米スポーツ界で乳幼児飲料がブーム。300勝投手、ジャイアンツのペンス、ロッキーズのトゥロウィツキも
米国のスポーツ界で乳幼児用飲料が密かなブームになっている。
この乳幼児用飲料はペディアライト(Pedialyte)と呼ばれている商品。乳幼児が下痢や嘔吐をしたり、発熱したときに飲ませる電解質補給飲料で、全米各地の薬局やスーパーマーケットに置かれている。乳幼児が発熱、嘔吐や下痢をすると、家庭でこれを少しずつ匙で飲ませるように小児科医から指示されることが多い。体調の悪い幼児が飲みやすいようにグレープ、チェリーなどの味つきと、乳児用の味なしタイプがある。
メジャーリーガーのなかにも発汗時の水分と電解質補給に、これを好んで飲んでいる選手がいる。男たちの職場であるクラブハウスに乳幼児用飲料が常備されているのだ。
筆者はジャイアンツのペンス外野手がオレンジ色のペディアライトを持っているのを見かけた。口に入る食材を注意深く選んでいるペンスだけに、何か大きな意味があってペディアライトを飲んでいるのだろうかと思ってたずねたところ、ペンスは「(ジャイアンツの)チームからもらっている」と話した。
もう一人はロッキーズのトゥロウィツキ。ペットボトル入りの緑茶も好んで飲んでいるが、ペディアライトも飲んでいるという。トゥロウィツキは「緑茶は水ではない飲物が欲しいときに飲んでいる。ペディアライトは電解質を補うのにいいんだ」。
スポーツ界におけるこの乳幼児飲料の密かな流行は、今に始まったことではない。殿堂入りを果たしたトム・グラビンが07年に通算300勝を達成したときにも、イニングの間にペディアライトを少しずつ飲んでいたそうだ。当時のニューヨークタイムズ紙が報じている。
Three Yards and a Drink That Tastes Like Dust
2007年9月9日の同紙によると、1980年代から陸上の長距離選手たちの間で飲まれるようになり、開幕前の夏にトレーニングをするNFLのフットボール選手たちやNHLのアイスホッケー選手にも愛飲者がいるそうだ。ジャイアンツのペンスが話してくれたように、個人ではなく、チーム単位でペディアライトを用意しているところもある。
乳幼児用のペディアライトはスポーツドリンクに比べて砂糖が少なく、逆に電解質が多く含まれている。スポーツドリンクに含まれている砂糖は乳幼児の下痢を悪化させる可能性があるため、小児科医ではスポーツドリンクよりも、この乳幼児飲料を推奨している。
しかし、プロアスリートたちが、乳幼児飲料を好んでいることはあまり表には出てこない。NFL、メジャーリーグともスポーツドリンクのゲータレード(ペプシコ社)と巨額のスポンサー契約を結んでいるからではないだろうか。ヒーローインタビューのとき、インタビューをうけている選手にチームメートらがタンクに入ったゲータレードをぶっかける光景もおなじみだ。
ただし、ゲータレード側もペディアライトを好む選手たちがいることは把握しており、カロリーと砂糖を抑えた商品も販売するようになっている。
合法的な手段でパフォーマンス向上を追求する選手たちは、「スポーツ用」や「乳幼児用」にこだわらず、少しでも実力を発揮できる飲物を選ぶ。メジャーリーグのタイガースの本拠地ではゲータレードのタンクを2つ用意していて、1つはゲータレード、もう1つには水を入れている。
ペディアライトは現時点ではスポーツ界への積極的な売り込みは行っていない。しかし、この記事を書くために近所のスーパーでペディアライトを買い求めたところ、これまであったクマさんのイラストが消えていた。もしかしたら、アスリートからの支持に後押しされて、乳幼児だけの飲物ではないことをアピールし始めているのかもしれない。