったことを、タイトル戦がない期間に、ちょっと取り組んでいきたいかな、とは思います。

――具体的にこの1年間、特にやってきたこと、収穫があったことは。

渡辺「まあけっこうもう、さんざん、しゃべってきたんですけれども(笑)。パソコンをやっぱ新しくして、それでちょっと研究のやり方が・・・。やり方っていうか、研究環境がそれまでとはガラッと変わったことですかね。それが一番かな、とは思います。昨年の夏頃なんですけど。それまでの環境が全然ダメだったな、ってことがちょっとわかってなくて。それを新しくしたことで、やっぱりすごく効率もよくなったし。まあ、いろいろ、はい。ちょっとそれまでがなんか全然(苦笑)。そうですね、なんかやっぱ知識がなくて全然ダメだったな、というのがあったので。そこがいちばん変わったところですかね、はい」

――今期七番勝負で研究の成果が出たのは、研究環境が変わったのが大きい?

渡辺「それは大きいと思いますね。パソコン買い換えなかった場合との比較はできないんですけど。まあやっぱり、より序盤戦でペースを取れる将棋が、この1年間は増えてきたかなというか。そういう型になってきたかな、とは思うので。やっぱそれは、よりなんか、そういう傾向が顕著になってきたかな、とは思います」

――今後まだまだやれそうだ、という手応えは。

渡辺「こればかりは自分のピークだったり、っていうところと、相対的に若い人がどれぐらい出てくるかっていうところで(笑)。そこによるので、どれぐらいの年齢まで一線でできるかっていうのは、ちょっとわからないですね。自分の将棋を指すコンディションは落ちないような取り組みはしているつもりではいるんですけれど。ただどれぐらいの若い人がたくさん出てくるかっていうことは、もうコントロールできないんで。そこはわからないかな、とは思います」

――「名人とは縁がないと思っていた」と語っていたところからの3連覇について。

渡辺「最初、出る年齢が名人戦では遅かったので。その時点ではもう『縁がないな』とは思ってたんですけど。三十代半ばから出ることができたので、やっぱりその機会を大切にしようというか。そういう気持ちで1年1年、ここまで自分のいいパフォーマンスを発揮できてるのかな、とは思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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