【渋谷区】神事(かみごと)アボヘボ 自家製餡とこだわりの国産素材の和菓子屋さん
幡ヶ谷六号通り商店街にある和菓子屋さん『心庵梅むら 幡ヶ谷店』。
本店は創業50年で世田谷区喜多見にあり、ご家族で経営されてます。現在は二代目であるご子息が継がれています。
同店の先代の奥様にお話を伺うと、先代の選び抜いた素材による「安心して食べられる」和菓子への拘りの姿が見えてきました。
都内でも自家製餡を作っている店は僅かだということ
餡への拘りを奥様に訊ねました。
「日本で売られている和菓子の6割以上は輸入された豆や半加工の餡を使ってます。自家製餡の和菓子屋さんは都内でも珍しいんですよ。出来上がった餡を買っている和菓子屋が多いです。
うちは幡ヶ谷店の工房で、二代目の息子が朝6時から豆から煮て「自家製餡」をつくっています。国産小豆で無添加なんです。こし餡は北海道産小豆、つぶ餡は岡山県産で、砂糖は「白双糖」を使っているのでアクが少ない上品な甘さです」
国産材料なのに値段が他の和菓子店と変わらないですねと価格の秘密を訊ねると、
材料費が高額なのに値段が抑えられているのは賃料がいらないからだそうです。
「幡ヶ谷商店街はほとんどが店舗貸しで、元々の昔からの店は廃業しているところがほとんどです」
店舗貸しは入ってくるお金がけっこう大きいという事実を静かに語る先代の奥様は寂しそうでした。
銘菓アボヘボの秘密について
『心庵 梅むら』さんの先代が考えたオリジナルの銘菓アボヘボについて訊ねました。
「アボヘボという言葉は世田谷区の氷川神社で小正月に行われていた五穀豊穣祈願の行事で、植物の粟穂(あわぼ)稗穂(ひえぼ)で作られた神事の飾り物を供えます」
世田谷の梅むら本店が氷川神社の行事で和菓子を注文頂くことも多く、神事アボヘボをイメージした開運餅を作ったという流れだそうで、『心庵 梅むら』さんでしか買えない「銘菓アボヘボ」が誕生しました。神事の飾り物「粟の穂」の黄金色が銘菓アボヘボのきな粉と同じ色です。
神社でよく見る「茅の輪潜り(ちがやのわくぐり)」は今も続く神事ですが、『神事アボヘボ』は稗や粟を食べることも少なくなるとともに各地で消えて行ったようです。氷川神社ではコロナの影響で2020年が最後の神事となっています。
当日作りたての求肥を初めて食べました
アボヘボを実食です。上にはたっぷりの「(京都府産)京きな粉」。
きな粉の下は求肥です。(長野県産)くるみと(沖縄県波照間島産)黒糖を加えて練っています。全国から希少な材料を集めに集めた先代のこだわりを感じます。
作りたての求肥は初めて食べたのですが、口の中で溶けます。「京きな粉」も香りが上品で、キメが細かくなめらかです。沖縄県波照間島産の黒糖ですが、波照間島は沖縄本島から南に約400キロです。この拘りについて訊ねると、
「沖縄6島の黒糖で味が違う中から選んだもので、うちはブロックタイプのものを仕入れています。粉砕タイプは溶かして粉末にするので風味が変わるんです」と言われました。
和菓子は四季のお菓子が決まっています。
四季折々を和菓子は表します。店頭に並ぶ和菓子を見て季節を感じます。この時期は春告げ鳥の「うぐいす餅」です。
うぐいすのフォルムが可愛いです。求肥で北海道産小豆の自家製こし餡を包み、「青大豆」のきな粉が降りかけられてます。「白双糖」を使っているこし餡は雑味が無い上品な甘さです。作り立ての求肥はなめらかです。口に入れた瞬間溶けます。「作りたての求肥?」と思われるかもしれませんが、うぐいす餅などの生菓子は冷凍して自然解凍するお店に当たることが多いです。
まだまだ拘りを持つ和菓子がたくさんあり、今回対応くださった先代の奥様には紹介しきれないほど伺いました。
そろそろ苺大福の時期です。次は二代目店主にお話を伺いに行こうと思います。
心庵梅むら 幡ヶ谷店
最寄り駅:京王新線〈幡ヶ谷〉北口より徒歩5分 6号通り商店街
東京都渋谷区幡ヶ谷2-47-12
TEL.03-3299-4406
営業時間 10:30-18:30
定休 月曜日