効果的に「メモをとる習慣」がある人は、なぜ頭がいいのか?
「メモのとり方」を覚える前に
メモのとり方にはいろいろあります。メモのグッズに関する知識、メモの書き方に対するノウハウなど、まさに千差万別、多種多様。次から次へといろいろなテクニックが編み出され、公開されています。
しかし、大事なことを忘れている人が多いことも事実です。メモのとり方を学ぶ前に、そもそもメモをとることができるのか、ということです。つまりメモをとる習慣があるか、についてです。
習慣とは、無意識のうちにできることを指します。意識することなくメモをとる習慣がある人が、さらに効果的なメモのとり方を知ろうとするのはいいことです。しかしメモの習慣がない人は、まずメモをとる習慣を身に着けることが第一です。
「思考のインフラ」とは?
技能を手に入れる前に、下地となるインフラが整っているかについて意識している人は少ないと思います。私は「思考のインフラ」と呼んでいます。それでは「思考のインフラ」――習慣はどのようにしてできるのでしょうか?
習慣は過去の体験の「インパクト×回数」でできていると覚えましょう。脳内には、神経細胞によってできたネットワークが張り巡らされています。無意識のうちに行動できるようになるには、そのネットワーク間をストレスなく電気信号が伝達するよう、インフラが整備されている必要があります。そして脳内ネットワーク上にインフラを構築するには、外部から大きな刺激を受けるか、同質の刺激を連続して受けるかしかありません。つまり「インパクト×回数」なのです。
「メモをとる」行為に関しては、やはり「回数」でしょう。意識的にメモをとる回数を短期間のうちに増やします。そうすることで、無意識のうちにできる状態(無意識的有能状態)にすることが可能となります。
なぜ同時に2つ以上のことを実行できないのか?
メモをとる習慣がない人は、最初から「メモのとり方」など気にしなくとも良いのです。「質」よりも「量」。とにかく場数を増やすことです。
「脳の焦点化の原則」からすれば、脳は同時に2つ以上のことに焦点を合わせることができません。つまりメモる習慣がない人が、メモのとり方を意識しながらメモをとることはできない、ということです。
さらに人の話を聞きながらメモをとることは、一段と難易度が高いことです。習慣がない人は「メモをとっていると話に集中できなくなる」ことでしょう。前述したとおり、人の話に意識を傾けていると、メモに焦点を合わせることができなくなるからです。
パソコンでのメモを勧めない理由
メモの習慣がない人が陥りやすいのが、「パソコンを使ってメモをとる」行為です。メモデータを後から再利用するため、意図的にパソコンで記述する、という方もいるでしょう。しかしお勧めはしません。たとえ最終的にパソコンで記述するとしても、まずは紙とペンでメモをするプロセスを経てからにしたほうが良いと私は思います。
なぜメモの習慣がない人でも、パソコンを使うと可能なのか? それは話を聞くスピードと、キーボードで打ち込むスピードが近く、ブラインドタッチで打つことができる人は、それほどストレスを感じることなくパソコンでメモをとることができるからです。
しかし、キーボードを使ってメモをしていると文章をまとめる力がつきません。会議議事録をとる、原稿を口述筆記する、というのならともかく、耳に入ってきたものをそのままテキストデータに変換してアウトプットしていると、思考を働かせる余裕がないため、メモを残すことができてもメモの内容が頭に入ってこないのです。
メモの習慣をつけるには「思考の多層インフラ」が必要
実のところ、紙とペンを使い、人の話を聞きながらメモをとるには、
1.話を聞く
2.話の内容を理解する
3.話の内容を理解したうえで短い文章にまとめる
という「思考のインフラ」が必要です。つまり、「話を聞いてメモをとる習慣」といっても、何層ものインフラが整備されていないとできないものなのです。
これらを同時に実行するのは簡単ではありませんが、「話を聞きながらメモをとる習慣」を若い頃から体得している人は当然、脳の「思考系」が鍛えられます。脳の基礎体力がつき、頭の回転が速くなるのです。
さらに、人の話を聞きながら効果的な図柄を挿入したり、ポイントを整理して箇条書きまでできるようになれば、相当なスキルです。5~6種類の「思考のインフラ」が組み合わされないと実現できないからです。
頭がよい人は、やはりメモのとり方、ノートのとり方が違います。アウトプットされた内容に目を向けるだけでなく、そこにいたるまでの訓練プロセス。習慣化するまでに工夫した歴史に目を向けるべきでしょう。
メモのとり方を勉強してもなかなか身につかない人は、メモの習慣がないからです。面倒であっても場数を増やし、メモをとる習慣を身につ着けましょう。何層もの「思考のインフラ」が構築されれば、他の技能もまたそのインフラの上に乗せることができるようになります。